紫煙燻る黒狐   作:とろねぎ

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息を殺して機を伺う

 

 

 

はなれないと

 

にげないと

 

 

あなただけは、きずつけたくない

おねがい...

 

 

 

 

 

 


 

 

 

「えぇと、先生から送られた場所は...この付近、ですよね...?」

 

先生がタマヨちゃんの居場所を突き止め、その場所に向かったはいいものの...

 

人通りが少ない、こんなにジメジメと湿っぽい路地裏なんて聞いてません...一体全体、どうしてこんな所に...?

 

お仕事で何か...あったとか?探してるものがここにあったり...あとは...何でしょうか。

 

「ひ、ヒィィィッ!く、来るなあっ!!」

 

「ん...?」

 

向こうから走ってくるのは...最近活発に動いているらしいヘルメット団...でしたっけ、確かそんな名前だったはず。

 

しきりに後ろを気にして、どうしたのでしょうか。服も泥だらけで小汚いですし...

 

「な、なあアンタ!助けてくれ!!頼む!!みんなやられちまった!!」

 

「ひぁっ!?」

 

いきなり肩を掴まれて、思わず不快感を前面に出してしまいましたが、目の前のヘルメット団の人は、毛ほども気にしていないようです。

 

それよりも、身に迫る危険で一杯一杯のようですね。

 

「い、いきなり、なにを...!?ど、どうしたんですか...!?」

 

「来る!アイツが来るんだよ!!あの黒い「見いつけた」

 

勢い良く手を離されたものだから、後ろに倒れてしまいました。

 

ぶれる視界の中で、ヘルメット団が何かに引っ張られたのは認識出来ました。

 

「いたた...」

 

ごちん、後頭部で鈍い音が響き、目の前を星が舞う...

 

「や、やめっ...わ、わかった!なんでもすんぎゃっ!!

 

ですが、その中でも必死に訴える声と銃声は聞こえました。

 

「あれ?おーい。...あははっ、動かなくなっちゃったぁ。」

 

硬いものと硬いものをぶつけ合うような鈍い音が静かな路地に反響する。

 

頭を振って状況の確認に努めると、すぐ目の前...本当に、目と鼻の先...

 

「起きて。起きてってば。ねーえ。ひははっ...!」

 

リボルバーの銃身を握って、グリップをハンマーのようにしてヘルメットへ...一心不乱に打ち付けるタマヨちゃんが居ました。

 

頬には飛び散ったような黒混じりの赤を付けて、口元にはにんまりも三日月を浮かべ...

 

と、とりあえず、先生に連絡を...!

 

「ねえってばぁ〜起きろよぉ。なあ起きろって。早く、早く早く早く!起き上がれよ!背中を晒して逃げろ!恐怖に喰らい付かれても脚を止めず走り続けろ!おい!おい!!」

 

「ひっ...!」

 

到底、マトモな人間のする目ではありませんでした。

 

見ているこちらが痛くなる程に開かれた瞼。瞬きもせずにぷるぷると一点を見つめようと努力している瞳孔。

 

狐面で隠された左目は、面の奥で生物的な感情に訴えかける赤色が点灯していました。

 

そんなことを考えている間にも、鈍い音が響き、ヘルメットが変形し、ひび割れていく。

 

ヘイローも消えていることからもう気絶しているでしょうに...それにも気付いていない様子。

 

「っ...はあっ、はあっ、はあっ...」

 

...止まった...?

