大人なミカはシャーレの先生!?   作:エクソダス

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第1話



 ――ミカ、シッテムの箱へようこそ。

 

 

 声が聞こえる、その声は聞き覚えのある男性の声。

 魔女であった自分を助けてくれた、大切な恩師の声。

 

 

 ――全て私のミスだ。私の選択、そしてそれによって招かれたこのすべての状況。

 

 

 ガタンと何度も音を立て、ゆったりと揺れる電車。

 青空照らすその車内で、お姫様と呼んでくれたかつての先生はそんな事を言った。

 

 

 ――これは、君にしか頼めないことなんだ。君にしか頼れない。

 

 

 顔が良く見えないその先生の言葉を、私は黙って聞く。

 

 

 ――君の過去の記憶は消えてしまうが、今の君なら大人としての責任と義務、そして選択を……あの頃の私より正しく出来るだろう。それが意味する心延えも。

 

 

 先生の言っていることはよくわからない。

 責任だの選択だの、意味深な話をこんな突拍子も無く。

 けど、なんとなく悲しそうな表情をしているように見える。

 

 

 ――ミカ、私が信じられる君になら、この捻れて歪んだ先の終着点とは、また違った結果を。そこへ繋がる選択肢は……きっと見つかるはずだ。

 

 ――だから……

 

 

 私はそれ以上先生に言わせることはなく、人差し指で先生の唇を押さえた。

 

 

「先生のお姫様にお任せっ」

 

 

 □ □ □

 

 

 と言うことでやっほー、皆のお姫様聖園ミカちゃんだよ~。

 まあ、もう二十代くらいだからお姫様って歳でも無いんだけどね。

 ってな訳で夢の中に先生が出てきて、目が覚めるとデカい学園都市的な場所に来ちゃったんだコレが。

 

 なんとなく見覚えがあるんだけど……良く思い出せない。

 

 なんか高校生の頃の記憶がすっぽり消えてるみたい。

 とまぁ、そんなことは置いといてね。目覚めたら学園都市『キヴォトス』の連邦生徒会所属のリンちゃんサンに。

 

 ――おめぇ、今からここの先生な。学園の命運を託した。

 

 とかなんとか言われました、はい。

 いや嘘じゃ無いんだよ、ホントにそう言われたんだって。

 んで、色々ごちゃごちゃと言われてさ。最終的に『生徒同士で戦争してるから止めてこい』って事になるわけ。

 

 うん、可笑しいよね。なんで子供が武装してんだろうね。

 

 でも、知っての通り私結構強いし子供をいたぶる趣味は無いから、軽くその場にいた子達に指示して軽くハリセンで応戦した訳。

 

 そしたらハッテムの箱だのアロナちゃんだの。

 軽く終わらせるはずがなんか色々と拡大してさ、結局先生を任されちゃったわけね。

 教育免許持ってないのに。

 

 とまぁ、ここまでがあらすじ。

 

 

 ――今の状況なんだけど……

 

 

「保育士ってどういう事ですかっ!」

 

 

 対策委員会の教室で、ケモ耳黒髪ツインテールの女の子に詰め寄られています。

 まぁ、ここにいる皆ケモ耳なんだけどね。

 

 

「どういう事って言われても……ね」

 

 

 頬を掻きどう言えば良いのかわからない私。

 ここにいる黒髪ショートのアヤネちゃんに手紙でSOSもらってね。シロコちゃんという銀髪クール系の子に連れられてこの場所までやってきたんだけどうっかり。

 

 

『あははっ、先生って言われるの新鮮だなぁ。保育士だし』

 

 

 っていっちゃったんよ、ホントうっかり。

 

 

「つまり話にあった先生じゃ無いって事ですか!?」

「えと、この学校で先生になることになったのは確かだよ」

 

 

 怒鳴り立ててくるセリカちゃんに押され、苦笑する私。

 仕方ないじゃん! 私にも何が何だかわからないんだから!

 こちとら恩師に言われてなあなあとここに来ただけで、教育者としての心得とか持ってないんじゃあ。

 それを見て、アヤネちゃんはセリカちゃんを落ち着かせる。

 

 

「と、とりあえず。物資の補給はしてくれましたから。ね?」

「アヤネは認めるわけ?! この人が先生だって!」

「そ、そんなこと言われても……」

「実際にここに来てるんだから、間違いない」

 

 

 怒りを隠そうともしないセリカちゃんに毒を吐くように、ぼそっと言うシロコちゃん。

 

 

「わ、私は認めないからね!」

 

 

 そう言うと、腕を組んでそっぽを向くセリカちゃん。

 うん、知らないことは拒絶。とても思春期らしい反応だ。お姉さん好きよ。

 

 

「ごめんなさいね先生。悪い子じゃ無いんですよ?」

 

 

 そうして誤解を解くようにおっぱい。

 失敬、長い髪でコートを着崩している女の子のノノミちゃんが優しく言ってくる。

 

 

「とっても良い子なんですけど、素直じゃ無いところが、ね?」

「大丈夫、こういう子にはなれてるからっ」

 

 

 聖母のような優しい表情のノノミちゃん。

 私はその母性まるだしに向けてウィンクをし、セリカちゃんに近づいた。

 

 

「な、何よ」

「にっ」

 

 

 警戒するセリカちゃんに向けて、ニッと笑みを見せる私。

 これでも先生という恩師と出会ってから世界が彩りへと変わり、あの人のようになろうと保育士を生業にする者だ。

 この程度のかまってちゃんの対処はお手の物だ。

 

