紫煙燻る黒狐   作:とろねぎ

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さすがにちょっと痛かった

 

 

 

 

うわ短っ

 

 

 

 

 


 

 

 

 

苦しい...

 

体が...動かない...

 

無音に近い世界の中で、私の足を掴んで...咥えていたそれの目が、機械のような無機質な光を放つ。

 

あぁこれがカンナさんの言ってたワニかな?そう思ってからすぐ、光る目に大して拳を突き刺した。

 

やらなきゃやられるって、本能的なものからの囁きもあったから。

 

でも、私の拳にはひりひりとした冷たい感触だけが帰ってくる。むしろそれで、ワニの正体に気付くことが出来たんだけどね。

 

こいつの存在も、正体も。

 

早く伝えたいんだけど、あいにく水の中で声を出す手段は持ってない。

 

というか...苦しくて、死にそう...

 

そんな思考を遮るように体へ負荷がかかる。

 

水を掻き分ける音がする。

 

呼吸器に水が入り込む感覚が滲んだ辺りで、水面が弾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぶっ...!?」

 

固く熱されたプールサイドに背中から打ち付けられる。

 

その勢いで肺の中にある水まで空気と一緒に絞り出されたからまあ良かったと思う。

 

「タマヨちゃん!な、何が!?何があったんですか!?アレはなんなんですか!?」

 

「ひゅーっ...こひゅーっ...」

 

意識が朦朧とする。

 

か細い呼吸音しか聞こえない。あ、これ、私の声か...

 

死にかけていた脳に酸素が回ってようやく、周りから聞こえる悲鳴や地面から伝わる振動に気が付いた。

 

「あ...れ...?」

 

それから、私を見下ろして心配している友達の顔にも。

 

「私、どうなって...」

 

「プールの中からアレが、あなたを口に咥えて出てきたんですよ!?しかも、そのあと投げ捨てられてましたし...!」

 

「あぁ...なる、ほど...」

 

例のワニは、いよいよ陸上で暴れることにしたみたい。

 

...どうして?

 

なんでわざわざ、陸に...?

 

しかもあれ、機械じゃん。余計に解せない。

 

立ち上がって火まで吹いてるんだけど...!?

 

やっぱり、攻撃が目的の兵器とか?

 

ここの破壊とか、愉快犯か...それこそ、カンナさん達への仕返しとか、そういうのも考えられるよね。

 

「あ、ちょっと...!」

 

私たちを影が覆う。

 

それが、闇雲に振り回され、今こちらに叩きつけられようとしているワニの太い尻尾だと認識するよりも早く、反射的にウイさんを横に突き飛ばして、私は転がって避ける。

 

破片となって吹き飛ぶ、固いコンクリートの地面を横目に体を起こす。

 

そうして周囲を確認。

 

逃げる人達の背中を見て、私たち...というより、私のせいで逃げ遅れたんだなって理解する。

 

それにたくさんの警備ロボ、それから...

 

「カンナさん達まで...」

 

隣にいるヘルメットに水着なんて変な格好の人は知らないけど、この騒ぎを聞き付けてやってきたみたい。

 

ワニも、そっちに気を取られて大砲みたいな威力の水鉄砲や、火炎放射で応戦してて...私たちには、気を取られてないみたいだね?

 

「ウイさん、大丈夫?いきなり突き飛ばしてごめんね。怪我は無い?」

 

「だ、大丈夫です...!そこの地面みたいになるより、よっぽど...!」

 

「なら良かった。カバン...ちょっと失礼。」

 

預けていたカバンに手を突っ込んで、固くゴツゴツとしたものを引っ掴んで、取り出す。

 

「...あっ、ごめん。今回は君じゃないの。」

 

妲己は火力不足だと思う。私が取りたかったのは...

 

「久しぶり。」

 

一丁のリボルバーを掴んで...

 

「ウイさんは避難しててね。危ないから。」

 

「え、な、何する気ですか!?まさか...」

 

「想像してるのとはちょっと違うかな。なんにせよ、お礼はしないと。」

 

一つ言い残して、後ろから飛び付いた。

 

『...!』

 

首に手を回した瞬間、それはもう物凄い勢いで暴れ始めるのに何とか食らいつく。

 

「め、めっちゃ暴れる!ぬぐぐぐ...」

 

「何をしている!避難勧告を聞いていないのか!」

 

うわー...!カンナさんめっちゃ怒ってる...!

 

ギザギザの歯を見せつけてきてる。

 

「あい、にく!こいつと一緒に!水中デートしてた、から!まっっったく知らないね!!」

 

「はあ...?いいから離れるんだ!」

 

「はいはい!すーぐ離れますよ!!でもその前に!」

 

機械のクセに疲れたのか、動きの緩慢になった隙を見逃さず、殺生石を、僅かに凹んだ眼球型の装置に突き付ける。

 

そしてそのまま一切の迷いなく、「お礼だよ、受け取ってくたばれ!」

 

引鉄を素早く二回引いた。

 

一回なら耐えられるけど、二回目の反動は耐え切れない。

 

だからその勢いのまま頭を蹴り飛ばして離脱。

 

『!!』

 

「おっ、暴れる暴れる。痛いふりしないでよ〜腹立つから。」

 

でも、そうやって苦しむ姿というのは、フリでも少しは溜飲が下がってくるね。

 

「じゃ...かよわ〜い一般客の私は避難しますね〜!」

 

最後に、落ちているコンクリートの破片を、火花を散らしている眼窩に一つ全力投擲して逃げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「みーつけた!」

 

そうしてすぐ、ウイさんに合流したの。

 

「無事、でしたか...良かった...それにしても、よく私を見つけられましたね?」

 

「うん、だってウイさんの匂い覚えてるもん。」

 

「...はい???」

 

「紙とインクの匂いもそうだけど、なによりウイさん本人の匂いがはっきり分かるし...ってなんで銃構えてるの?」

 

「エッチなのはダメです!」

 

「誰の口癖それ。はあ...せっかく楽しんでたのに、もう最悪だよ...」

 

「えーと...他のところ、行きます?」

 

「んーん、もうこの施設にいること自体が危険な気がするの。だから、今日はもう帰ろ?それで、また落ち着いた時に来たいな。」

 

そんなこんなで、初めて友達とのウォーターパークは終わった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「...なんてことも、あったなぁ...ふう。」

 

あれから数日後、不完全燃焼だったとはいえ楽しかったのは本当だった私の口癖はこれだった。

 

あの後結局、メカワニが実はミレニアムで作ったのが逃げ出したやつっていうのと、無事に抑えられたよっていうのを先生に教えてもらった。

 

...予想と全く違くてちょっと恥ずかしい。

 

「......今度は、遊園地にでも誘ってみようかな。」

 

たぶん断られると思うけど。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

あとがき

 

オチは死にました

 

ピキるタマちゃんが書きたくてやった話なのでもうなんとも

 

...

 

 

 

 

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