綾小路はCクラス   作:霧木 柊

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このサイト面白い二次創作が多くて読むのが追いつかないです。


六話

 

 昼食を終え、昼休みも終盤に差し掛かったころ。オレたちは解散するが、石崎だけを呼び止める。

 

「そういえば石崎、お前に伝言を預かっているんだ」

「伝言? なんだよそれ」

「それはオレにも分からない。昼休みの終わり際、2階の廊下に来てほしいそうだ」

「ったく、めんどくせーな。相手は誰だ?」

「名前は聞いていないが、女子だったぞ。なにやら伝えたいことがあるそうだ。なんでも、とても大事な話と言っていたぞ」

 

 当然、全て嘘だ。伝言なんて預かっていないし、そんな女子は存在しない。

 

「へへへ、まあそういう事ならしょうがねーな。面倒だけど、行ってやるか!」

 

 まんざらでもなさそうな表情で、石崎は走り去っていく。

 

 さて、これでもうオレの役割は終わりだ。あとは作戦通り、上手くいくのを期待しよう。オレは午後の授業に備えて教室に戻ることにした。

 

 午後の授業中、後ろの席から観察すると、明らかに石崎の表情は顔面蒼白といった感じだった。作戦が上手く行った証拠だろう。授業中、右腕の包帯とは別に、なにも手につかないといった感じで、授業をまともに受けられる状態ではない。予想以上の成果と言える。

 

 放課後。焦った様子の石崎がオレの元へとやってくる。

 

「あ、綾小路。昼休みの件で話があるんだけどよ。ちょっとこの後いいか?」

「ああ、構わない。実はあの後どうなったのかが気になっていたんだ」

 

 実際はそんなことはなく、なにが起きたのか全て分かっているのだが。そんなことを言ってしまえば、石崎にオレの仕組んだことだと気づかれてしまう。

 

 オレの部屋か石崎の部屋かで悩んだが、石崎の部屋は散らかっているらしく、オレの部屋で話すことになった。喜んでいいのか、初めて部屋に上げたのが石崎ということになる。

 

「お茶とコーヒー、どっちがいい?」

「お茶で頼む」

「分かった」

 

 自分の分と石崎の分のお茶をカップに入れて、オレは床に座る。来客を想定していなかったため、オレの部屋には座る場所がベッドぐらいしかない。そのベッドはすでに石崎に占有されているため、仕方なく床に座る形だ。

 

「それで、なにがあったんだ?」

「それがよ、綾小路に言われた通り、二階に行ったら女子がいたんだ」

「それは、なにもおかしなことじゃないな」

「いやいやいや、そっから肝心でよ。そいつ、ここだとなんだからって言って近くの教室に入ろうってことになってよ。先に入っていっちまうもんだから、当然追いかけるだろ? したら、その中はどうなってたと思う?」

「……想像がつかないな。ただの空き教室じゃなかったのか?」

 

 当然、そこがなにに使われている教室かは知っている。その上で、計画に組み込んだからな。

 

「その教室、女子更衣室だったんだよ! Bクラスの女子が着替えてたんだ!」

「それは……まずくないか?」

「そうなんだよ! 訳わかんねえけどさ、入った瞬間写真撮られて、動画も回ってたみたいなんだよ」

 

 これで、女子更衣室を覗くCクラスの男子生徒という構図が出来上がる。ちょうど今日の昼休み明けの授業がBクラスは体育だったことは都合が良かった。その時間に女子更衣室に入れば着替えている女子がたくさんいたことだろう。

 

 あとは一の瀬に頼んで写真と動画を撮る準備をしてもらっていた。少なからずBクラスの女子の体が見られる作戦に、最初一之瀬は後ろ向きだったが、クラスの全員にあらかじめ作戦を伝えて石崎が入ってくるタイミングで、タオルなどで肝心な部分を隠すということにして了承をもらった。

 

 そこからは簡単だ。石崎のことを徹底的に脅せばいい。この動画が学校側に渡れば、最悪退学。退学にならなくても、重いペナルティーを負った上で、三年間女子に冷たい目で見られることになる。

 

