生まれの呪い   作:バックステージ

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出会い

「五条要といいます!私の夢はいつか五条悟の支えとなるような呪術師になることです!よろしくお願いします」

 教室に入ってきた少女はいきなり自分の夢を宣言してみせた。五条悟の支えになりたい、そんな叶うはずもない夢を少女は大真面目に掲げていた。

 五条悟。軽薄で個人主義、だけど誰もが認める最強。六眼と呼ばれる特殊体質と無下限呪術の持ち主。五条悟の前では、伝統だとか歴史だなんだも意味がなくなってしまう。本来死刑だった人間を鶴の一声で救い、手を振るだけで特級クラスの呪霊を祓う。五条悟の足手纏いにならない人間はこの世にいない。そんなやつの支えになる?そんなのなれるわけない。

「よし!五条要さんね!僕は竹内蓮。レン先生でいいよ!で彼はねー」

「神木祐介です。よろしく」

自分で思ったよりずっとぶっきらぼうの挨拶になってしまった。

レン先生はオレと話していたことを短く五条要に伝えると、楽しそうにホワイトボードに文字を書き込んでいく。

「いや〜嬉しいよ!僕の授業を聞いてくれる人が二人もいてさ!ほら中々呪術の講義なんてないだろ?教える方も教える欲求を満たせなくてさ。今日は行けるとこはまで進めたいんだけど〜」 

言いかけたところでノックが鳴った

「どうやら時間切れみたい。今から呪術の実技の時間に移るから先生も交代だね」

レン先生はなんだか悲しそうに言うから、アフロも萎んで見えてくる。

「あれ!先生は実技見てくれないんですか?」

五条要の質問にレン先生はますます悲しそうに見えた。

「うーん、端的に言うと僕は呪術師っていうよりかは窓って言った方が近いんだよね」

窓。呪術師ではないものの、呪いを視認することができる人たちのこと…だったよな?

「だから僕はすんごいよわい!!そんな僕の代わりに君たちを見てるくれるのが」

言い終わる前に扉が開く。

「これからあなた達の監督をします。明一と申します。よろしくお願いします」

質素な袈裟に、丸めた頭、柔らかな物腰。どこをとっても呪術師らしくない。

(現役のお坊さんが呪術師に?聞いたことがない)

隣を見ると五条要も口を開けて驚いている。極めて異例なケースなのかも知れない。

「君たちの呪術の実技を担当します。まず二人とも、表に出ましょうか。どのくらい出来るのか知っておきたくて。」

促されるままにテニスコートくらいの大きさの広場に出る。

「それじゃあ、要さんと祐介くんで組手でもしましょうか」

いきなり坊さんはそう言った。オレは人以上に訓練はしてきたつもりだが、実戦経験はない。呪霊を祓ったこともなければ呪詛師と戦ったこともない。自分がどれくらい出来るか、これでわかる。準備は出来ている、でもその前に一つだけ聞いておかなくてはいけない。

 

「五条要」

「要でいーよ。私も祐介にする。そっちのが呼びやすいし」

「分かった、じゃあ要。君は全部わかっているのか?その…オレ達、神木の家が君たちを巻き込んでいること」

「私は私が役立つことをするだけだよ」

そういう要は、明るい印象とは真逆のどこか達観したような表情をしていた。この間まで一般人してたオレなんかじゃない生まれついての呪術師。そんな冷たさを感じて、オレは、その、なんて言うかムカついた。理由は分からない。何となくイヤだって感じた。自分が加害者側に立っているという事実に耐えられないか、要のことを哀れっぽく思っているのか。自分でも何でそう思っているのか分からない。でも、なにか行動しなくてはいけないと思う。そのために自分にできること、不器用で世間知らずなオレなりに考える。その結果、一つだけ案を思いついた。この組手で要に怪我をさせればいい。怪我を負わせたオレに要が嫌悪感を抱けば、何かが変わるかも知れない。家同士の話し合いになるとか、許嫁関係の話について何か変化があるかも知れない。

「それじゃあ、二人とも向かい合って。大きな怪我を負わせることないよう、紳士淑女らしく組手しよう」

明一さんの合図で、オレと要は向かい合う。お互いの術式や呪力量を見るための組手だが、オレのやるべきことはもう決めた。後遺症が残らず、オレのことを嫌悪するくらいの怪我を負わせる。これが正しいことかは分からないが、やるべきだと思ったことはやらなくては。彼女のために…いや、違う。要を言い訳にはしない。自分のためにだ。両の手の中で呪力の塊を作る。その呪力をツノのような形に練り上げ、ねじれの模様を刻む。神木家に伝わる力と呪いの象徴であるねじれ砲。これを3割の力でぶつける。

「それじゃあ、はじめ!」

明一さんの合図の瞬間に、オレはねじれ砲を完成させる。そして明一さんが制止の声を言い終わるよりも早く、無防備の要に大砲を撃ち込んだ。

「君は何をしているんだ!怪我をさせないようにと言っただろう!」

レン先生の声が響く。だがオレはその言葉を上手く飲み込めなかった。それくらいに目の前で起きていることは非現実的だった。砂煙の中にいた要には怪我一つなかった。いや、怪我どころじゃない。砂一粒さえ、彼女の衣服にかかっていなかった。

「明一さん、レン先生。私は怪我してないので大丈夫ですよ」

オレは驚愕と共に、彼女の名前を思い出す。彼女の名前は五条要。呪力で無限を具現化し、あらゆる干渉を無効化する「最強」の術式である無下限呪術の持ち主であり、自称五条悟を支える人。

 

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