なにか書きたくなって衝動的に書いてしまいました。拙い部分が多いと思いますが、よければ読んでやってください。
高度育成高等学校の門をくぐる。
オレ、綾小路清隆は無事高校生となり、クラス分けの張り紙を目にしていた。
「Cクラス、か」
一年の教室はA〜Dまでの4クラスで分けられている。学校という組織に属したことのないオレとしてみれば、その全てが新鮮な体験だった。
まずは友人を作ってみようと思う。高校生らしい生活というのは、友人を作って放課後などは共に遊んだり勉強をしたりするものだと、本で読んだ記憶がある。
Cと表記された教室に入る。まだ教室内にはそれほど人が多くない。座席表によると、オレの席は窓際の一番後ろ。荷物を置き、近くにいた男子に話しかけてみる。体格のいい男だ。
「なあ、ちょっといいか?」
「ああん?」
「……なんでもない」
いきなり睨まれた。どうやら、機嫌が悪いらしい。触らぬ神はなんとやらだ。
気を取り直して、他の人に声をかけようかとも思ったが、他はもうグループのようなものが出来上がっており、今から話しかけに行くのも躊躇われる。
結局、始業のチャイムがなるまで誰とも話すことができなかった。友人を作るのは難しいな……。
教師と思わしき人物が教室に入ってくる。メガネをかけた中年の、痩せ細った男性だ。名前を坂上と言うらしい。
それから坂上はこの学校のシステムについて話し始めた。
入学時点でオレ達は10万円分のポイントが支給されていること。ポイントではこの敷地内にあるものをなんでも買えるということ。ポイントは毎月一日に支給されるということ。等々。
そのほかにもいくつか説明していたが、オレには関係のないことだ。オレがこの学校に来た目的、学生らしい生活を送ることができるのであれば、あとはどうでもいい。
坂上が教室を去り、入学式まで少し時間が空く。
自己紹介をしようという流れになり、それぞれ立ち上がって、名前や趣味、特技などを発信していく。
いよいよオレの番だ。始業前は、誰とも話せなかったからな。ここで、挽回をしておきたい。
「……えー綾小路清隆です。えー趣味は特にありません。……えー、よろしくお願いします」
椅子に座る。……やらかした、ということだけは分かった。周囲からの視線が、やけに痛々しいものを見るもののそれだったからだ。前の方にいる、長髪の男なんかは、ククク……と笑いが抑えられないらしい。あいつ、名前はなんていったか。
入学式が終わり、その後は授業もないので自由となるが、当然話せる人がいないためボッチになる。
仕方ない、施設内の探索でもするか……。
ケヤキモールという施設の中には、さまざまな建物が揃っていた。コンビニ、スーパーなどを始め、カラオケやボウリング施設などの娯楽施設やトレーニングジムまである。生活する分には全く困らないようになっているようだ。
その中で、オレは興味本位でコンビニに入ってみる。カップ麺が一つ130ポイント……これは安いのか、高いのか。オレには判断する材料もなければそれを聞く友人もいない。近くにいた黒髪の女子に、いきなり尋ねたら不審者だと思われそうだ。
端の方に目をやると、無料商品というものが置いてある。ポイントがなくなった学生への救済措置のようなものだろう。仮にポイントを使い切っても最低限の生活はできる、という点においては安心材料だ。
とはいえ、この学校のシステムを聞く限り、不審な点がいくつかある。ポイントを無駄遣いするのは懸命ではないな。幸い、ポイントを消費する娯楽施設に誘ってくれるような友人はいないわけだが……。自分で言うと悲しくなってくるな。
ひとまず、味が気になりカップ麺を一つカゴに入れてレジに並ぶ。ところが、少しトラブルが起きているらしい。赤髪の生徒が、端末を忘れて支払いができないそうだ。立て替えるぐらいなら構わないのだが、いきなり初対面の男がそんなことを言い出すと警戒されるだろう。オレは黙って行方を見守ることにする。
