綾小路はCクラス   作:霧木 柊

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評価、感想がモチベーションに繋がっていますので、読者の皆様には感謝しかありません。今後ともよろしくお願い致します。


三話

 

 

 中間試験当日。オレ達Cクラスは異様な空気に包まれていた。

 

 一教科でも赤点を取ったら即退学。その重圧が重くのしかかってくる。

 

 試験対策としてCクラスが全体としておこなった事で言えば、他クラスの妨害のみ。これで、自分達は勉強不足で退学になりましたというオチでは笑えたものではないだろう。

 

 オレは、50点を取っておけば問題ないか。赤点は平均点の半分。50点あれば、万一にも退学はない。オレは早々にテスト問題を片付け、残りの時間はクラスメイトの観察をした。

 

 Cクラスは、龍園が暴力を使ってクラスを支配している。そのせいもあってか、比較的暴力行為に躊躇いのない生徒が多い。一方、この間図書館で会ったBクラスの生徒からは、暴力なんて考えられなさそうな温和そうな生徒が多かったと記憶している。これらはクラスごとの特色と言えるだろう。Cクラスにも、単純な能力だけであればもっと上のクラスにいてもおかしくないような生徒がいる。椎名や、金田あたりがその例だ。能力以外に、なにか意図的にクラス分けの基準があるのだろうか。他のAクラスやDクラスも見てみなければ結論は出せないが。

 

 そんなことを考えているうちにテストは終わる。皆どこか不安を抱えながらの帰宅となった。この緊張感は、いくらテストを重ねようと消えることはないのだろう。

 

 すると、端末にメッセージが入る。この間、図書館で連絡先を交換した神崎からだ。

 

『今から、少し話せないか?』

『構わないが、どこにいけばいい?』

『そうだな……あまり人目につかない場所がいい。指定するカラオケボックスに来てくれ』

『分かった』

 

 オレはテストを終えたその足で、カラオケボックスへ向かう。

 

 部屋に着くと、すでに中には神崎と……見知らぬ女子生徒が入っていた。二人は仲が良さそうに談笑している。

 

「すまない、邪魔をした」

 

 開けた扉をそのまま閉じようとして、

 

「待て、綾小路。いいんだ、入ってきてくれ」

「いいのか?」

「ああ、俺たちは綾小路に用があるからな」

 

 そう言われ、オレは案内されるがまま席に着く。カラオケボックスというのには来たことが無かったが、中はこういった作りになっているのか。歌を歌うのだから当然と言えるかもしれないが、壁はかなり防音性能が高そうで、内緒話にはもってこいの場所かもしれない。

 

 神崎と共にいた女子生徒は、一言で言うと天使のような美少女だ。顔立ちはアイドルも顔負けなほどに整っており、ストロベリー色の髪には艶がある。表情から本心を見抜くことはできないが、先ほどの談笑の様子を見るに、明るく接しやすい人物像だと予想できる。

 

「自己紹介がまだだったね。私は一之瀬帆波。一応Bクラスで学級委員長をやってるんだ」

「学級委員長?」

 

 聞きなれない単語に、オウム返しをしてしまう。

 

「私たちが勝手に作ったんだけどね。色々役割を決めておくと色々スムーズだからさ」

 

 えへへ、と一之瀬は、恥ずかしげにはにかむ。

 

「そうか、その学級委員長がオレになんの用だ?」

「俺が一之瀬に、綾小路のことを話したんだ。そうしたら、会ってみたいと言い出してな」

 

 神崎の中で、オレという人物像はCクラスにいる龍園反対派閥となっているはずだ。となると、話というのは。

 

「今回の試験、正直龍園くんの策には手を焼かされたよ。勉強に身が入らないって報告がいくつもあがったからね」

「それはすまないことをした」

「ううん、綾小路君が謝ることじゃないよ。それに、むしろBクラスの生徒に手を出そうとしているところを止めてくれたってきいたよ。その節は本当にありがとう」

 

 一之瀬は深く頭を下げる。

 

「……頭を上げてくれ。感謝されるような事はしていない」

「にへへ、それをサラッと言えちゃうあたり、綾小路君ってモテそうだよね」

「冗談はやめてくれ」

 

 それより、本題に入ろう。

 

