~~真珠湾、執務室~~
提督「ふぅ…」
加賀「…」
提督「やはりコーヒーが一番落ち着くな…」
加賀「そうね…」
提督「早いとこアメリカとコネを作ってコーヒー豆売ってもらわんと…」
加賀「内地からありったけ積んできたから…あとドラム缶5つくらいかしら。」
提督「長くは持たないな…」
加賀「薄めに淹れるのは?」
提督「許さん。」
加賀「…そう。」
提督「よし…続きを話すか…」
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1942年、現地時間12月8日午前5時
~~ハワイ島北西海上~~
赤城「中佐、朝です。」
中佐「ん…」
赤城「起きてください。」
中佐「あぁ…わかったよ…」
赤城「天候がかなり良いです。本日夜間にはミッドウェー島を砲撃できるはずです。」
中佐「…長い一日になりそうだ。」
暗い太平洋を朝日のオレンジの光が照らす。オレンジ色の海に100に近い黒い物体が浮かんでいた。
真珠湾を空襲、日没前に航空隊を収容し、ミッドウェー島に向かっている艦隊。空襲を恐れ、機動部隊と戦艦部隊を含んでいるためかなりの隻数であった。機動部隊の一航戦、二航戦、三航戦、四航戦、五航戦、戦艦隊の第一戦隊(長門、陸奥)、第二戦隊(伊勢、日向、扶桑、山城)そしてその護衛隊で構成されていた。
中佐「壮観だな…」
赤城「えぇ…そうですね。今日の日没にはまた分かれますけど…」
これより行われるMI作戦、ミッドウェー島攻撃は夜間に戦艦を主力とした部隊による艦砲射撃によってミッドウェー島の作戦能力を完全に無効化する作戦である。日没前には艦隊は機動部隊と戦艦部隊に再び分離、空襲に弱く速度が遅い戦艦部隊はまっすぐ直進、ミッドウェー島北方を通りつつ砲撃、足が速く空襲に強い機動部隊は空母がいる危険性があるミッドウェー島南方を通りまわって砲撃が終わった部隊と再び合流。本土に帰還する算段であった。
わざわざ機動部隊と戦艦隊を分離する理由は敵の空母がミッドウェー島南方にいる危険性があるからである。潜水艦隊の情報、航空隊の情報では真珠湾にいて撃沈、無力化した空母は一隻。予想ではもう一隻、それ以上がいる危険性があるため、駆逐艦と潜水艦による誘致作戦が成功していれば南方にいる可能性が高い。戦艦隊は機動部隊より増援として三航戦が同行するが、航空機も少なく、足の遅い戦艦では空襲を受けたときに被害を受けやすくなってしまう。そして敵主力の戦艦は完全に破壊したので戦艦を相手にすることはほぼないといえる。空母には空母をぶつける方が安全であると判断した中佐はあえて部隊を分けたのであった。
右舷見張員「右舷…艦影、機影ともにナーシ。」
左舷見張員「左舷…同じくともに…?…敵機!敵機です!おそらく哨戒機!」
中佐「対空戦闘!機数は?直掩機を…いや、落とすな!打電を確認してから撃墜しろ!」
左舷見張員「敵機、PBY!機数は一機のみ!」
赤城「情報を渡してから落とすよう打電して!…遅いかも知れないけれど…」
中佐「なぜだ?」
赤城「直掩機隊が…加賀隊の二中隊です…」
中佐「はぁ…」
~~艦隊上空~~
加賀制空隊第二中隊隊長”二階堂大尉”妖精『見敵必殺!海の藻屑にしてやらぁ!』
白い零戦の胴体に二本の赤線、加賀隊の零戦四機がPBYカタリナ水上機に向かっていく。
距離が縮まり、照準器の円の中にカタリナがくっきりと映る。二階堂大尉が操縦桿のボタンを押し、機体が射撃の照準で揺れる。
曳光弾の光が敵機に当たり、小さな爆発を起こす。何発か当たったところで羽が折れ、バランスを崩し落下していく。
二階堂大尉『敵機撃墜!敵機撃墜ィ!戦果いただきだぁ!』
二番機妖精『大尉、赤城の姐さんとこから通信でぇ。打電させてから撃墜しろ。だそうで。』
二階堂大尉『なにぃ?もっと早く言ってくれよ…帰ったら加賀の姐さんに叱られそうだな…』
~~赤城艦橋~~
中佐「あ~」
赤城「加賀隊の目の前に敵がいて待てなんて聞きませんよね…」
中佐「打電は?確認できたか?」
通信妖精「いえ…何も確認できませんでした。」
中佐(ここで打電させてれば敵の空母が引っかかって居場所を割り出せたんだが…まあいいか)
赤城「これで艦隊の正確な位置がばれるのは防げましたね。」
中佐「いや…このままだと索敵機が未帰還のままになるからな、次の偵察機かそのまま攻撃隊が来る可能性がある…」
赤城「時間稼ぎ程度ですか…」
