シラトリ区の探偵   作:ガガミラノ

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ボチボチ投稿ペース上げますわよ


炸裂音と共に

「さて、ついに明日が第二次学力試験ですか」

 

ヒフミさんと他愛もない会話をしながら教室に向かい歩く。

 

「そうですね、思えばこの一週間色々ありましたね」

 

本当に色々あったが楽しかった、恐らく私はこの一週間の事を忘れる事は無いだろう。

プール掃除に水着パーティー……とても楽しかった、友達と遊ぶというのはここまで楽しい事だったのか。

 

「ええ、私は友人があまり多い方では無いので少し……いえ、かなり新鮮な体験でしたね」

 

「ユウキさんってお友達少ないんですか?」

 

「はい、まずヴァルキューレにいる後輩が二人、あとカンナ局長とアビドスの方々くらいですね」

 

カンナ局長とは今では疎遠になりつつあるが……いつかまたあの屋台で一緒におでんを食べたいと思っている。

 

「ユウキさんアビドスに行った事があるんですか?!」

 

「まぁ元々アビドスはヴァルキューレにいた頃は私の担当区域でしたので行った事は何度かありますが……」

 

「そ、そうなんですね……実は私もアビドスの人達にお世話になった事があるんです」

 

「あの方達は良い方ですよ、治安悪化の原因となる私がいたのにそれを許してくれたアビドスの方々とチャンスをくれた先生には感謝しています」

 

「……あ、そういえばそろそろ第二次特別学力試験の詳細が掲示板に貼られる頃ですね、ありましたありました」

 

少し恥ずかしい話だったので話を試験に戻す。

掲示板に貼られた試験の詳細、恐らく以前とそう変わらないだろうが……

 

「ご、合格出来ますよね、きっと」

 

「ええ、絶対に出来ますよ」

 

アズサさんもコハルさんもヒフミさんもハナコさんも皆沢山の努力を積み上げた。

そしてその努力は報われる、必ず。

 

「さて会場は……っ!?」

 

ヒフミさんが掲示板を見るやいなや顔が青くなっていく。

 

「どうかしたんですか?」

 

「嘘、ですよね?」

 

 

━━━

 

先生の部屋にて。

 

 

「先生、これを見てください」

 

ピラリと紙一枚を先生に見せる。

 

「……これは……」

 

 

補習授業部【第二次特別学力試験】に関する変更事項のお知らせ。

 

・試験範囲を既存の範囲か三倍に拡大。

・合格ラインを六十点から九十点に引き上げる。

・試験会場をゲヘナ自治区第十五エリア七十七番、廃墟の一階。

・試験開始の時刻を深夜の三時にする。

 

 

何者かによる、いや、これはティーパーティーによる陰謀で間違いないだろう。

桐藤ナギサは補習授業部の裏切り者を消そうとしている。

当然このような難題は今の補習授業部の方達には不可能だ。

 

「今事情を知っているヒフミさん達がアズサさんとコハルさんに説明をしています」

 

「今から試験会場に行きます、準備はよろしいですか?」

 

リュックに弾薬などを詰め込み、背負う。

 

「うん、分かった」

 

「先生、今回の件に関して何か知っている事はありますか?」

 

「まぁ、あるかな」

 

「教えてくれませんか?その何かを」

 

「ユウキに教える事は出来ないかな、この問題はとても複雑な問題だから」

 

「そんなに私は頼りない人間でしょうか?」

 

「私は……」

 

「ユウキは頼りない事なんて無いよ」

 

「そうだと良いのですが」

 

「それじゃ、行こうか」

 

 

 

━━━

 

トリニティを出てゲヘナのスラム街にやって来た。

勿論初めて来る場所じゃない、チンピラを追いかけて何度か来た事があるしここに不良集団のアジトがわんさかあるからそれを叩き潰す為にも来た事がある。

陰気臭いし火薬の臭いもする、あと犯罪の臭いも。

 

 

「んー?なんだか見慣れねぇ奴らだなぁ」

 