「大方、龍園を止めるために協力してほしいと言ったところか?」

「え、よく分かったね!? まさに、それをお願いしようと思ってたんだ」

「オレは仮にもCクラスだ。それはクラスを裏切ることになる」

「もちろん、クラスを裏切れって言っているわけじゃないよ。ただ、龍園くんのやり方はその内多くの生徒を傷つけることになりそうで、それが私は怖いんだ。Bクラスの友達が傷つけられたらって思うと、居ても立っても居られない」

「一之瀬は優しいんだな」

「……そんな事ないよ、私なんて」

 

 やけに、返答に間があったような。彼女もまた、なにかしらを抱えているのかもしれない。

 

「だからね、龍園くんが生徒を傷つけるような作戦を取ろうとした時だけ、私に教えてほしいんだ。もちろん、タダでとは言わないよ。相応のプライベートポイントを払う準備ならあるからね」

「……少し考えさせてくれ」

 

 正直、この提案はオレにとってどちらでもいいことだ。仮に龍園の策で誰かが傷つくことになろうと、それが原因でオレの行動に影響が出ることはない。だからといって、一之瀬の提案を拒否する理由もない。

 

「一之瀬、一つ聞いてもいいか?」

「うん、私に答えられることなら構わないよ」

「一之瀬はオレのことをどう思っている?」

「にゃあ!? えっと、それは……どういう意味かな?」

 

 しまった。なにか誤解をさせる言い回しをしてしまったかもしれない。

 

「深い意味で捉えないでくれ。オレという人間をどのように評価しているかを教えてほしい」

「えっと……、評価だなんて偉そうなこと私にはできないけど。綾小路君は話した感じすごくいい人だし、友達だと思ってるよ!」

「そうか」

 

 友達、か。それなら、友達のためになにかをするというのも、アリかもしれないな。それで、オレの心境に何か一つでも変化があれば、その行動は成功といえる。

 

「さっきの話、受けようと思う」

「え、いいの!? こっちから提案しておいてなんだけど、少なからずクラスを裏切ることになっちゃうよ?」

「構わない。元々、クラス内ではあまり居場所がなくてな。そこまで心が痛まないんだ」

「そっか、ありがとう。これでこの先、Bクラスはかなり戦いやすくなる」

「オレにできることなんて、ほとんどないぞ?」

「充分すぎるよ」

 

 オレと一之瀬は握手を交わし、連絡先を交換する。Cクラスのはずなのに、クラス内よりも他クラスの連絡先の方が多くなってしまったな。

 

 これで今日は解散となった。友人のためにクラスを裏切る。この行動が、オレにどのような感情を与えてくれるだろうか。少し、ワクワクしている自分がいることに気がついた。

 

 椎名から来ていたメッセージを返し、眠りにつくことにする。気になる新書が出たらしい。

 

 

 翌日。中間試験の結果が発表された。

 

 Cクラスからは、退学者はなし。最下位の石崎はかなりギリギリだったが、無事突破できたらしい。

 

 だがそれ以上に、今日の話題は別のことだった。

 

 Dクラスから、退学者が出た。須藤という生徒が、驚きの全教科で赤点を叩き出し、退学という運びになるそうだ。今回の難易度で全教科赤点となると、小学生の学習範囲すら履修できているか怪しいな……。

 

 もはや、須藤を救う方法はないだろう。聞いたところによると、Dクラスはお通夜状態だそうだ。入学して一ヶ月ちょっとの時間でクラスメイトが退学するというのは、それだけショックが大きい出来事なのだろう。

 

 龍園といえば、これで退学のペナルティがわかるぜ、とむしろ喜んでいる。龍園らしいな。

 

 結果を見て、オレは教室を後にする。すると、Dクラスから出てきた一人の女子生徒と目が合う。

 

「あなた、少し顔を貸しなさい」

「……もしかして、オレのことか?」

「他にいないでしょう? いいから、ついてきてちょうだい」

 

 やけに偉そうで、逆らったら逆らったで面倒臭そうなので、言われるがままに女子生徒の後についていく。

 

「ここでいいわ。ひとまず自己紹介をしておきましょう。私はDクラスの堀北鈴音よ」

「オレはCクラスの綾小路清隆だ」

 

 堀北は、キリッとした目つきで、その言葉をオレに投げかける。

 

「単刀直入にいうわ。……あなた、私と取引する気はある?」

 

 




この辺りから色々原作から離れていく予定です。須藤の退学は、さすがに防ぐ方法が思い浮かびませんでした……。
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