中佐「よし、寝かしていた航空隊の連中をたたき起こせ!総員、第一種戦闘配置!陣形は輪形陣を維持。直掩機を増やす、赤城の二中隊を上げる。」
赤城「了解、第一種戦闘配置を下令。制空隊二中隊、発艦準備!まずは四機上げる。ほかの機は甲板にて待機!」
戦闘配置を下令するラッパが艦内に響く。それと同時に艦内があわただしくなる。機銃妖精が走って銃座につく。甲板妖精や整備妖精は航空機を押し、エレベーターで甲板に上げていく。
中佐はふと周辺にいる艦を双眼鏡で眺める。加賀や蒼龍、飛龍などもエレベーターで零戦を甲板に上げ、発艦の準備をしていた。
中佐「あの偵察機の出所は…」
赤城「おそらくミッドウェー島でしょう。さすがにだいたいの場所はつかまれてますか…」
中佐「いや…打電を確認できていない以上、まだ北か南にいるかわかってないはずだ。南方での陽動がうまくいっていれば索敵網は南方の方が厚い…敵空母もおそらく南方だ…」
赤城「そこを叩くってわけですね!」
中佐「正直あまり相対したくないんだが…」
~~四時間後、ミッドウェー島東方約1000㌔~~
晴れた青い空に緑色のシュッとした機体が飛んでいる。機首には液冷の発動機、胴体に青い一本線が描かれていた。この機体は十三試艦上爆撃機の試作改良型、二式艦上偵察機であった。
蒼龍隊特設索敵小隊一番機操縦手妖精「相棒!何か見えるか?」
後部銃手妖精「視界はいいんだが…ん?あれ…見えるか?二時の方向。」
操縦手妖精「…あれか。!敵機だ!接近するぞ!位置を打電しろ!」
後部銃手妖精「了解!打電する!」
操縦手妖精「クソ!機種は…双発か。B-25?いや…B-26!敵機はB-26!」
後部銃手妖精「敵の護衛機は?俺には見えないんだが。」
操縦手妖精「確認できない!」
後部銃手「だったら一撃入れていくかい?この新型機ならいけるだろ!」
操縦手妖精「いくら何でも危険だ。少し近づいて敵の数を調べるぞ!」
後部銃手「了解!」
~~同時刻、赤城艦上~~
通信妖精「蒼龍偵察機二式艦貞より入電、敵B-26編隊を視認、こちらに向かっているとのことです。」
中佐「総員、対空戦闘用意!艦隊は陣形を維持、進路まま。増速…はできないか、戦艦がいるんだったな。」
赤城「戦闘機を上げます。甲板の二中隊を上げて!飛行甲板が空いたら第一中隊も上げます!」
中佐「…敵機はおそらくミッドウェー島からの攻撃隊か。位置は完全にばれたらしいな。夜まで被害なく逃げ切れればいいが…」
赤城「そうですね…いっそのこと今から攻撃隊を上げますか?」
中佐「それなんだが…昨日で真珠湾をやってそのままミッドウェーまで航空隊は危険がある。疲労度も整備も完全じゃない。被害が増えるだけだ。」
赤城「それじゃあ敵の空母は?いますよ、絶対に!」
中佐「…言っただろう?この作戦はあくまで敵拠点、前線基地の破壊が目標だ。空母を撃沈するのは本来の目標じゃない。航空隊はよくやってくれた。あとは戦艦隊に任せよう。敵空母がいないことを…いや、見つからないことを願おう。」
赤城「…」
空母の上にとまっていた戦闘機がどんどん上空に上がっていく。艦内では再びドタドタと騒がしくなる。砲術課は対空砲へ甲板員は発艦作業を急ぐ。
中佐「もしものためだ、各艦に通達。爆撃を受けた場合、一斉回頭を行う。」
赤城「了解しました。」
~~敵編隊視認より約30分後、艦隊西方約300km地点~~
赤城制空第一中隊長”坂谷少佐”『各隊に告ぐ、敵はB-26、防弾や防護銃座がいいと聞く。油断はするな、しかし、手を抜いてはいけないぞ!わかったか!』
迎撃隊全機『応!』
坂谷少佐(俺たちの任務は真珠湾で終わり、のはずだったが…赤城の姐さんや格納庫の弾薬の量を見る限りこりゃあ長引きそうだ。)
坂谷少佐は少し考えながら敵機を睨む。敵機がガッチリと編隊を組んで向かっていく。
坂谷少佐『よし、二番機、私は全体の指揮に徹する。赤城隊各機、二機一組で編隊を組んで攻撃しろ!一機も艦隊にはいかせんぞ!』
号令とともに零戦が増槽を落とす。高度を上げる機、横から仕掛けようとする機、真っすぐ突っ込んでいく機。編隊を解き、各機が思い思いに突っ込んでいく。
加賀制空第二中隊長”二階堂大尉”『加賀隊突入!二中隊だからってなめられるんじゃねぇぞ!第一小隊、俺に続け!第二小隊は五番機に任せる!』
加賀二中隊五番機『任せてくださいやァ!第二小隊、第一小隊の後ろから突撃!』
加賀隊が先陣を切って真正面から突入していく。
