シラトリ区の探偵   作:ガガミラノ

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失敗したアクセサリー 前編

ドガーン

バコーン、ズドドドドドド……

 

「……あぁっ!眠れない!」

 

やかましい!うるさくて眠れやしない!

 

現在の時刻は午前四時、良い子はすやすやと眠っている時間。

尚シラトリ区に良い子は少ない為眠っている子は少ない模様。

 

普通キヴォトスの物件では防音製だがこのビルは古いし安い物件の為防音ではないようだ。

 

「私は眠りを妨げられるのが何よりも嫌いなんだ!うああああああああああああ!!!!」

 

窓を開け持っている拳銃を銃声を鳴らすならず者達に乱射する。

 

「いたっ!ああ!待って!」

 

「とっとと逃げるぞ!」

 

銃声は止み、静かな時が戻る。

 

「はぁ、はぁ、昨日は走り回って疲れてるのにろくに休めやしない!」

 

「おまけに家賃は月に一万五千円!昨日貰ったお金がパァ!」

 

「私の未来は……はぁ」

 

「……寝ましょう……」

 

ありったけの感情を出した為、疲れが出て眠くなる。

 

「神よ、快眠を下さい」

 

そう言い私は寮から持ってきたふかふかのベッドに眠る。

 

 

 

……

 

午前八時。

 

 

「はぁ、授業がないというのはかなり暇ですね」

 

トーストを頬張りながら適当にテレビを見る。

 

「とはいえ学力も低下してはいけないのでキチンと勉強しないといけませんね、探偵は勤勉で頭脳も明晰でないといけませんから」

 

牛乳が切れたからコーヒーは飲めない、しょうがないのでお茶を飲む。

 

「今日のトピックは〜!トリニティとゲヘナの平和条約、エデン条約について!」

 

「エデン条約……」

 

エデン条約、ゲヘナとトリニティの平和条約。

お互いの軋轢を無くして仲良くしよう、と言った条約。

ゲヘナとトリニティ間での紛争を調停する組織であるエデン条約機構を設立するなど、かなりの本気度が伺える。

 

「まぁヴァルキューレを退学した私には関係ないですね」

 

だが治安が良くなるのは良い事だ、夜の深くて心地いい快眠に繋がる。

 

シャーレにエデン条約……キヴォトスは歴史的な境目に突入しつつあるのかもしれない。

 

と、くだらない事を考えているとスマホから着信音が鳴る。

 

スマホを手に取り、耳を傾ける。

 

「はい、こちら相澤探偵事務所です」

 

「ユウキ先輩ですか?」

 

「あぁ、その声はキリノさん」

 

聞き覚えのある声がする、私の数少ない友人でもあり後輩であるキリノさんだ。

 

「どうかしましたか?今日は学校休んでませんよね?」

 

「今日はちゃんと行ってます!それよりお願いしたい事があるんですよ」

 

「はぁ、どうしましたか?」

 

「というのも今朝の深夜四時、ユウキ先輩がいたシラトリ区で大規模な強盗事件が発生したらしくて結構な問題となっているらしいんですよ」

 

「連邦生徒会長が失踪した事による治安悪化のせいですね、ん?」

 

深夜四時。

大規模な強盗事件。

 

「……あっ」

 

 

 

 

『私は眠りを妨げられるのが何よりも嫌いなんだ!うあああああああああああああ!!!!』

 

 

『おまけに家賃は月に一万五千円!昨日貰ったお金がパァ!』

 

 

 

 

「あー、なるほど、だから……」

 

今朝の四時の出来事を思い出す。

あの騒動は強盗事件だったのか。

 

「それで私の友人がその騒動に巻き込まれて大切なアクセサリーを盗られてしまったようで、それを取り返して欲しいらしいのですが……」

 

「えぇ、構いませんよ」

 

酷い事をする奴らがいたものだ、許せない。

 

「依頼料金っていくらかかるのでしょうか?十万という大金となると流石に……」

 

「あぁ、依頼料金は人探しや物探しで一万円七千、尾行や調査などは二、三万ってところですかね」

 

「結構安いんですね、意外です」

 

「それでは探偵事務所で待っていますのでいつでも……キリノさん学校を休んでいないのなら来れないのでは?」

 

「はい、なので私は来れないので依頼者のみ来る事になりますが……大丈夫ですかね?」

 

「大丈夫です、実を言うともう依頼を一度受けまして……まぁこの話は後で良いですね、それではいつでもお待ちしておりますので」

 

「はい!ありがとうございます!ユウキ先輩!」

 

「キリノさんも頑張って下さいね」

 

つー、つー。

 

電話が切れ、客をもてなす為の準備をする。

 

「にしても連邦生徒会長はいつ戻ってくるのでしょうかね、混乱が続いているというのに……」

 

いない人の事を考えても仕方ない、コーヒーを淹れようと思い、カップを用意する……が。

 

「牛乳、買わないといけませんね」

 

私は牛乳が無いとコーヒーが飲めない事を思い出し、カップを戸棚にしまい、椅子に座る。

 