 

力無く腕を垂らし、肩で浅い呼吸を繰り返しているのを見て、今がチャンスだと。

 

 

 

 

 

 

...そう、勘違いしたんです。

 

 

 

 

 

「かふっ...!?」

 

背中から思い切り打ち付けられ、肺から空気が絞り出される。

 

そうしてすぐ間近までやってくるタマヨちゃんの顔。

 

先程までの狂奔ぶりはすっかりなりを潜め、私の顔をマジマジと穴が空くくらいに見つめてきます。

 

私の腕を押さえ付けて、抵抗されないようにしてから観察していると、突然私の顔に雫が落ちてきました。

 

「...タマヨちゃん...?」

 

「はーっ...はあーっ...だめ、だめ。ぜったい、だめ...やめて、やめろ、やめてやめて。ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

謝ると同時に、次第にぽろぽろと涙が零れ出す。

 

「う、うっ...うぅ〜...!!」

 

私の手を離して身を引くと、そのまま大泣き。

 

「どうして...なにを、謝っているんですか?どうして...泣いているんですか?」

 

「ひうっ...やだっ、にげて...おねがい、ちかづかないでっ...」

 

苦しそうに呻いて、大粒の涙を零す。

 

「...嫌です。絶対に逃がしません。」

 

銃を、構える。

 

一つ深く呼吸をして、震える手を宥め...構える。

 

お願いします。逃げないでください。

 

そう心の中で祈っていると、タマヨちゃんはゆっくりと立ち上がり、私に銃口を向けました。

 

「ねえ...おねがい...おねがいだから...!」

 

「お断りします。」

 

「じゃあ.........貴方が、私を満たしてくれるんだねっ!」

 

またあの、屈託のないと言えば良く聞こえる...血を幻視するような笑顔。

 

一切の躊躇も無く引鉄を引こうと動く指。

 

「...いいえ。残念ですが...」

 

ズダンッ!

 

「あ?」

 

建物と建物の間、細く狭い隙間を縫った紅い弾丸が、彼女の持つリボルバーを叩き落とした。

 

「私なんかより、もっと良い相手がいますから。」

 

自分を影が覆ったことから察し、すぐさまもう一つの銃を取り出して迎撃体勢を取ろうとするタマヨちゃんでしたが、相手が悪かったですよね。

 

「大人しくなさい。」

 

相手が実の姉(災厄の狐)なんですから。

 

背後に着地したワカモは、私の目では追い切れない程の速度で、バットのように振られた銃を受け止め、腕をひねり上げ、首...を絞めた。

 

「あ、ふがっ...!く、ぅぐうぅぅ〜!」

 

酸素を遮断されながらも、自由な腕でワカモの顔を殴り、果てには目に指を突き刺そうと暴れるタマヨちゃんでしたが、力無くワカモの面をコツコツと叩くだけでした。

 

「ぐぎっ...ぐ、ひゅー、ひゅーっ...!おえっ...」

 

抵抗する力を失って間もなく、軽く瞼が下りてぐったりとしました。

 

「......なんとも容易に落ちましたわ。これも全て、貴方様の計画のおかげ...」

 

「私は何もしてないよ。もしもし、あ、マシロ?マシロもありがとうね。」

 

誰かに電話をしながら、どこからか先生がやってきました。

 

なんでも、相手は正義実現委員会の狙撃手だそうで、トリニティで起きた事案ということもあって快く協力してくれたようです。

 

「それで...先生?この後は、どうするんですか?」

 

「そうだね...色々片付けないといけないことがたくさんなんだけど......とりあえず、二人はどこか...そうだ。タマヨの家で待っててくれないかな。そこの管理人さんには話しておくから。」

 

「はい喜んで、いつまでもお待ちいたします♡」

 

...一体隣の人はどなたでしょうかね?

 

私の友達のお姉さんっぽいんですけど、その人はかなり怖い部類の人なはずなんです。

 

でも隣の人は、なんと言うか...その......

 

猫を被っ「早く行きましょう。なにをグズグズしていらっしゃるの?」

 

ひっこわっ...!

 

今はとにかく、友達を人質にした凶悪犯罪者に大人しくついて行くことしか出来なさそうです。

 

...冗談のつもりで言ってみたんですけど、あながち間違っていないですね。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

 

 

 

 

 

シリアス無理!(アレルギー)

 

 

タマちゃんの紹介、やるなら

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