二階堂大尉『加賀隊の喧嘩ってのはァ、とるかとられるかだぁ!こいつらに好きにはさせん!まずは隊長機からぁ!』
先頭の二階堂機と二番機が敵の先頭の機体に向かって射撃する。敵の主翼の付け根がピカッと光ったと思うと、破片をまき散らしながらクルクルと回転しながら落ちていく。
二階堂大尉『一機撃墜ィ!続けていくぞぉ!この戦いでの撃墜王は俺なんじゃないかぁ?ハハッ!』
加賀隊の攻撃の後にほかの隊も続いて攻撃を仕掛け始める。
蒼龍制空隊第一中隊長”菅波大尉”『二航戦だって遅れはとらないぞ!ようし!かかれぇ!』
蒼龍隊は上からの降下攻撃を仕掛ける。敵機の銃座は混乱しているようで分散しており、いい標的となっていた。
菅波大尉『まだ…まだ…ここ!』
ぶつかるかぶつからないかのすれすれなところで射撃、下に抜けていく蒼龍隊。敵機は黒煙や炎を上げ高度を落としていく。
練度が高い一航戦、二航戦が無傷な機を狙い、比較的練度が高くない五航戦が落伍した機や手負いの機を狙い、確実に敵機を深海へと返していく。
坂谷少佐(…よし。かなり優勢だな。機数が多いからもあるが…これは艦隊にたどり着く前には落としきれそうだな…)
坂谷少佐は上から様子を窺いつつ手ごろな敵機を見極める。戦闘空域の少し外れに、二機の零戦と一機のB-26が見える。
瑞鶴隊七番機『八番機!防護銃座は俺が引き付ける!撃墜しろぉ!』
瑞鶴隊八番機『了解!攻撃します!』
そういって斜め下から銃撃を与えるがB-26はびくともしない。
瑞鶴隊七番機『やったか?ってうわぁ!』
七番機の周りを銃座の曳光弾が包み込む。
坂谷少佐(まずいな…五航戦は以前の作戦の被害が多きくて練度が低いと聞いてはいたが…しょうがないな…)
坂谷少佐『そこの瑞鶴隊、一旦離脱せよ。』
瑞鶴隊八番機『くっ!了解!』
上から坂谷少佐が仕掛け、銃撃を浴びせ、下に通り過ぎる。
通り過ぎた瞬間、B-26の胴体が真っ二つになり、回転しながら落ちてゆく。
瑞鶴隊七番機『うっそだろ?!あの侵入で…』
坂谷少佐『なるべく有利な位置から攻撃しろ。死にたくなかったらな。』
瑞鶴隊七、八番機『りょ、了解!』
~~同時刻、赤城艦橋~~
通信妖精「制空隊から通信、敵部隊は壊滅、全機撃墜、撃破したとのことです。」
中佐「…よし、急ぎ帰投させろ。弾薬が厳しいはずだ、まだ敵が来るかもしれん。」
赤城「これでミッドウェー島の航空戦力は奪えたはずです。」
中佐「慢心…と言いたいところだがおそらく奪えただろう。あとは…」
赤城「敵の機動部隊…ですね。」
中佐「おそらく今日はもう空襲はないだろう。敵も馬鹿じゃない。二度も同じようなことはしないだろう。」
赤城「それにしても…なぜ攻撃隊に護衛機を付けなかったのでしょうか?」
中佐「真珠湾の方で消耗したと考えたか、ミッドウェー島の空襲を恐れて温存しているかのどっちかだろう。」
この日は中佐の予想通り空襲はなく、潜水艦からの攻撃も特になく、時間が過ぎ、夕暮れ時になった。
中佐「よし…日が沈みかけてきたな。艦隊を分離させる!日が暮れてからじゃ衝突の危険がある。今の内だ…」
赤城「了解しました。戦艦部隊旗艦、長門に発光通信!艦隊から離脱、作戦通り夜間砲撃に移れ!」
日が落ちきると同時に艦隊は二手に分かれた。ミッドウェー島攻略部隊である戦艦部隊、空襲に備えた空母機動部隊。現状奇跡的に被害は出ておらず何もなく終わるのでは、と思う兵士が多かった。疲労もあったが真珠湾の成功もあり戦意は非常に高かった。
~~数時間後、赤城艦上~~
中佐「…時間か。」
ドーン、ドーンと音が鳴り、数秒後に爆発音とともに真っ暗な海上が赤く光る。
赤城「始まりましたね…」
赤い光が照らす薄暗い艦橋。そこで赤城と中佐が二人立っていた。
中佐「赤城…夜明けからは厳しい戦いになるかもしれん。」
赤城「覚悟しています…」
中佐「すまないがひと眠りさせてくれ…なんだか体調が悪い。」
赤城「わかりました。夜明け前には起こします。」
中佐「多分自分で起きるよ。」
中佐は艦橋から降り、自室へと向かった。
扉を開け、部屋に入る。
着替えもせずベットに横たわり、目を閉じる。
視界は闇に閉ざされる。
しかし突然視界が赤くぼやける。
中佐(…?)
目を開ける。
視界は黒く、赤い光がうっすらと周りを照らしていた。
??「ハジメマシテ…」
中佐は声がした後ろに振り向く。
中佐「お前は…誰だ?」
==続く==