結局、赤髪の生徒は部屋に端末を取りに行くことにしたらしい。オレも、端末は手元から離さないように気をつけよう。
その日はそれ以降、特に何事もなく1日が終わる。カップ麺はなかなか美味かった。時々なら購入を検討してみるのも悪くないな……。
翌日。授業が開始した。といってもこの日はオリエンテーション的な意味合いが強い。国が運営する学校ということもあって、中々授業内容は高度なものになっているようだ。オレにとってはどちらにせよ関係のないことだが。
授業中は、一部とはいえ大声で会話をしている人が目立つ。それを指摘する教師が誰一人いないのは、やはり違和感を覚える。間違いなく、この学校のシステムに関係があるのだろう。仮に、これが原因で来月支給されるポイントが減ろうが、オレには知ったことではない。
それより、流石に二日目とはいえ誰一人話せる人がいないというのは、今後の学校生活に関わってくるため、誰かに話しかけてみようと思う。
すでにいくつかグループが出来上がっているが、狙い目はやはりオレと同じように一人でいる人物だろう。おそらく、初日の友人作りに失敗し、孤独な思いをしているに違いない。
何人かターゲットを決めて、話しかけに行く。
一人目は、伊吹澪。ショートカットの女子で、昨日から誰とも話しているところを見たことがない。おそらく、うまく溶け込めていないのだろう。
「なあ、ちょっといいか?」
「は、あんた誰? 気安く話しかけないでくれる?」
「……すまない、人違いだ」
うまく溶け込めていないといったが、勘違いだったようだ。正しくは、溶け込む気がない。一匹狼というのは彼女のような人物を指すのだろう。昨日話しかけた男子といい、このクラスは威圧的な生徒が多くないか? それとも、これが普通なのだろうか。初めての学生生活ということもあり、比較ができないのがもどかしいところだ。
気を取り直し、二人目は椎名ひより。常に本を片手に休み時間は誰とも話すことなく読書をしている。一目で、読書が好きなのだと分かる。一応、オレもそれなりに本は嗜むから話のキッカケになるかもしれない。
「なあ、ちょっといいか?」
「はい、なんのご用でしょう?」
「いや、用というわけではないんだが……。その本、タイトルが気になってな」
「……!! もしや、あなたも本がお好きなのですか!」
瞬間、目を文字通り輝かせて身を乗り出す椎名。思っていたよりも食いつきがいい。
「好きか嫌いかでいえば、好きだな。本を読んでいると、自分の世界に没頭できる」
「そうです、そうです。本はこんなにも素晴らしいのに、残念ながらこのクラスでは読書をしている人を見かけません」
少し残念そうに、椎名は肩を落とす。
「ええと、確か、綾小路君でしたよね? もしよければ、この本お貸ししましょうか?」
「いいのか? まだ読んでいる途中だろうに」
「構いませんよ。実は、すでに読んだ本を読み直していたのです」
「それなら、ありがたく借りることにする」
椎名は、ニコニコと表情を歪ませながらオレに本を手渡す。
「読んだら、ぜひ感想を教えてくださいね。実は、友達と同じ本を読んで、感想を語り合うのが夢だったんです!」
「オレ達は、友達なのか?」
「もしかして、違いましたか?」
椎名は、分かりやすく目をうるわせて悲しそうにする。まずい、泣かせるつもりではなかった。
「いや、違わない。その、恥ずかしながらオレは友人が少なくて、どこからが友人と定義していいのか分からなかったんだ」
「そんなの、お互いが友達だと思えば友達ですよ。まあ、私も友達が多くないのにどの口が言ってるんだって話ですが」
椎名は、嬉しそうに頬を緩ませる。オレとしても、嬉しい限りだ。この学校に来て、初めての友人と言える存在を作ることができた。
オレは椎名と連絡先を交換し、ありがたく本を借りることにした。
これが、学生らしい生活というやつなのだろうか。