急ぎながら歩いていると不良生徒に声をかけられる。

恐らくただ喧嘩がしたいだけの不良だ。

 

「……おいっ、馬鹿……!」

 

「あ?んだよ?」

 

「アイツヴァルキューレの鬼だ、ヤバいぜ……!」

 

取り巻きの一人がそう囁くとみるみる顔が青くなる不良生徒。

 

「何か用ですか?」

 

「ひっ、すんませんでした!」

 

不良は慌てふためいた様子でとたとたと走って逃げて行く。

 

「よし、行こう」

 

「ユウキ、ありがとう」

 

先生から感謝の言葉を送られる。

 

「私は何もしていないんですけどね……」

 

 

━━━

 

「何とか内部に入れましたね」

 

「いくら夜中とはいえ人けさが無さすぎませんか?」

 

確かに少し……いや、かなりおかしい。

ゲヘナは治安が死んでいる事で有名だ、そのため昼夜問わず不良生徒がいたり不真面目な生徒が騒がしくしている。

そのゲヘナの内部に人っ子一人もいない。

何かゲヘナで異常が起きているのでは……?

 

ズドドドド、バンバンバン。

 

銃声だけが木霊する。

異様に静かな街、謎の銃声……

何かが起きているのは間違いないようだ。

 

「どこかで戦闘が起きてる」

 

「目的地に行くにはこのまま進むしかありませんね……」

 

「先を急ぎましょう」

 

しかし今は試験会場に行かなければ……

 

 

━━━

 

 

「あれ、検問?」

 

試験会場目指して歩いているとゲヘナの風紀委員の制服を着た人達が立ち塞がる。

 

「止まれ!ここから先は立ち入り禁止になっている!」

 

「そもそも今日は街全体に外出禁止令が出されているはずだ!早く戻って━━━━━」

 

「……その制服、トリニティ?」

 

「どうしてここに!ゲヘナに何をしに来た!」

 

「い、いえ、ここを通りたいだけなんです!」

 

「何も目的も無しにトリニティがゲヘナに来るわけがあるか!」

 

「……そこのお前、正義実現委員会じゃないか?」

 

「な、ほ、本当だ!正義実現委員会が襲撃に来たぞ!」

 

「ちょっと宜しいですか?」

 

「なんだ、お前は!」

 

二人の風紀委員の前に立ち━━━━━

 

ヒュー……ドカン!

 

突如爆炎と煙が辺りを舞う。

爆弾!?どこから来た!?

 

「っ!?」

 

「ぐぁっ!?」

 

「こいつら……やはり……」

 

ばたりばたりと二人の風紀委員が倒れる。

幸いこっちに影響はないが……

 

「先生、大丈夫ですか?」

 

「うん、大丈夫」

 

「アズサちゃーん!?」

 

「いや、まだ手は出してない……他の誰かだ」

 

「一体誰が……?」

 

 

キキーッとブレーキ音が鳴る……まさか?

 

「あらっ☆やっぱり先生でしたか!」

 

「大当たりでしたね、ここで何をされているのですか?先生……と、ユウキさん」

 

車から現れたのは美食研究会の黒舘ハルナと鰐淵アカリ。

つい最近捕まえたはずでは……?

 

「美食研究会の皆!」

 

「……この前捕まえたはずでは?」

 

「ふふっ、温泉開発部が市街にドカンと爆発させたとかでとにかく今めちゃくちゃなんです☆」

 

「そのせいで風紀委員も慌ただしく動いているという事で私達はこうして牢屋から抜け出したという訳ですね」

 

「なるほど、だからこの付近に外出禁止令が出されていたのですね」

 

「それで、先生達は何故ゲヘナに?」

 

「この子達の試験会場がゲヘナにあるんだけど……まぁ案の定足止めを食らっちゃって」

 

「なるほど、そういう事ですか……しかし今はタイミングが悪いですね、先程も言った通り今はゲヘナの風紀委員が慌ただしく動いているんですよね」

 

「……給食部のフウカさんがいるのは何故ですか?」

 

「偶然居合わせたので非常事態ですし部の車を快く貸してくれました☆」

 

