「はい、これでおしまい」
「むぐっ」
宣言するように言いながら、私はリーダーらしき赤服の子の口にロールケーキをぶっ込む。
私は二十人そこらの子供達戦闘を開始。
煽るように丸腰で正面に立ちーの。
弾全部よけーのした後、全員のライフル解体しーの。
――ロールケーキぶちぶち込みーの。
ヘルメット不良団をわからせタイム五十秒。
「学校に攻め入る、問題児全開で大いに結構だねっ! でも武装するのはいただけないなぁ。怪我しちゃうでしょ?」
「くっ」
「ささっ、元の場所に戻りなされ。出ないとロールケーキを穴という穴に入れてトラウマ与えちゃうよ?」
そう言うと、少女達は撤退していった。
いやー、生意気な子供をロールケーキでわからせるのは楽しい。
え、先生なら生徒を怒るべきだろ?
とんでもない、私は子供には全肯定を決めているのです。不良になっても良いじゃない、青春は一度しか無いんだから。
学生時代は唯一無二で一度限りだもん、何事も挑戦さ。
□ □ □
「ふぃー、終わった終わった」
背伸びをしながら晴れやかな笑みの私。
不良ちゃんたちに思うところは色々あるが、とりあえず生徒たちが無事であることを喜ぼう。
私はルンルン気分で廊下を渡り、対策委員会の委員室に戻る。
「やぁやぁ子猫ちゃんたち、無事だったか……」
「ちょっと! これどういうこと?!」
明るい笑みの私とは真逆に、入室早々怒鳴り声を上げるセリカちゃん。
「どうしたんだい子猫ちゃん。揉め事かな?」
話を聞こうと、私はセリカちゃんと視線を合わせるように上半身を倒して前のめりになる。
「これよこれ! これがどういうことって聞いてるの!」
怒り爆発のセリカちゃんが指すものを見る。
そこには【物資】と偽った段ボールが開封されており、それに入っていた何個かのロールケーキが外に置かれていた。
あー、気づくの早いなぁ。
「なにって、補給物資だよ?」
「このロールケーキの山の、何処が補給物資なんですかどこがっ!」
「何をいうのか、それは正しく補給物資。女の子にとっては甘いもの大事」
「ふざけないでっ!」
セリカちゃんはダンッと机をたたく。
そして、シロコちゃんからぼそっと「全部ロールケーキはおかしい」と毒舌をはかれたが気にしない。
するとアヤネちゃんが恐る恐るな様子で問う。
「あ、あのう。全部ロールケーキにしては重いものもあったんですけど……」
「あぁ、あれはコップやケーキスタンドやら……つまるところティーパーティーのセットだね」
「えっ」
「あー、触っちゃ駄目だよ? 危ないから」
アヤネちゃんは唖然とした様子。
学校にお茶会する設備無いだろうし、普通は持ってくるよね。
しかしなぜだろう、セリカちゃんの目にまた怒りが宿った気がする。
「あんたは──」
「まぁまぁ〜、結果的に先生が対処してくれたから良かったじゃ~ん」
ドウドウと怒りを鎮めるホシノちゃん。
それに続くように、ノノミちゃんが興奮を抑えるように口を開く。
「それにしても、とってもすごかったですっ。先生の戦い方」
「あ、見てたんだ」
「見てた、変だったけど凄かった」
ノノミちゃんに賛同するように、シロコちゃんが無表情のままコクリと頷いた。
それに続くように、ホシノちゃんとアヤネちゃんが口を開く。
「たしかにー、あれはすごかったねぇ。これが大人の力って奴かな」
「すごい動きで制圧して……見習わなきゃって思いました!」
「あははっ、どーもっ」
私は満面の作り笑顔で照れる。
子供に戦闘技術を褒められるのは、はっきり言って微妙な気持ちにはなるが、行為自体は受け取る。
「ま、まぁたしかに。すごかったけどさ……」
セリカちゃんもそっぽを向き、それだけは褒めてくれる。
そして、アヤネが礼儀正しくお辞儀をする。
「改めまして、先生。はじめまして、私達はアビドス対策委員会です」
「よろしくね、まずは手紙で書かれていたことの詳細を聞こうかな」
アヤネちゃんと握手を交わし、私はこの学園の現状を聞いた。
まず、対策委員会とはこのアビドスを復活させるために集まった組織。そしてこの学園には、眼の前にいる5人しか生徒はいないことが発覚した。
他の生徒は退学になったり転校したりでほとんどがここを出ていき、最終的に集まったのがこの5人。
んで、ヘルメット団とか三流不良がここを襲ってると。
「なるほど、状況理解」
話を聞き終わると、私はパンっと手を叩いた。
まずはあのヘルメットちゃん達を対処するべきだね。難しいことはとりあえず後回し。
「要するに、学校を復活させようとしても邪魔されるってことだ」
「まぁ、簡単に言えば」
「なら、とりあえずその不良ちゃん達と話をつけてくるね」
私はそう言うと、委員室にある窓へと近づいた。
「学校の問題は根深いだろうから、まずはやれるところからやろ」
「なにするき~?」
「さぁねぇー。君達は待ってな~」
眠たげなホシノちゃんが問う。
それにウィンクで答え、私はその窓から飛び降りた。
□ □ □
あい、と言うわけでね。
ヘルメット団の本拠地まできたんですねコレが、意外とわかりやすい場所にあって助かったよ。
私、考えなしに行動することがあるから、一瞬迷子になった。
