「......あぁぁ〜...」
ベッドの中でジッと眠気を待ちわびている私とは反対に、私の胸の中でぐるぐる、もやもやと渦巻く雑念。
後悔...というよりはさっぱりとしていて、なんと言えばいいのか...
......恥ずかしい、かな...?
もしもの考えにも及ばなかった、私が。
まさか、お姉ちゃんと先生が知り合いだったなんて...なんなら、たまに当番で来ていたって...
色々とツッコミたいところはあったし、疑いもしたんだけどその...
わずかに紅潮した、まさに乙女の顔をしているお姉ちゃんの写真を見せられて信じるしか無くなった。
「......いや...どういう、状況なの...?」
お姉ちゃん、先生の前だとあんな顔するの?
...
......先生に、お姉ちゃんを呼んで欲しいって頼んだんだけど、ついぞ、小さな依頼となんの収穫も無い調査が終わる頃でも連絡がつくようにはならなかった。
昨日までならモモトークを送れば三秒後には返信されていたらしいんだけど...
なんだか、お姉ちゃんに避けられているようでいい気分にはならない。
ただ会いたいだけ。
顔も見たい。声も聞きたい。
しなやかな細い指で頭を撫でて欲しい。
でも、そんな贅沢は言わないから。
どれだけ怖けて痛い目にあおうとも、甘んじて受け入れるからさ...
お願い...お姉ちゃん......
「......会いたい...よ...」
「............?」
眩しい。
顔をしかめて遮光という役割をまるで果たしていないカーテンを恨みがましく一瞥して、携帯で時間を確認する。
「...もう、昼...!?嘘でしょ、アラームは...セットしてある...」
じゃあ寝ながらアラーム止めたってこと...?
「そんなに疲れていたつもりは無いんだけど...だいぶ溜まってたのかな...」
ぐっすり寝た割には、なんか...寝る前よりも疲れてる気がする。
「ねむ......いや違う違う!...探さないと。せっかく、先生の協力もあるんだから。」
両頬に薄らと紅葉を付けて目を覚ます。
ひりひりとじんわり焼けるような痛みで、涙目になりながらも身だしなみを整え直ぐに部屋を出た。
そうして、いつも通り古書館にやってきた昼下がり。
「や、おはよう。今はこんにちわ、かな?」
資料やらノートパソコンやらを広げて何かの作業をしていた先生がひらひらと手を振る。
「中々来ないものだから私の方でもいくらか調べておいたんだ。」
「あ...ごめん。その、寝坊しちゃって。」
「.........そうなんだ?ウイから聞いたよ、外食でお出かけしたら不良に誘拐されたって。だから心配してたんだ。」
「なんでそれ言っちゃうのウイさん...」
互いに深く傷付いた事件だっただろうに、どうしてそんなことを言ってしまうのか。
怒りよりも呆れの方が強いが、少しだけ...小一時間ほど問い詰めたい気分になった。
「巻き込まれ体質なんだろうね。その件と言い、私が着任した時と言い。」
楽しそうに笑う先生を他所に、私はある事が頭にふっと湧いて出ていた。
本当にくだらないことなんだけど...