「んんっ!?んー!んーーっ!」

 

「快く?」

 

「んんん!んーーーっ!」

 

フウカさんの悲痛な叫び声が聞こえる……。

 

「問題ありません、フウカさんはこういった事に慣れていますので」

 

「専門家と言っても過言ではありませんね☆」

 

「はぁ、もう目も当てられませんね」

 

ザザッと無線機から声がする、ジュンコさんだ。

 

「ハルナ、アカリ!今どこ?!こっちは包囲網破ったけど合流出来そう!?」

 

「ぎゃーっ!まだ風紀委員会が追いかけてる!」

 

無線機越しからジュンコさん達の悲鳴が聞こえる、恐らく風紀委員会から逃げているのだろう。

 

「ジュンコさん、脱出作戦は取り消しです」

 

「えっ!何で!?」

 

「ふふっ、あの時のお礼ということで先生とトリニティの皆さんのことは責任を持って案内しますわ」

 

「ですね☆それでは乗ってください!」

 

「ありがとう、ハルナ、アカリ」

 

「……複雑です」

 

「え、えっ?……それではよろしくお願いいたします……?」

 

「ちゃんと捕まって下さいね☆出発です!」

 

━━━

 

ドカーーン!

 

炸裂音が耳を劈き、硝煙の臭いが鼻を通り抜ける。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「な、何なんですか!?一体どうしてこんなことに!」

 

「ヒフミさん!もう少し揺れをどうにかなりませんか?!照準が合わせにくいです!」

 

「私が揺らしてるんじゃありません!地面がさっきから揺れて……!」

 

バイクが揺れては照準を予測しないと撃てない!何とかならないものか?!

 

「また来ます!」

 

ドカーーーン!

 

再び炸裂音が鳴り響く、爆発から距離が近い為少し熱い。

 

「また爆発しましたぁっ!?」

 

「トリニティのあなたバイクの運転上手だね!」

 

「良いじゃん良いじゃん!頑張れー!」

 

「既にいっぱいいっぱいなんですけどぉ!?」

 

「すいません!私運転が苦手なものでヒフミさんに頼んでしまいました!」

 

「そ、それはいいんですけど……うわぁ!」

 

「アカリさん、八秒後にまた爆撃が来ますわ」

 

「はい、問題ありません☆」

 

「ハルナぁっ!車はもういいから降ろしてっ!」

 

「フウカさんもこうして応援してくれていますしもう少し派手にやるとしますか」

 

「ショベルカーにブルドーザーまで来ました!GTAの手配度だと星三か四くらいです!」

 

「何の話ですか!?」

 

「こちらチームブラボー、チームアルファ応答せよ」

 

無線からアズサさんの声が聞こえる。

 

「アズサちゃん!?」

 

「名前を呼ばれると隠語を使った意味が無い……それはそれとしてごめん、陽動作戦は失敗した」

 

「こっちは包囲されてる」

 

「はいぃ!?」

 

「前方には火炎放射器を持った温泉開発部、後方はやたらと強いツインテールの風紀委員がいる、道は塞がれた」

 

どうやらアズサさんも一筋縄じゃいかなさそうだ。

 

「ハナコと私は何とか自力で逃げるから、後で落ち合おう、幸運を祈る」

 

「アズサちゃぁぁぁんっ!?」

 

ピッ、と無線が切られる。

 

「私たちはあくまで試験を受けに来たのに……」

 

「次の爆撃まであと二秒ですよヒフミさん!」

 

「ひえええええっ!」

 

 

ドカーーーン……

 

 

━━━

 

「はぁ……はぁ……なんとか来れましたね」

 

「し、試験会場はここ……?」

 

目の前にある廃墟、どうやら無事にたどり着いたようだ。

 

「二人とも無事で良かった」

 

「先生こそお怪我が無さそうで良かったです」

 

とりあえずコハルさんと私とヒフミさん、先生は無事なようだ。

 

「給食部の車が川にダイブした時はもう終わりかと思いましたよ……」

 

「ハルナ、親指立てながら沈んで行ったけど大丈夫かな……」

 

「あの人はいつもあんな感じなんで大丈夫ですよ……フウカさんが心配ですが」

 

なんだかんだであの人達は逃げれるだろう……多分。

 

 

「アズサとハナコは?」

 

確かにアズサさんとハナコさんがいない……もしかして風紀委員会に捕まったか!?

