短め
「...」
おかしいな...話し合おう、みたいな感じで座ってるのに...
「...」
なんでこの人黙ったままなの?気まずいからやめて欲しいんだけど。なに?なに待ち?
悪いことした気分になってきた...
「これは...どうすれば...?」
ウイさんなんてあたふたしてるし。
「......なにを対価にすればいいの?」
ようやく口を開いた。
色々と心の中で先生に文句を言いながら、その問いに答える。
「そうだね...まあ探した物の半分程度のお金だったり、お菓子だったり、一緒にお茶したり...」
「それで生活出来てるの...?」
わ、一気に心配する親みたいな目になった!何だこの人?
「大丈夫だよ。こっちはもう趣味みたいなものだし、稼ぎはちゃんとあるから。」
「そうなんだ。よかった...」
ほっと胸を撫で下ろしては優しく指を組みなおす。
なんでこの人はここまで私の心配をするんだろうか。
これがもしウイさんなら友達だから、で済むし、お姉ちゃんならお姉ちゃんだから、で済む。
カスミさんだったらなにか勘繰るけど、この人はそんな感じでもなさそう。
.........また、胃がムカムカする。
「そうだ、対価...いやもう報酬でいいや。報酬の話なんだけど...」
「うん。」
「なんでも言って」と、そんな感じの言葉が後ろについていた気がした。
うぅ〜っ...背筋がぞわぞわするぅ...!
「...っそ、そんな大したことじゃないよ。ただ、解決したあと、お姉ちゃんを探すのを手伝って欲しいの。」
先生ならどうにか出来るかもしれないと一縷の望みを掛けた頼み。
「・・・」
悩む素振りすら見せずに承諾を意味する三音が返ってきた。
なんでもない、少し眠気のやってくるような昼下がり。
「お待たせ。はいどうぞ。」
「あぁぁっ!ありがとうございます!ありがとうございますぅぅ...!」
ぺこぺこと目元までかかった黒髪を揺らす依頼主さんに、マガジンのキーホルダーが付いた小さな鍵を渡す。
「これで家の中に入れる?」
「は、はいっ...!」
もたれかかっていた扉の鍵穴に、小さな鍵を差し込み、回す。
かちゃり、という気持ちの良い音がして扉が動いた。
「大丈夫そうだね。」
「も、もう家に入れないかと思いましたぁ...!......あ、お、お礼は...」
報酬のことを忘れていたのか、今になって慌てて自分の荷物を漁り始めたけど、それを静止して尋ねる。
「いや、お金とか物はいいよ。その代わり、この付近で起きてる通り魔事件について教えてくれればそれが報酬ってことで。」
「通り魔...事件?」
「うん。何か知らない?」
「......ごめんなさい。なんにも知らなくて......あっ。」
何か心当たりがあったのか、真っ直ぐ私の顔を見た。
びっしりと固められた前髪の間から、赤い瞳が見え隠れする。
「噂、本当に噂程度ですけど、聞いたことがあります。黒髪だとか、目が赤く光っていたとか。」
「おぉ!」
心の中に、『黒髪』『赤く光る目』の二つのキーワードをメモしておく。
「他には?他には無い?」
「で、でも、結局は根も葉もない噂ですよ...?」
「いいからいいから!」
「え、えっと...目から鉄をも溶かすビームが出るとか、何処へ逃げても瞬間移動で追いかけてくるだとか、銃弾を素手で掴み取って、デコピンで弾いた弾丸で装甲車にも穴を開けるだとか...」
「うん根も葉もないね。本当に。」
そんなこと出来たら人間やめてるよね。
「でも教えてくれてありがと!もう鍵落とさないようにねー!」
微妙な間を誤魔化すように大きく手を振って別れを告げる。
黒髪ね...髪色が分かっただけでも、十分な収穫だね。
あともう少し、依頼を片付けながら話を聞いて...と。
頭の中でなんとなしに情報を整理しつつ、すぐそこのベンチで手に持ったパッドとにらめっこしている先生の隣に座った。
物好きなのか、はたまた暇なのか。
あの時、いきなり入った依頼にわざわざ先生も着いてきて、そのついでと色々と他の依頼も片付けている時も私の近くをうろうろしていた。
悪いからと断ろうとしても、『私もできる限りの協力をするよ』の一点張り。
「...ん、あぁおかえり。どうだった?」
どうだったというのは、物探しの方じゃなくて聞き込みの方だろう。
「黒髪で目が赤く光るんだってさ。」
「.........そう。」
「あと目からビームが出たり、瞬間移動するんだって。」
「そうなの...!?」
「なんか、ここ最近噂がよく出回るようになったよねー。私ですらちょくちょく聞くよ。」
「あぁ、被害にあった子達の治療が終わった頃だからね。だから事件について話す人が増えたんだと思う。」
「なるほど。ところで先生は何してたの?」
「うーん...少し失礼かもしれないけど、心当たりのある生徒に連絡を取ろうとしてたんだ。」
「...奇遇だね。私も心当たりはあるんだ。連絡取れないけど。」
「私も。連絡が取れない。」
「残念。まあ溜まってる依頼ももう無くなるし、もう少しだけ待ってもらってもいいかな。」
兼賞金稼ぎは...今日はいっか。余裕はあるし、夜なんて例の通り魔と活動時間ダダ被りかもしれないし。
「...先生?」
ふとなんとなく、本当になんとなく、気になって質問が口から零れた。
「先生の呼ぼうとした人って...どういう人なの?」
「どういう人か......そうだね...少し過激で、お淑やかな子?凄く優しい生徒だよ。」
「わあ、ちょっとお姉ちゃんに似てるかも。ちなみにその人の特徴って何かある?」
純粋な好奇心の質問だった。...けど...
「狐の子だね。」
「...ん?」
結果的に、幸をなしたと思う。
「ねえ先生...その人ってさ。」
違ったとしても構わない。ただ勘違いだったってだけだから。
でも、もし先生と私の思い浮かべる人物が一緒だったなら...
「......黒髪で、百鬼夜行の生徒?」
私の目的に、ぐっと近付く気がするの。
あとがき
ことあとタマちゃんが先生の体臭を嗅いで、「あ、本当にお姉ちゃんの匂いする...」とかいう降りやろうとしましたけど、さすがに卑し過ぎたのでやめました。
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