「お姉ちゃんって、よく私のことを助けてくれてる...気がするの。」
「え?それってどういうこと?」
「なんて言えばいいんだろう...私が拉致られた時もお姉ちゃんが助けてくれたし、たまに買った覚えのない弾薬が増えてるし、いつぞやかなんてターゲットの取り巻きが爆発したし。」
「へえ、爆はt爆発!?」
「う、うん。交戦中、もの陰に隠れたと思ったら爆発したの。最初は手榴弾で自爆したのかと思ったんだけど...」
「...ワカモって、もしかしなくても結構過保護?」
「過保護...かは知らないけど、優しいお姉ちゃんだよ。」
「や、優しい...?」
どこが引っかかるところがあったみたいだけど、まあいい。
「そうだよ。お姉ちゃんは優しいの。だから......だから、今もこうして、近くにいるんじゃないかって...」
「...」
まじまじと驚いたように私の顔を見つめる先生と、目が合ってハッとした。
「...ぅあ、ご、ごめん!いて欲しいなって!そう!全く見つからないからもうむしろ近くにいるんじゃないかな?みたいな...!」
「...あははっ。本当にそうだったら、『灯台もと暗し』どころの騒ぎじゃないね。」
凝り固まった空気をほぐす様な笑い声にほっとしたのも束の間。
「あの...いつからここは、集会場になったんですか...?」
目の下に幅の広い隈を飾り付けた館長さんが顔を出した。
「うるさかった?ごめんねウイ。」
「はい...もう少し声を控えて、なんなら外のカフェだかなんだかで話してくれると助かるのですが。」
「ごめんなさーい...」
「...あ...タマヨちゃん...おはようございます...」
私の謝罪の声で気がついたのか、ぺこりと小さく頭を下げる。
そうして何を思ったのか、私の顔を掴んでずいと近寄った。
「......」
「え、あ、あの...?」
「...眠れて、居ないんですか...?凄い隈ですよ...」
「...ほえ?隈?」
言っている意味がわからず、先生の方に助けを求めると。
「うん、凄いよ。なんかもうそういう化粧みたい。だから寝坊って聞いた時は信じられなかったんだ。」
「そ、そうなんだ。ていうか、隈がどうとかウイさんにだけは言われたくないんだけど!?どうせまた徹夜して修繕してたんでしょ!」
「...どうせって...」
「なに?」
「どうせってなんですか。何が悪いんですか言ってみてくださいよ!」
「なっ、なんで怒ってるの!?」
「怒ってなんていませんが!?えぇ決して!私はいつだって落ち着いてますよ!」
なんかイライラする。いつもだったら謝ったら直ぐにその話は終わり。
なんなら、互いに謝るせいでむしろ終わらなくなるというのに...
「はい二人とも落ち着いて。深呼吸〜。」
ぎこちなく火花を散らす私たちの間に、先生が割って入った。
「ちゃんと寝れてないとイライラしやすいからね。ちゃんと寝な。」
「「.........そう(ですか)...?」」
私たちが同じように首を傾けて困惑している間も、ソファにクッションやらブランケットやらをまとめて行く先生。
「よし即席仮眠ベッド完成。じゃあ二人ともここに転がって。」
「「え?」」
「さあさあ寝転がって。夜遅くまで仕事に追われて磨かれた、先生の即席仮眠場作りスキルを舐めないでよ?」
「か、悲しいって!過程が悲しい!」
「せ、先生...!やめてください...!ま、まだ作業が...!」
ソファの上に詰め込まれ、自然にウイさんと抱き合うような形になってしまった。
困惑する私たちをそのままに、えっさほいさと枕代わりのクッションを整え、ブランケットをかける先生。
「じゃあおやすみ!今日一日はゆっくり休んで、調査とか作業はまた明日、元気な状態でやろっか!」
「い、いえ、必要ありませ......」
ウイさん?声が途切れたんだけど...嘘でしょ?
「あ、あの、おやすみって言われても、私さっき起きたばかぐぅ...」
あっ、なんか、安心する...
...
......
.........
”もう寝ちゃった”
”二人とも、そんなに疲れていたのかな?”
決して広いとは言えないソファの上で、仲良しの姉妹のように抱き合って眠る二人の生徒を眺める。
「うふへへ...」
「ん...」
片やそれはもう触り心地の良さそうな耳に顔を当て、片や相手の胸元に顔を埋めている。
”さて...”
”今日はシャーレに戻ろうかな”
無駄足になってしまったかもしれないけど、これが少しでも生徒の役に立てていたなら幸いだと。そう考えていた。
ただ、その夕方。
酷く焦燥したウイから、タマヨが居なくなったと連絡を受ける事になった。
あとがき
お久しぶりです。
いやあの...エタろうとしてた訳じゃなくてですね...モチベが無かったというか(問題発言)
気が向いたら更新していくスタイルなのでご了承をば。
タマちゃん失踪!
知らない間に居なくなっているってのは、的確にウイのトラウマほじくり返されてますね可愛い
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