「俺、もうどうしたらいいか分かんなくてよ。パニックになっちまって。そしたら一之瀬が、渡辺への訴えを取り下げるなら動画は消すっていうから」

「訴えを取り下げたのか?」

「あ、ああ。Bクラスにはめられて訴えを取り下げたなんて、龍園さんには言えねえし。俺、どうしたらいいかな、綾小路」

「それは、伝言を受け取ったオレにも責任の一端がある。申し訳ないことをした」

 

 あくまで、オレもBクラスによって利用された生徒。その立場を崩さないようにする。ここで裏切り者だと糾弾されることになっては、なんのメリットもない。

 

「い、いや、それはいいんだ。綾小路は悪くねえよ。騙された俺がアホだった。でもよお、これって絶対明日になったら龍園さんにバレるだろ? なんて言われるか……」

 

 どうやら、石崎は罠に嵌められたことというより、龍園からの罰を恐れているらしい。

 

「綾小路ー、頼むからお前も一緒に龍園さんに謝ってくれよぉ。俺一人じゃ、なにされるか……」

「すまないが、遠慮させてもらう。オレも痛いのはごめんだ」

「そんな、俺たちダチじゃねえかぁ」

 

 石崎が半泣きになりながら縋りついてくるが、キッパリと拒否し続ける。こういうのは情を見せたら終わりだ。

 

「実はこのあと予定があるんだ。そろそろ解散したい」

「そんなっ、見捨てるのかよ綾小路!」

「そういうわけではない。龍園に許してもらえるよう、オレも作戦を考えておこう」

「綾小路、お前ってやつは!」

 

 途端に、石崎の表情が明るくなる。なんとも分かりやすいやつだ。

 

 そこでオレと石崎は解散し、神崎の部屋へと向かう。

 

 すでにそこには、一之瀬、神崎、渡辺の姿があった。

 

「遅いぞ、綾小路!」

 

 すっかり元気になっている渡辺が、オレの姿を見て勢いよく手を振る。

 

「すまない。少し呼び止められてな」

「今回の主役が遅刻は場が盛り上がらないな」

「綾小路君も来たことだし、もう一回乾杯しよ!」

 

 一之瀬にジュースを注いでもらい、カップをぶつけ合わせる。思えば、こんなに騒がしい会に参加したのは初めてかもしれないな。普通の学生は、これを青春と呼ぶのだろう。

 

「それにしても、綾小路の発想には驚かされた。まさか訴えを取り下げるために脅し返すとは……」

「たまたま思いついたんだ。目には目を、ってやつだ」

「俺、本当にもうダメかと思ってたんだぜ? 綾小路には頭があがんねえよ」

 

 渡辺は、拝むように両手を合わせて擦り寄ってくる。

 

「やめてくれ。渡辺はなにも悪くない。冤罪がかからなくてよかった」

「綾小路……」

 

 当たり障りのない返事ができていると思う。あくまでオレがこの作戦を思いついたのはたまたまだと主張しておこう。

 

「綾小路君にはすっかり助けてもらっちゃったね。ほんとに感謝してる」

「問題ない。そういう約束だからな」

「うん、約束だもんね。だからちゃんとプライベートポイントを払うよ」

 

 一之瀬が端末を操作しようとするところを、オレは未然に防ぐ。

 

「必要ない。代わりに、今度オレが困っていたら助けてほしい」

「それは、もちろんだよ! 綾小路君が困ってたら助けるに決まってる」

 

 一之瀬の意見に神崎と渡辺も同調する。どうやら、予想以上にBクラスからの信頼を得ることができたようだ。そのためであれば、多少のプライベートポイントは惜しくない。

 

 それから、オレたちは会を楽しんだ。意外だったのが、普段固そうに見える神崎も、こう言った場ではかなり打ち解けて柔らかくなるということだ。

 

 これで、Bクラスに対する太いパイプを手に入れたことになる。そう言った意味でも、今回の龍園の策はオレにとっていい方向に働いた。本人は思ってもいないのだろうが、感謝しなければいけないな。

 

 おそらく、明日にはポイントが支給されているだろう。椎名が、気になる新刊が出たと言っていたし、それを買いに行ってもいいだろう。オレの高校生活はまだ始まったばかりだ。自由に、やりたいことをやってみようと思う。

 

 




みなさんはよう実のヒロインだと誰が好きなんですかね。この作品、ヒロインができるか怪しすぎて、、、。
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