しゃーないでしょ!だってミカの会話なげーもん!
「それで……裏切り者は一体誰何ですか?」
「順を追って説明します」
「まず下江コハルさん」
「コハルさんは恐らく正義実現委員会に対する人質、つまりコハルさん本人が裏切り者ではなく正義実現委員会自体が裏切り者という説です」
「コハルさんを人質にする事により動かなくさせる……といった意味合いでしょう」
事実、コハルさん自身の頭脳はあまり良いとは言えず成績も低い。
そんな彼女が単独で裏切り者をするのはかなり難しいだろう。
「しかし私は一年前に正義実現委員会の副委員長、ハスミさんと面識がありましてね」
「それに昨日ハスミさんと会いまして、エデン条約に対する見解も得られました」
「エデン条約などの政治的な事はティーパーティーに任せる、と」
「この時点で私は既にコハルさんは裏切り者では無いと私は確信しました」
「えっ、ユウキさんハスミさんと面識あるんですか?!」
「はい、昔ちょっと……まぁその話は後でしましょう」
「次にヒフミさん、貴女です」
「私ですか?」
「まずティーパーティーの桐藤ナギサから裏切り者を探せと言われた事、その他もろもろの観点から裏切り者の可能性は低いと思い裏切り者では無いと考えました」
「ヒフミさんが裏切り者の時点で桐藤ナギサが考える補習授業部はもう終わり、意味を成しませんしね」
「そして残ったのは浦和ハナコさん」
「ハナコさんは昨日言った通りその頭脳はトリニティでも最高級の頭脳です」
「ではもしも、もしも彼女が裏切り者だとしたら?」
「キヴォトスでもトップクラスの頭脳を持つ方が裏切り者だとしたら……えぇ、恐らく既にトリニティは転覆されています」
「そ、そうなんですか?」
「ええ、最効率の転覆のさせ方を思いつき、実行に移すでしょう」
「エデン条約を邪魔するのだって恐らく簡単に出来るでしょう」
「だから逆に考えました、ハナコさんは裏切り者では無い、と」
「しかしこの考えに至るまでの過程に穴が多く存在します」
コハルさんとハスミさんの会話、ハナコさんがわざと成績を下げる理由、何も分かっていない。
「ですが」
「今、結論が導き出されます」
「どういう事ですか?」
ポケットから端末を取り出す。
「先生に盗聴器を仕掛けました」
「!?」
「先生はどうやらティーパーティーのパテル派代表、聖園ミカと一緒にいるようです」
端末の音量を上げると先生の声と聖園ミカの声が聞こえる。
「な、なんで先生とミカ様が……」
「話を戻します」
「私が導き出した結論、つまり━━━」
端末から聖園ミカの声が聞こえる。
「トリニティの裏切り者、それはね」
「トリニティの裏切り者、それは……」
「白洲アズサ」
「白洲アズサです」
私の結論は真実と証明された。
━━
「私達はもう戦わなくていい、一つの学園になろうっていうのが第一回公会議」
「その会議を経て生まれたのが私達のトリニティ総合学園」
「でもその会議に最後まで反対してた学園があったの」
「それがアリウス」
「元々私達とあまり変わらなかった分派の一つ」
「経典に関する解釈の違いがあったくらいで色んなところが似ていたらしい」
「チャペルの授業もあったし見た目もほとんど一緒で……それでゲヘナの事を心の底から嫌ってた」
「でもアリウスは連合を作る事に猛烈に反対して最終的には争いになった」
「連合になって強大な力を持つようになったトリニティはその力でアリウスを徹底的に弾圧し始めた」
「あまりに強い力を持つとその力を確認したがるってのはよくある話」
「そうしてアリウスは潰された」
「トリニティの自治区から追放されて今は……詳しい事は分からないけどキヴォトスの何処かに隠れてるみたい」
「多分連邦生徒会ですら未だにその自治区がどこにあるのか分からない」
「大半の生徒達がアリウスの事を知らないし、多分争いのことも知らない」