 

「お待たせいたしました♡」

 

「二時四十五分、何とか開始時刻前に着いたか、流石に疲れた」

 

「……杞憂でしたね」

 

「そっちは何があったんですか……?」

 

水着姿のハナコさんとガスマスクを着けたアズサさんがそこにいた。

 

「試験会場ってここ……?」

 

「ええ、間違いありません……やはり廃墟ですね」

 

「試験用紙とかどうなるんでしょうか……誰か来てるんですかね?」

 

「もしも何も用意されていなかったらそれはトリニティ側の不備ということになるはずなのであるとは思いますが……」

 

アズサさんが辺りを探すと何かを拾い上げる。

 

「……これだ」

 

「これは、不発弾ですか?」

 

「L118、率先式榴砲弾だ、スローガンとかの散布用かは知らないけど雷管と爆薬を取り除いて爆発しないようにしてる」

 

「なるほど、L118ということはティーパーティーの……つまりナギサさんからということですね」

 

「この中に何かあるはず……」

 

パカッと榴砲弾が開くと紙と通信機が入っている。

 

「通信機……」

 

「ティーパーティーの砲弾の中にある通信機……という事は」

 

通信機から桐藤ナギサの姿が現れる。

 

「これを見ているということは無事に到着されたという事ですね」

 

「な、ナギサ様!?」

 

「桐藤ナギサ……!」

 

「え、じゃあこの人がティーパーティーの……?」

 

「ふふっ、恨みの声が聞こえてきますね、まあこれは録画映像なのでリアルタイムには聞こえないのですが……ですので今の私に話しかけても無意味ですよ」

 

「それでは、約束の時間までに戻ってきてくださいね」

 

「一応モニタリングは引き続きさせて頂いてますのでその事をお忘れなく……それでは幸運を祈りますね、補習授業部の皆さん」

 

()()()()()()()()()

 

「……なんだか最後、含みのある言い方でしたね?」

 

「とにかく時間が無い、早く始めよう」

 

「は、はい!皆さん入りましょう!いよいよ第二次特別学力試験です!」

 

「う、うん!」

 

「よし、頑張ろう!」

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ハナコさんは着替えてくださいね」

 

「あら♡」

 

「あらじゃなくて」

 

━━━

 

「……先生」

 

「どうしたの?」

 

皆が試験を受けている最中……外で待っている私は先生に声をかけた。

 

「北北東の方向から何者かが来ています、人数は……多い方ですね、二十人います」

 

「二十人……?」

 

車で何者かが近づいているのが音で分かる、数にして凡そ二十人程度か?

 

「恐らく試験を邪魔しようとする者でしょう」

 

「……あの姿は、温泉開発部?」

 

温泉マークをつけた車数台がこちらに近づいてくる。

 

「桐藤ナギサの刺客ですね」

 

「なんでそう思ったの?」

 

「あそこの部長は誰かに唆されないとこんな廃墟に穴なんて空けませんからね」

 

「なるほど」

 

桐藤ナギサ……最後の言葉の意味はこういう事か。

 

「恐らくトリニティ内で温泉開発をしてもいいとかそういう協定でも結んだのでしょう」

 

「桐藤ナギサは確かに腕のある人間のようです、が」

 

「桐藤ナギサには誤算が一つあった」

 

「それはヴァルキューレの鬼と呼ばれた私の真の恐ろしさを理解していなかった事です」

 

「私も指揮するね」

 

先生が懐からパッドを取り出す。

 

「先生は皆を見てあげてください……仮にも試験中ですしね」

 

「ユウキ一人で大丈夫?」

 

「三十人までなら」

 

「無理しないでね」

 

「大丈夫ですよ」

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