と言うわけで、この本拠地の倉庫蹴破りまーっす。
「グーテンモルゲンKSGK共!! 先生とお茶会の時間だぜ!」
バァンっと大きく音を立て鉄製のさびた扉を開く。
するとすぐ目の前に、先程出会ったカタカタヘルメット団なる者達がいた。
「なっ、おまえっ!」
「アイツ! あたしたちにロールケーキぶっ込んだヤツ!」
「う、撃てぇぇええええ――っ!」
その瞬間、倉庫に銃声が響き渡った。
私一人に向かって何発もぶちかますもんだから、その場には火薬の匂いと砂埃が充満する。
「……やったか」
と、撃ち終わったのか誰かがそんなことを言った。
おおすごい、良くフラグで聞くけどこちらの立場だとこんな気持ちなのか。
滅茶滅茶ドヤ顔したい気分だ。
「やってたらいいねっ」
わたしは渾身のドヤ顔で腕組み。
私の身体には傷は一切ついておらず、付いているのは多少の砂埃のみ。
「なっ」
「砂遊びは終わり? 流石に高校生ともなると砂遊びは大人しいね」
そんなことをいってドヤ顔を見せる私。
子供が射撃してると考えるのはやだ、ので砂遊びなら問題なし。
「これじゃあ花組の砂遊びを相手してる方が疲れるよ」
「くっ、馬鹿にするなっ!」
私が挑発すると、再度打ち込まれる。
私はそれをこと如く躱し、自身の白いロングスカートと長髪をダンスする時のように翻す。
「さて、リロード時間は待ってた方が良いかな?」
「な、なんてことだ……」
「化け、物」
にへらにへらとそう言うと、どうやら戦意は喪失したようだ。
みんな恐怖の眼差しを私に向け、身体を震わせている。
「よしっ、戦闘する気が無いなら良いよ。今度はこっちの番」
そう言って、私は不敵な笑みを浮かべる。
その表情はかなり恐ろしい物だったらしく、目の前の少女達の瞳に恐怖と涙が宿る。
「覚悟、してね」
そう言うと、私はすぐさま扉まで後退。
そして段ボールを肩に抱えて再度倉庫に入り、少女達の目の前でドンっと段ボールを置いた。
「ほい、これプレゼント」
私は盛大に箱を開け、そこから一つ例の物を取り出す。
それは四角い袋に詰められた、市販のインスタントの紅茶だ。
「「「「え?」」」」
かっこよくそれを見せると、少女達は呆けた面をこちらに向けて……ん、なぜかな。画面の前の先生からもそんな表情を読み取れるよ?
いや、仕方ないじゃん。今はインスタントしか無いんだから。
「これ、は、なんだ?」
「紅茶だよ、ロールケーキだけなんて口が甘くなりすぎるからねー。持ってきた」
困惑するヘルメット団に見せつけたあと、私はそのまま立ち上がり踵を返す。
「んじゃ」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
んで、立ち去ろうとする。
しかし、何故か一人の少女に止められて、再度子供達を見る。
すると先程の怯えは何処へやら、こちらに困惑した様子を見せている。
「なにかな?」
「何しにきたんだよお前!」
「何しにもなにも、これ持ってきただけ」
私はそう言った後、あーっと声を上げる。
わかったそういうことね、先生がきたからシバキにきたんじゃ無いかとか説教しにきたんじゃ無いかとかそういう。
「多分みんな勘違いしてるよ、別に私は説教しにきたんじゃ無い」
「何だと?」
その言葉に、ピクリと少女が眉をひそめる。
「我々は学校を占領しようとしたんだぞ?」
「知ってる知ってる、けど説教する必要はないかな」
まるで言っている言っている意味が理解できない。
そんな表情をしている子達に向けて、私は優しい笑みを浮かべる。
「私は結構好きだけどね、学校占拠するの。だって格好いいじゃん」
「は、あ?」
「君達くらいの歳ならそういうはっちゃけが楽しいもんさ」
そう言って、私は再度踵を返す。
理解されなくても仕方ないが、今回ここに入ったのは本当に紅茶を持ってきただけ。
甘い物だけじゃ身体に悪いからね。
「占拠? 結構結構! いつでも占拠しにおいで、遊んであげるっ」
私はウィンクする。
基本的に私は子供にはゲロ甘なタチだ。不良だからと彼女達の行動を抑制する気はない。
それも、大人になる道にある通過点だと思うから。
間違っているだろうと大いに結構。
生きている限り、どんな未来へのチャンスも……いくらでもある。
□ □ □
――ど、どうして先生が私に謝るの?
――先生は悪くないよ……悪いのは私でしょ!?
何処かもわからない真っ暗な部屋の中、私は先生に向かって叫んだ。
――それなのにどうして……
――私は……魔女だよ?
私にはわからなかった。
自分はこれだけ悪い子なのに、これだけ嫌なことをやらかしてしまっているのに。なぜ先生はこんな目で見つめてくるのか。
もうこの人はすべて、知っているはずなのに。
私が悪い子だと……知ってるはずなのに。
――まだ私に、チャンスがあると信じさせるの?
大丈夫、ちゃんとあるよ。
たとえ失敗したとしても、何度でも――
道が続いてる限り、チャンスは何度だって生み出せる。
一度や二度の失敗で道が閉ざされることなんてことは無いんだよ。
□ □ □
「……あー、そっか」
なんとなく思いふけっていた私。
夕暮れに染まる世界に手を掲げ、呟いた。
「この気持ちも、先生譲りか」