大人なミカはシャーレの先生!?   作:エクソダス

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第3話



 というわけで次の日。

 現在私はまたもや対策委員会に向けて歩を進めているよ。

 前回はとりま不良ちゃん達の対処終わらせたじゃん? 今回は学校の問題なんだけどさ。

 

 この学校、借金あるらしいんだよね。しかもその額なんと9億以上! これが返済できないと、廃校手続きを取らなければいけないらしい。

 

 ──理不尽で草。

 

 

「さて、どうしようかな?」

 

 

 実際、この金額はかなりの問題。

 はっきり言ってただの学校が……いや、まだ年端も行かない学生が背負える金額を遥かに超えている。

 どうにかしなくては……

 

 

「ん?」

 

 

 そう考えていると、道端にツンデレちゃん!

 私はセリカちゃんに近づき、挨拶をする。

 

 

「やっ!」

「な、なに?!」

「おはよっ!」

 

 

 突然声をかけられて困惑するセリカに向けて、私はいつも子供に向ける満面の笑みで挨拶。

 

 

「セリカちゃんは登校中? えらいねぇ」

「うっさい! 頭なでんな! あとちゃん付けするな!」

 

 私が頭を撫でようとするとセリカちゃんはまるで子猫のように威嚇し、私の手を振り払った。

 

 

「いっておくけど、私はまだ先生のこと認めてないから」

「(´・ω・`)」

「そんな顔しても認めないものは認めない!」

 

 

 私の渾身しょんぼり顔はノーダメか。

 仕方がない、この借金が膨れ上がっても大人達は一切助けてくれなかったらしいから。

 大人自体が信じられないのだろう。

 

 

「まったく、朝っぱらからのんびりうろついちゃって。いいご身分だこと」

 

 

 毒を吐くように、そういうセリカちゃん。

 それにからからと笑う私。

 

 

「それより、こんな時間にうろちょろしてたら駄目な大人として見られるわよ?」

「ははっ、そりゃどうもー。というかセリカちゃんはホントにどこに行くの?」

 

 

 私は真面目に問う。

 たしか今日は自由登校日だったはずだ、つまり学校に行かなくてもいい。

 

「別に、あんたには関係ないでしょ?!」

 

 

 そういって、セリカちゃんは砂埃を立てながら走り去った。

 

 

 □ □ □

 

 

「…………」

 

 

 カタカタと、職員室であろう場所にタイピング音が静かに響く。

 作業を初めてすでに5時間は経過した、しかし私は休むことなくパソコンを打ち続ける。

この学園の設備点検、学校書類の作成、現状のデータ確認にその整理と……放置されてたそれらをやっているのだから時間などない。

 そして、あの借金。

 

 

「先生……」

「? なにアロナ」

「少し休憩してはどうでしょうか?」

 

 

 そんな事をしているもんで、画面の中から心配してくれる幼女が一人。

 紹介するね、この子はアロナ。画面の中にいる……つまり私の嫁だよ。

 

 ……冗談だって、本気にしないでよ。

 

 

「もう5時間もぶっ続けですよ? お体が持ちません」

「心配してくれるの? やさしいねっ」

 

 

 私は満面の笑みを浮かべ、彼女のタブレットをコツンッと突く。

 

 

「大丈夫だよ、これくらいは慣れてるから」

 

 

 これでも、保育士をやっているものだ。

 この程度の書類の量なら慣れてるし、そんなに疲れはしない。

 というか基本教育者は給特法というゴミ制度で鍛えられてるからね。マジなんなんあの制度……

 ごめんごめん。愚痴になりかけたね。

 

 

「でも……」

「アロナちゃんの気持ちはとっても嬉しいけど、今は体を労ってる余裕はないよ」

 

 

 そういって、私はある質問をアロナちゃんにぶつける。

 

 

「アロナちゃん、奨学金ってわかるかな?」

「えっと、学生のときに借りるお金。ですかね?」

「せーかいっ、よくできました」

 

 

 私はアロナちゃんに拍手を送った後、言葉を続けた。

 

 

「それじゃあ問題、借りた金額が五百万だとして……返済までにかかる年数は?」

「え、ええ、と……」

「正解は約二十年。高校卒業で返済してたとしても、完全返済頃は三十代後半」

 

 

 そういうと、アロナは驚いた顔をする。

 五百万でこれだけだ、借金が九億強なんて考えたくもない。

 

 

「たとえあの子達が肩代わりしたとしても、返済できる見込みは一切なし」

「…………」

「しかも、これは【うまく行った場合】の話。借金で頭が回らず、返済のため法外なブラック企業をやめれない。そんな人はいくらでもいる」

 

 

 そう、だから今どうにかしなくてはいけない。

 ここで頑張らなければ、ここにいる健気な少女達を路頭に迷わせることになる。

 どうにかしなくてはならない。

 

 ──少女達にそんな重荷を背負わせられない。

 

 

 □ □ □

 

 

「はぁああーっあ」

 

 

 夜中、私は帰路につきながらため息をついた。

 流石に九億という大金、軽く予算を捻出するだけでどうにか出来るとは思っていなかったけど、ここまで予算がないとは……。

 これじゃあ借金を返せれたとしても廃校になるゾ。

 

 

「というか億単位の金銭関係なんて一端の保育士が考えることじゃないよね……こう言うのは全部セイアちゃん辺りに任せておけば良いんだよ」

 

 

 まっ、『何故ここまで放っておけたか、心情が気になる』とか愚痴言われそうではあるけど。

 

 

 ――ダダダダダッ!