「そうして今となってはその影すら薄くなったのがアリウス分校だよ」
「アズサが、そのアリウス分校出身……」
「うん」
「それでナギちゃんが推進してるエデン条約、あれはさっき話してた第一回公会議の再現なの」
「エデン条約、大きな二つの学園がこれからは仲良くしようねって条約」
「でも本当の所はどうだろ?だってその核心はゲヘナとトリニティの武力を合わせた組織、エデン条約機構という新しい武力組織を作る事が目的」
「つまりゲヘナとトリニティの武力同盟」
「そんな圧倒的武力を用いて、ナギちゃんは果たして何をしようとするんだろうね?」
「会長不在の連邦生徒会を襲撃して自分が連邦生徒会長になるとか?」
「それともミレニアムっていう新しい芽を潰すとか?」
「昔トリニティがアリウスにした事みたいにね」
「あるいは、セイアちゃんみたいに……」
「……っ」
そう言うとミカは少し体を震わせ、冷や汗を垂らした。
「う、ううん、今のは失言だったかな」
「セイアに何があったの?」
「……セイアちゃんは今入院中なの」
「今、何処にいるか聞いてもいい?」
「うーん……」
「本当に知りたい?」
「この話をしたら私はもう戻れない」
「この先の事実を知った先生……ううん、先生達が私の事を裏切ったら私はきっと終わり」
「それでも、知りたい?」
「……私はミカの味方だよ」
「そっか、それじゃあ大丈夫だね」
「もしこれで裏切られても……うん、それはそれで良いかも、えへへ」
「セイアちゃんは入院中なんかじゃない」
「セイアちゃんはヘイローを破壊されたの」
「っ!?」
「……去年、セイアちゃんは何者かの手によって襲撃された」
「表向きには入院中ってなってるけど、本当はヘイローを破壊されているのが真実」
「私達ティーパーティーを除けば、この事はまだトリニティの誰も知らない」
「シスターフッドには知られてるかも、あそこの情報網は半端じゃないからね」
「とにかく、それくらい秘匿情報なの」
「……犯人は、まだ?」
「うん、分かってない、捜査中っていうか何も分かってないっていうか……」
「……まぁ、そういう事なんだ」
「目星はついてない訳じゃないけど推測段階の事を口に出すのもね……」
「それで、話は戻るんだけど白洲アズサをこの学校に転校させたのは私なの」
「ミカが?」
「うん、ナギちゃんには内緒でね」
「生徒名簿とか色々捏造して入学させた」
「どうして?って思うよね」
「……アリウスはまだ私達の事を憎んでる」
「私達は豊かな環境を謳歌してるのにアリウスの子達は劣悪な環境のまま学ぶ事を知らないでいる」
「私達から差し伸べた手も、連邦生徒会からの助けも拒絶し続けてるの、過去の憎しみのせいで」
「私はアリウスと和解したかった、でもその憎しみはあまりにも大きくて……」
「ナギちゃんとセイアちゃんも私の意見には反対だった、政治的理由でね、でもそれも分からない訳じゃないらしい、ティーパーティーだから」
「私は不器用だから政治とかそういうのは得意じゃないんだけど……でも今からでも仲良くするなんて難しいかな?」
「お茶会でもしながらお互いの誤解を解くのなんて難しいかな?」
「……私は白洲アズサという存在に和解の象徴になって欲しかった」
「アリウスでもかなり優秀な子だったしその可能性に賭けたかった」
「……あー、ここから先は……」
「……うーーん、あえて受け入れるって言ったけど……ここから先はダメかな」
そうミカは言うと、私の胸ポケットに手を突っ込み、豆のような何かを取り出した。
「これは……」
「盗聴器、それもめちゃくちゃ高性能なやつ」
「ユウキくんはこれを先生に取り付けて今までの会話を聞いてたの、すっかり忘れてた」
「……ユウキくん、あんまりプライバシーを侵害するような事しちゃダメだよ?」
ブチッ
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