「……それでうっかり私の愛銃をヴァルキューレに忘れてきちゃって、今ある銃はただの拳銃なんですよね」
「その銃って一体どんな性能をしてるんですか?」
「とにかく威力が半端じゃありません、そこら辺の不良生徒なら一発で気絶します」
「そ、そんなに強いんですか……?」
「はい、そのせいで取り回しなどに癖があって普段使いはしてないんですよね」
「確かに戦場では威力や火力より癖が無くて使いやすい方を使うのが普通だからな、納得だ」
「ですが気に入ってはいるんですよ?見た目もシンプルですしロマンもありますし」
━━
「それで、とっくに潰れたアミューズメントパークにも関わらず夜になると何やら騒がしい声が聞こえてきて……」
「そ、そんなわけないじゃん!聞き間違えよ!」
「まぁ私も噂として聞いただけですが……」
「いやっ!絶対ウソ!絶対誰かの悪ふざけ!」
「あ、あはは……」
━━
「水着で街や学園の中を歩くのは別にそこまで変な事じゃないですよ?」
「変です、断言します」
きっぱり断言する。
「そんなわけないでしょ!勝手に常識改変しないで!」
「ですがこれは私がシスターから聞いた話ですがどうやらキヴォトスのある無法地帯では水着姿で覆面を被っている犯罪集団がいるそうですよ?」
「み、水着に覆面!?ド変態じゃん!何それ!?」
「ド級の変態……ド変態……」
「ユウキさんはどこに引っかかってるんですか……」
「心が強ぇ変態なのか……?」
「ユウキさん?」
「っていうか犯罪集団なんじゃん!そんなの何もしてなくっても見た目からして犯罪よ!」
「そういう集団があるくらい他の地域では普通なんですよ?ですからコハルちゃんもご一緒に……」
「いやっ!何言い出すか分かんないけどいやっ!」
「ただの変態じゃねぇぞ、ド級の変態、ド変態だ」
「……」
━━
「アズサちゃんはもっと寝た方が良いと思いますよ?」
「うん、今朝は寝坊してすまなかった」
「慣れない場所で寝坊なんてこれまでほとんど無かったのに……」
「ここはもう慣れない場所じゃないのかもしれないな……」
「とにかく、もっとしっかり寝た方が良いです、深夜の見張りは減らして頂いて」
深夜の見張り?
「見張り……?何それ?」
「ああ、毎晩夜中にちょっと見張りを……」
深夜に見張り……何かがあるかもしれない。
「ハナコがアズサの事すごく心配してたよ」
「そうなのか……?」
「……ごめん」
「実は、見張りは言い訳でブービートラップとかを設置していたんだ」
「ブービートラップ?」
ブービートラップ。
油断した兵士を狩る為の罠……ゲリラ戦が得意なアズサさんにはもってこいの戦術だ。
「どうしてそんな事を?」
「心配しないで、ここに悪意を持って侵入するルートにだけ設置してるから、普通に生活する上では問題ない」
「ですがそれならそれで教えてくれると嬉しいです、心配しちゃいますから」
「……そうか、うん、これからはそうする」
「私のせいで皆が被害を受けるのは望むのところじゃないから」
「アズサは優しいね」
「なっ……!子供扱いしないで!先生!」
「私は別に、そんなのじゃない」
「だってこの世界は虚しい物だから、全て無意味で虚しい物だから……だからもしかしたら……」
「私はいつか裏切ってしまうかもしれない、皆の事を、その信頼を、心を」
「アズサちゃん……」
バチン
また炸裂音が鳴ると電気が元に戻る。
「直ったようですね」
「雨もいつの間にか……!」
「そうですね、ではもう一度洗濯いたしましょうか」
「うん、じゃあ第一回水着パーティーはここでおしまい、二回目も楽しみにしてる」
「二回目とかないから!最初で最後だから!」
「……今の時刻は……午後三時」
お昼時だ、外も晴れているし古書館には行けるだろう。
「それでは私は少し古書館に行きますね、夜までには戻ってきます」
「行ってらっしゃい」
ドアを開け、古書館に行こうとしたその時。
「……あの、ユウキさん」
「はい、どうかしましたか?」
「水着のままで行くのはどうかと……」
━━
「ふぅ、着きましたね」
少し遠かったがなんとか辿り着いた。
トリニティの古書館……ここにはある噂があるしい。
「古書館の魔術師だなんて、いる訳がないですよね」
それは古書館に潜む魔術師。
古書館には本を粗末に扱うと魔術師が現れるという噂がある。
肝心な魔術師が現れるとどうなるか……それは様々な噂がある。
本の中に閉じ込められるとか、食べられるとか、燃やされるとか……
だがたかが噂だ、そんなのいないに決まっている
「……お邪魔します」
ドアをひっそりと開ける、暗い。
大量の本棚と本、そして果てしない暗闇。
「誰もいなさそうですね、さて……」
アリウスに関する本とトリニティの歴史に関する本を探そう。
「これは……違いますね」
違う、これも違う……なんでカーマスートラが料理本のジャンルの本棚に?
「あっ」
本を戻そうとして誤って落としてしまう。
どすん、という音が古書館中に響き渡る。
「あの……」
女の声。
私の、後ろに、何かがいる?
どっと冷や汗が溢れる、魔術師の事を思い出し脳の中がパニックになる。
「ほわああああああああああああああああ!!!?」
「ひぇぁっ!!!!」
━━
「大変失礼いたしました……その、古書館には魔術師が住んでいてという噂を聞いて……」
本を抱えたその人に深く謝罪をする。
「いえ、大丈夫です……この子もそこまで傷ついてないし……」
「この子、というと?」
「この本の事です」
机の上に出された本を指を指す。
「ああ、なるほど」
どうやら本を溺愛している方のようだ、大切そうにもう一つの本を抱えている。
「失礼ですが、お名前を聞いてもよろしいですか?」
「小関ウイです……」
「ウイさんですね、私はシラトリ区で探偵を営んでいます、相澤ユウキと申します」
「ゆ、ユウキさんはなんでここに来たんですか……?」
「昔トリニティに存在していた分派、アリウスに関する本とトリニティの歴史に関する本を探していまして、ありますか?」
「は、はい……多分この辺に……」
ウイさんが静かに椅子から立ち上がり、本棚を漁る。
「この子がおすすめです」
アリウス歴史書と書かれた古びた本を出される、これが良い。
「ええ、これでお願いします」
「あと、この子……」
次に出されたのはトリニティ歴史年表。
「ありがとうございます、この二つの本を借りたいのですが宜しいですか?」
「えっ」
「え?」
素っ頓狂な声を出すウイさん、どうかしたのだろうか。
「あの……絶対に傷つけたり汚さないって誓いますか?」
あぁ、そういう……
「……はい、誓います、泥の一つも付けないと誓います」
「わ、分かりました、そこまで言うなら……」
━━
「ふぅ、今日はこれを読み漁りましょう」
別館に戻り、二つの本を机の上に置く。
「今日は楽しかったですね、またあの古書館に行きたいものです」
水着パーティーも楽しかったし古書館も特徴的だった。
「ユウキさん!ご飯の時間ですよ」
「はい、今行きます」
短いです、ごめんね