紫煙燻る黒狐   作:とろねぎ

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本は決して粉々になるようなものじゃないと思うの

 

 

時間軸という概念はデスモモイにFATALITY...されました。

 

 


 

 

 

ある日のこと。

 

「んぶあー...何にも思いつかないぃぃ...」

 

向こうで作業しているウイさんの邪魔をしないよう、小さな弱々しい声を出した。

 

「聞こえてますよ。」

 

「えっ、あ...ごめん。うるさかった?」

 

「なにか悩んでいそうだったので気になっただけです。どうしたんですか?」

 

少し...少し気が引けるけど、ウイさんになら相談してもいいよね。

 

「お姉ちゃんに会いたいなって。」

 

「で、ですが...その...」

 

「...うん。殺されかけたよ。でもきっと、私が弱かったからこんなことになったんだと思う。それで色々考えたんだけどやっぱり...」

 

「...やっぱり...?」

 

「......やっぱり、強くなるのが一番だよねって。まっするまっする」

 

「???」

 

あ、ウイさんの後ろに宇宙が展開されちゃった。

 

「一応考えあっての発言だからね?」

 

「そ、そうですか...?」

 

最近考えていたのが、お姉ちゃんは衝動的なものに突き動かされてあぁいう...破壊行為をしてるんじゃないかって。

 

...うん。

 

たぶん違うね。

 

でも本当はやりたくない、とかじゃないと、私はとっくに...

 

...守るため?私を?

 

「...っはあ...」

 

とりあえず、強くなるのに手っ取り早い方法は無いものか...

 

ため息をついて思考をめぐらせる私に、すっと紙が差し込まれる。

 

「...なにこれ。」

 

「賞金首です。」

 

「......ふおっ!?」

 

遠回しに、賞金稼ぎでもすれば?なんて言われてる?

 

「い、以外〜...少し前のウイさんからは考えられないね。『あ、危ない、ですよ...!そんなことよりもここで一生私と......うふへへへへ...!』みたいなこと言いそうなのに。」

 

「わっ、私、そんな気持ち悪いこと言いそうですか!?...でも、実際実力は付きそうじゃないですか?お金も稼げますし。」

 

「お仕事あるしなぁ...まあ、空いている日があったら狩りにでも...どしたのウイさん。」

 

「...い、いや...やっぱりタマヨちゃん、ワカモの妹ですね。」

 

気まずそうに目を逸らしながら言うウイさん。

 

...?

 

どこで再認識したの?

 

「変なの」なんて考えながら真面目にその案の現実性を考慮する。

 

「ん...まあとりあえず、仕事を片付けていこうかな。最悪、先生に頼ってみてもいいし。」

 

「あぁ...例の。どんな人なんですか?私はまだ会ったことがなくて...」

 

「女の人だよ。優しそうな感じのする。...そして、変な人。」

 

「変...?」

 

「生徒に尽くすのが当たり前みたいな顔してる。」

 

「あ...それは確かに...変わってますね...?」

 

「あとこの前ゲヘナの子の足舐めてた。」

 

「はい?」

 

「すっごい顔してた。」

 

「は、はあ...」

 

「しかも、ゲヘナの子の言い方的に、常習犯。」

 

「よしタマヨちゃん。その人には近付かないようにしてください。最悪撃っちゃっていいです。」

 

「えぇ...?」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「なんてことも...あったっけ。」

 

結局、賞金首も何回かは挑戦してみたけど...うーん...強くなってる気がしない...

 

あ、でもどうしようも無い!ってなった時は迷わずに殺生石を使えるようにはなったから、そこは成長...かな?

 

案外みんな丈夫だから、怪我をさせる心配もないし。

 

でもやっぱり、強くなっているかと聞かれたら...

 

昔お姉ちゃんに送金されていた分に手を付けなくても良くなったのはいい事かな。

 

今日も今日とて、指名手配されてた人を探して、倒してヴァルキューレに送り届けたし!

 

...あ、ちゃんと仕事もしてるよ?あくまで倒すのは副業。

 

副業の方が稼げてる...?妙だな...?

 

まあそんなことは置いておいて、最近の私の生活サイクルとしては、仕事→賞金稼ぎ、そして...いつものここ。

 

毎日来ているけど、毎日新しいものが翻訳されてたり、増えていたりするから毎日来ても飽きない。

 

今日はちょっとしたお土産も出来たしっ!

 

「ふっふふ〜ん♪今日はどんなのにであっ......!?」

 

...ドアが開かない。

 

こんこんっ

 

「もしもーし。...おっかしいなぁ、開いてるはずなんだけど...もーしもーし!!」

 

こんこんこんこん!