 

「っ、銃声!?」

 

 

 人の気配がほとんど無いはずなのに。

 何か嫌な予感がする、私は即座に走って行った。

 

 

 □ □ □

 

 

「ぎゃははっ! 上手くいったな!」

 

 

 トラックを走らせながら、夜にケラケラと笑う少女。

 その少女は赤い服を着ており、ヘルメットをつけている事からカタカタヘルメット団だと言うことがわかる。

 

 

「ふん、拍子抜けなくらいね」

 

 

 そう不気味に笑う助手席の少女。

 彼女達は、バイト中だったセリカの拉致に成功した直後だった。

 それは素早い手際で、恐らく誰も気付いてはいないだろう。

 

 

「さてコイツを人質にして今すぐあいつらを……」

 

 

 そういった、その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 すっと、少女達は神々しい何かを見た。

 その女性はまるで天使とも女神とも言える美しい風貌をしており、音を立てずにボンネット……少女達の前に降り立った。

 

 

 

「流石にちょっと、やりすぎかな?」

 

 

 しかし、その者の瞳は……狂気その物だった。

 

 

 □ □ □

 

 

「ふぃ~、足がいたいぃ……」

 

 

 真っ暗闇の深夜、一つしか無い電灯が照らす公園のベンチ。

 そこで私は未だ眠っているセリカちゃんに膝枕をしていた。

 

 

「二十歳にもなって無茶するもんじゃないね……」

 

 

 私は自分のやったことを誇りに思いながらも、後悔はした。

 この子が助けれたのは良かったとして、考えなしにトラックのスピードに追いつこうとしたのだ。

 明日は確実に筋肉痛だ。

 そんなことを考えていると、セリカちゃんの保有している携帯が鳴ったので、代わりに私が出る。

 

 

「はいはい、先生ですよ~。あ、シロコちゃん? 大丈夫だよ」

 

 

 どうやら、相手はシロコちゃんらしい。

 私は雑談がてら彼女と話していると、

 

 

「……んぅ? わた、し」

 

 

 セリカちゃんが意識を取り戻したらしい。

 彼女はうつろな目で真上にいる私を見つけた後、横を向いてここが公園であることを確認する。

 

 

「あー心配しないで。今セリカちゃんは私の隣で寝てるから」

「ぇ……、はぁ!?!?」

 

 

 と、間が悪い。

 どうやら覚醒したと同時に私に膝枕されていることに気付き、尚且つ『隣で寝ている』という明らかそっちの意味な言葉に動揺し、彼女はすごい速度で起き上がった。

 

 

「グッドモーニング眠りのお姫様。怪我は無い?」

「な、なな……っ!」

「いやー、災難だったね。まさか自分が拉致の対象になるとは思わなかったでしょ?」

 

 

 私が優しい笑みで言うと、セリカは顔を真っ赤にし、ぷるぷると震える指先で私を指してくる。

 

 

「なんでアンタが――っ!!」

「グーゼン、間一髪ってヤツだよ。たまたま拉致られる現場を目撃して、たまたま助けれただけだよ」

 

 

 私は立ち上がり、スカートのお尻あたりに付いた砂を払う。

 怖がらせないようにゆっくりとセリカちゃんに近づき、彼女の頭を撫でた。

 

 

「本当に、無事で良かった」

「…………」

 

 

 私は心底胸をなで下ろし、力なく言った。

 すると、セリカちゃんはどこかばつが悪そうに俯く。

 

 

「なんで……」

「ん?」

「なんで助けてくれたの? 私認めないって言ったのに……」

「君が私を認めないことと、助けることには何の関係も無いよ」

 

 

 私は優しく笑みを浮かべ、言葉を続ける。

 別に私は彼女が私を認めようが認めなかろうが関係が無い。そもそもさっきまでの私は先生として動いていたんじゃ無い。

 

 

「私は母性をもった人間として……女として君を助けたの」

「おんな、として」

「そうだよ」

 

 

 私はニッと子供に諭すように笑みを浮かべる。

 

 

「確かに私は、大人としても教育者としてもまだまだ未熟。先生のような尊敬される人間でも無ければ。プロ意識のある格好いい大人な仕事人でもない」

「…………」

「でも、そんなどうしようもない自分だとしても。子供だけは命をかけて助ける。それは資格でも何でも無い……子供が大好きな母性持つ女としての意地」

 

 

 私は出来た人間では無い。

 人に褒められる学力も無ければ、平凡ですら無い。

 問題児で醜い魔女、何度も何度も重大なことを間違えて失敗し、いろんな人達を悲しませ、迷惑をかけてきた人生。

 ――でも、いやだからこそか。

 

 

 

 

 

 自分の好き……母性にすら目を背けてしまったら。

 大人の責任、女として何かを失ってしまう気がするんだ。

 

 

 

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