 私はその場にしゃがみ込み、両手で自身の頬を包む。

 そして――

 

 

 

「セリカちゃんご機嫌斜め♪ 嫌なことあったのかなぁ?」

「…………は?」

「大丈夫だよ♪ 先生着いてるからね♪」

 

 

 

 と、猫なで声でいつものように言った。

 

 

 

 

「子供扱いしないで!!!」

 

 

 

 が、殴られた。

 

 

 □ □ □

 

 

「やっほ~、シャーレの先生きたんだって――なんかあった?」

 

 

 と、私が地面に突っ伏していると、一人の女の子がきた。

 その子はホシノ先輩、ここの委員長だそうだ。

 

 

「あはは~っ、ちょっと子猫ちゃんがひっかいてきただけさ」

 

 

 見つめてくるホシノちゃんに、突っ伏したままサムズアップする。

 今思ったが、年頃のツンデレ女の子にこんな絡みしたら怒るよね。さっきのをサオリちゃんで脳内変換したら余裕で召されたよ。

 あ、サオリちゃんって言うのは友達だよ。

 

 

「ほんっとになんなのよアンタ! こんなのが先生なんて信じられない!」

「まぁ、保育士って先生って言えるどうか微妙なラインだしねー。そういう反応も仕方ないかなぁ」

「そういう話をしてるんじゃ無いわよ! 何でこんな奴――」

「ま、まあまあ」

 

 

 ヒートアップするセリカちゃんを宥めるように、アヤネちゃんは彼女の前に立って落ち着かせる。

 それを見て、私は笑みを浮かべる。

 

 

「ふふっ、楽しそうな委員会だね」

「そう?」

「うん、そうっ」

「そ、よかったね」

 

 

 私が満面の笑みでそう言うと、シロコは無表情でそういった。

 ふむ、ここではこの子が一番ケモ耳美少女してる。なんとなくケモ耳ってクーデレなイメージ無い?

 と、そんなことを考えていると。

 

 

 バババババババ――ッ!

 

 突如として、銃声が聞こえた。

 

 

「じゅ、銃声!?」

「っ! みんな、慌てずにその場にしゃがんで。教室から出ちゃ駄目だよ?」

 

 

 私はその音を聞くと、ノノミちゃんの悲鳴の後声を上げた。

 全員がしゃがみ、パニックを起こして教室から出ないように指示をした後、私は窓際のカーテンに隠れ、窓から外をのぞき込む。

 そこにはヘルメットを被った学生の集団がおり、全員がライフルなどの火器を持っていた。

 それを確認すると、アヤネが声を上げる。

 

 

「わわっ!? 武装集団が学校に接近しています! カタカタヘルメット団のようです!」

「あいつら……性懲りも無く!」

 

 

 シロコちゃんがうっすら怒りの表情を見せる。

 

 

(世紀末かな?)

 

 

 学生が火器を持ってるとか冗談じゃ無い。

 初めてこの紛争じみた光景を見たときも思ったが、この場所は地獄か何か?

 

 

「先輩しっかりして! 出動だよ武器もって! 学校を守らないと」

「ふぁあ……頑張らないとねぇ……」

 

 

 未だに眠そうなホシノちゃんに叱咤するセリカちゃん。

 

 

「すぐ出るよ。先生のおかげで、弾薬と補給品は十分」

「はーい♪ みんなで出撃です~」

 

 

 シロコちゃんが淡々と言い、ノノミちゃんは優しい笑みのまま言う。

 そして、最後にアヤネが口を開いた。

 

 

「わたしがオペレーターを担当します」

 

 

 全員、戦闘準備完了といった様子だ。

 どうやら彼女達は私など無視し、カタカタ団とやらと喧嘩をしようとしている。

 

 

「先生はこちらで、サポートを――」

「待って待って待って、なんで当たり前みたいに武器持ってるの?」

 

 

 行動を開始する前に、私は声で制止をかけた。

 四人は不思議そうにこちらを見てくる。

 

 

「先生がいるから生徒同士の争い事は許しません」

「え、先生?」

「いやそりゃそうでしょ、子供の喧嘩を良しとはしないって。しかも相手武装集団だよ?」

 

 

 私はハッキリとそういった。

 この学園がどういう教育方針なのかは知らないが、教育者の立場が生徒の争いを肯定する訳はない。

 いや、肯定などしていいはずが無い。

 

 

「……じゃあどうするの?」

「皆は委員会活動して。外の問題児ちゃん達は私が全部対処する」

「はぁ!? 本気で言ってる?」

 

 

 私の言葉に驚くセリカちゃんとシロコちゃん。

 まるで自分達が対処するべきだと言わんばかりだ。

 

 

「外に何人いると思ってるのよ! 私達が――」

「セリカちゃん。外に何人いようと、私は子供が武装するのは容認できないし、しない」

「でも――!」

 

「大丈夫、私負けないから」

 

 

 

 

 

 先生、これから色々と面倒なことが起こりそうだよ。

 でもくじけない、私は先生のお姫様……いつだって明るく皆の為に祈ります。

 

 

 ――私は魔女、そして無邪気な夜の希望だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 というか、弾薬だって持ってきたのが全部ロールケーキなの。

 だって生徒集めてお茶会する気だったもん、ホントに必要になるとか思わなかったもん。

 

 ――どうか気付きませんように(祈り)

 

 

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