 

「あぁぁぁぁ!!うるさいですねさっきから!!」

 

「っご、ごめん、なさいっ...!」

 

「え...あ...タマヨちゃん、でしたか...すいません...ど、どうぞ、入ってください。」

 

「う、ううん。気にしてないよ。何かあったの...?」

 

「......これを...見てください...」

 

そう言って案内されたのは、いつもの作業机。

 

...と...

 

「なにこの...なに?塵?」

 

「...経典です。」

 

「へぇ〜、経典なんd経典ん!?

 

言われてみれば確かに、本の背表紙みたいなところもあるけど...

 

壊れた本、というよりはそこら辺のホコリを集めた山、本のカバーを立てかけたという方がしっくり来る。

 

「...なにしたらこんな事になるの...?破れるとかいう次元じゃないんだけど。」

 

「本当に......どうしてなんでしょうかね...あぁ...思い出したらまた腹立ってきました...!!」

 

「お、落ち着いて!?あ、そ、そうだ。今日はね〜お土産あるのっ!」

 

「...そういえば、その袋...何が入っているんですか?」

 

「ふっふっふ...えっと...コーヒーゼリーにチョコマフィン、マカロン、カステラ、マドレーヌ...」

 

「え、ちょ多すぎ!多すぎです!明らかに質量法則無視した量が出てきてますけどその袋どうなってるんですか?ドラ〇もん?」

 

「ド〇えもんじゃないけど、ウイさんコーヒー好きだったよね?だからコーヒーゼリーと、コーヒーのお供をいくつか。あぁ安心して、私の分も買ってあるから。」

 

「い、いや...まずまず、コーヒーとコーヒーゼリーは似て非なるもので...!」

 

あれ...?

 

良さそうなものを選んだつもりだったんだけど、なにかパッとしない様子。

 

...もしかして...!

 

「迷惑...だった...?」

 

「え、あ、いえいえいえいえ!とても嬉しいですよ!ですが、少し多いかなー、と...」

 

「そうだったの...んふ、じゃあよかった。」

 

「...せっかくですし、今どれかを頂きましょうか。」

 

「!どれにする!?」

 

「え、あ...じゃ、じゃあ...マカロンを...」

 

マカロン!

 

名前の響きが可愛くて買ってみたんだ。

 

包装を剥がして、色とりどりのマカロンと対面する。

 

その中から一つつまんで...

 

「ん!」

 

「...はい?」

 

「ん!どうぞ!」

 

「え...?え、あ、あー...んむっ」

 

小さく開かれた口にマカロンを咥えさせると、もにゅもにゅと吸い込まれていった。

 

しばらく怪訝そうな顔をして口を動かすウイさん。

 

ようやく飲み込んだかと思えば、第一声が...

 

「...話題になるほど美味しいですか?これ...」

 

なんかすごい失礼なこと言ってる。

 

「いや、美味しいには美味しいのですが...これ一つで話題を作るとなると、かなり難しいですね...?」

 

「あぁ、美味しいけどそこまで騒ぐ程じゃないってこと?」

 

「えぇまあ、はい。...タマヨちゃんもどうぞ。」

 

ずい、と目の前に突き出されるピンク色のマカロン。

 

「え?いやいや、私はんぐっ」

 

途端口の中に入り込む甘み。

 

想像よりも柔らかいね。

 

「...美味しいですか?」

 

「ん、おいふぃ。...ふー、落ち着いた?」

 

気になる話題のために、なんとか話を戻す。

 

「......はい。」

 

「なら良かった。それで、何あの経典。」

 

「明日使う、大事なものだそうです。それを壊してしまい...先生が私に頼みに来ました。」

 

「...ん?先生?経典っていうから、てっきりシスターフッドの人だと思ったんだけど。」

 

「壊したのはシスターフッドの人ですが、先生も一緒に来ました。」

 

「なんで...?」

 

「なんででしょうか...?」

 

 

 

 

 

「あのー?そろそろ...いいかな...?」

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

気まずそうな声を出したのは...先生...

 

それと、その後ろに立つ(恐らく)シスターフッドの人。

 

「頼まれたものを持ってきたんだけど...お邪魔しちゃった?」

 

「あ...」

 

『お邪魔しちゃった』なにか含みのある物言いだったそれは、ウイさんの顔を真っ赤にするには十分だった。

 

「...渡すもの渡したし、今日は失礼しようかな...」

 

そそくさと撤退することにした。

 

なんとなく、嫌な予感がしたから。

 

「え、タマヨ?」

 

「ん、じゃーね!先生!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「◎△$♪×¥●&%#?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「...退散しといて良かった。」

 

後ろから聞こえる意味のわからない言葉の羅列に耳を傾けながら、自宅へと戻った。

 

 

 

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