醜く腐り果てた私は、まさしく害虫だった
何食わぬ顔で再び古書館を訪れると、
「ど、どこ、行っでだん゙でずがぁ゙〜!!!?またですか!?また拉致られたんですがぁぁ!!?」
...ウイさんが私の顔を見た瞬間に、泣かれた。
「ちょっとテロリストの爆破に巻き込まれただけだから。」
「なんにもちょっとじゃないですぅ!!怪我は!?どこも痕になってないですか!?」
「あー...うん。大丈夫、だよ。ウン」
肩とか背中に付いている痣の事は一旦忘れて安心させる。
最後の方でつい目を逸らしてしまったけど、バレてないみたいで私も一安心。
カスミさんの話の通りなら、まあ地面がどこかで打ち付けただけだろうし大事にもならなそうなんだから伝える必要も無いでしょ?
そんな屁理屈をこねくり回して堂々と隠し事をする。
この時ばかりは、心配よりも面倒だという考えの方が強くて、心配してくれているウイさんにどこか冷たい感情を抱く。
硬く無機質で、どこか赤黒い感情が滲み出そうだった。
じわり、じわりと...私の芯から蝕むようなそれを引き剥がしたのは、ウイさんのにへらと不器用な笑みだった。
「良かったです...本当に...」
いつも薄らと付けた隈がいつもより酷くて、その下には薄く赤い線が頬にまで垂れ下がっている。
「...ごめんなさい。」
すっかり毒毛が抜けて、心配をかけたこと、恩知らずな感情を抱いたことも含めて謝った。
「ふう...それにしても、助けてくれたのが先生で良かったですね。 」
「え?」
「はい?なにか...変な事言いましたか?昨日の夜、先生から連絡が来たんですよ。あなたを見つけたって。」
「...???」
おかしいなぁ聞いていた話と違うぞぉ?
カスミさんが私を拾った後、先生に連絡した?あの人なら、最近私と先生で一緒に居ることを知ってるだろうし。
それならまだ辻褄が...合うっちゃあ、合う。
「あー、うん。先生で良かったよ。本当に。」
とりあえず話を合わせておくのが無難そう。
嘘ついているみたいで、少し罪悪感があるけど...ま、どうでもいっか。
「...じゃ、私もう行くから。」
「は、はい!?疲れていないんですか?もう少しぐらい、休んだって...」
「いや、お姉ちゃんを探さないと...きっと、もう少しで会える。そんな気がするから...そうだよ。そうなんだよ。」
それでも私を引き留めたい、そんな顔をしてるね。おずおずと手を伸ばして、私に触れようとするんだ。
「で、でも、やっぱりあなたが心配で...!」
「...そうなんだ。」
一つ頷いて、私も手を伸ばす。
そうして、その手を突っぱねた。
「触らないで、この偽善者。」
「......え」
「自己満足に私を巻き込まないでって言ってるの。分からない?」
「な、なにを...急に「『何を言い出すんですか』...って?」
「ひぁ...」
何?その顔...うん、私も自己満足の為にここに来たの。薄っぺらな厚意でも、無下にすると
「でももううんざり。口先ばかりで何もしてくれない。自分が傷付きたくないからでしょ。違う?」
「ち、ちがっ...そんなことじゃ...」
「人と関わりたくないからでしょ。でも見なかったフリするのは苦しいもんね?いい加減にしてよ。上っ面だけ良い言葉を並べ立てて、あたかも私の理解者みたいなこと言って罪悪感を感じないようにしてさ...鬱陶しいんだよ。」
言い訳を、捲し立てるように上から圧し折る。
「関係ないことにまで口を出さないでよ。」
「ぇあ、ま、待って...待ってください!」
無防備な背中から、縋り付くような声が聞こえるけど、無視して古書館の扉を開いた。
分厚くて灰色の雲が空を覆っていた。
傘を取りに帰ろうか悩むぐらいの空色。まあいいかと楽観して歩みを進めると、前から見覚えのある人物が手を振っていた。
「おーい!」
...何を考えているのか分からない、得体の知れない大人。
いつも胡散臭い笑顔を貼り付けて、僅かなメリットの為に山ほどのデメリットを喜んで背負う狂人。
「元気そうで安心s「邪魔」
相手するわけないでしょ、そんなやつ。本当にお姉ちゃんを探しているのかも怪しいのに。
......気持ち悪い。
大広場。
トリニティらしいお上品な街並みの中に、これまた費用のかかりそうな噴水が混ざり込んでいる。
かなり人気みたいで、ベンチだったり噴水の近くだったりから人の談笑する声がよく聞こえる。
噴水からの集客目的か、決して少なくない数の店が建てられていて、一般的に可愛いと定義されるような服や流行りなのかなんなのか、繁盛しているスイーツ店もあった。
活気に満ちている。幸福に満ちている。
...あぁ、頭が沸騰してしまいそうだ。
底にへばり付いて、蛆虫が腸を貪っているみたい。
どうしてかは知らない。
ただむしゃくしゃする。
いらいらする。
これといった理由もないのに、お前たちが憎くて堪らない。
あれ...?こんなに、生き辛かったっけ。こんな、緩やかな風景で胸が痛むものだったっけ。
......
「君、大丈夫?顔色悪いけど...」
トリニティの生徒かな。トリニティの生徒だよね?
あの黒に赤いラインが入った制服はよく見た事がある。
「触らないで!!」
「え、あ...ご、ごめんね。」
あぁまた...また...
「ち、ちが、うの...ごめん、なさい...」
違うの。そんな事思ってないの。勝手に声が出ちゃうの。ごめんなさい。ごめんなさい。少しもそんなこと思ってないから。
ずっと、ずっとそうなの。
ごめんなさい。酷い事言ってごめんなさい。本心だなんて信じないで。
偽善者なんて思ってない。大事な友達なの。
気持ち悪いなんて思ってない。初めて手を差し伸べてくれた大人だから。
誰か、誰か...私の口を縫って頂けませんか?どうやっても解けぬ様に、何重にも重ねてこの忌々しい上下の唇を固めて頂けませんか?
目を潰して頂けませんか?壊れた目玉もくり抜いて、貴方達を憎ませないで頂けませんか?
耳を斬り落として頂けませんか?私を独り、静寂の中に捨て置いて頂けませんか?
誰か。誰か...私を
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