……

 

 

午後十二時、お昼時。

春の暖かさが……これは前に言ったっけ。

 

ピンポーンとチャイムが鳴る。

恐らく依頼人だろう。

 

ドアを開けると、そこには一年生位の身長の少女がいた。

制服からして恐らくアニマトロニー連合学園の子だろう。

 

「こんにちは、キリノさんが言っていた依頼人ですね?」

 

「はい、依頼をしたいのですが……」

 

「とりあえず上がって下さい、紅茶を用意しますので」

 

 

━━

 

「今朝の強盗事件でアクセサリーが奪われたらしいですね、お悔やみ申し上げます」

 

紅茶を出し、椅子に座る。

 

「はい、夜中少し喉が渇いてコンビニに行こうと思い外に出たら不良達に襲われて……」

 

なんという事だ、親父狩りならぬ乙女狩り、許せない。

 

「辛かったでしょう……アクセサリーの特徴などは?」

 

そしてここからは質問の時間だ、メモとペンを取り出す。

 

「金色の鎖と緑の宝石がついたブローチがあります、多分見たら一瞬で分かります」

 

「襲った人の特徴は?」

 

「ヘルメットを被ってて黒い服を着た人達でした、人数は数人です」

 

ヘルメット……恐らく最近頭角を現してきたヘルメット団だ、ゲヘナ、トリニティ、ミレニアム、百鬼夜行など色々な所で現れ始めている集団。

だが組織自体は統一されている訳ではなく様々な派閥があるようだ。

メケメケ、ペロペロ、トロトロ、ネコネコ。

大小様々な派閥があり、派閥同士の争いもしばしばある。

それによって起こる被害も多く、社会問題となりつつある。

ヴァルキューレも対処はしているが如何せん数が多く根本的な解決に至ってはいない。

 

「それに、実を言うと不良達以外の人にも襲われたんです」

 

「はぁ、酷い事をする奴がいたものですね、特徴などは分かりますか?」

 

不良に加担するなど言語道断だ!ありえない!

 

「暗くて分かりませんでした……ですが窓から急に現れたと思ったら奇声を発しながら銃を乱射していました」

 

「奇声を発しながら……窓に……」

 

スラスラとメモにペンを走らせる。

 

「はい、しかも盗まれたのはこの辺りで……」

 

盗まれたのはこの付近だそうだ、確かに今朝の銃声は酷かった。

 

「盗まれたのは……この辺り……」

 

ん?

 

ふと脳裏に今朝の出来事を思い出す。

 

 

『私は眠りを妨げられるのが何よりも嫌いなんだ!うあああああああああああああ!!!!』

 

 

まさか……

 

 

「……どうしたんですか?探偵さん、顔が真っ青ですけど……」

 

「い、いやぁ!ちょっと腹痛が!少々トイレに行かせてもらいますね!」

 

「は、はぁ……」

 

 

━━

 

「やらかしたやらかしたやらかしたやらかした……」

 

トイレで私は項垂れていた。

 

「言語道断とか思ってた私を殴りたい……」

 

何はともあれ、今朝の強盗事件に私が加担している以上、お金は貰えない。

 

 

━━

 

ガチャ。

 

腹を抱えながらトイレのドアを開け、椅子に座る。

 

「大丈夫ですか?」

 

「はは、今朝食べた卵が腐っていたようで……」

 

別の意味で胃が痛くなってくる。

 

「そうですか……こちら、お金です」

 

彼女の懐から封筒が出される。

 

「その事なんですが……えっと、その」

 

「も、もしかしてこの事件は解決出来ない……」

 

「い、いえ!ただちょっと今開業記念キャンペーンで無料でやらせて頂いておりまして!」

 

「そうなんですか!ありがとうございます!」

 

「はは!それでは早速現場に向かいましょうか!」

 

お金が貯まったらこのビルに防音処置を施そう、そうしよう。

 

……

 

 

現場に到着すると、辺りは少し荒れていた。

建物が少し崩れていたり瓦礫が多い。

躓いたりすると怪我に繋がる、気をつけなければ。

 

「少し荒れていますね、瓦礫に注意してください」

 

「はい」

 

辺りは火薬と硝煙の臭いが漂っている。

そして聞こえるパトカーの音。

 

「おや」

 

少し進むとパトカーが立ち並んでいる、ヴァルキューレだろうか。

関係者以外禁止のテープが貼られており、立ち入りが出来ない。

 

「おいお前ら!この先は……はっ、ユウキ刑事!」

 

ヴァルキューレ公安局の制服を着た子が前に立ち塞がる、ちゃんと業務をこなしているようだ。

 

「私はもう退学した身です、それより現場の状況は?」

 

「えっ、えっと……いくらユウキ元刑事と言えど情報までは……」

 

「はい、いくら元刑事と言えど機密情報を漏らしてはいけません、よく出来ました」

 

「はぁ……」

 

少し困惑している、ダル絡みだっただろうか。

 

「依頼人さん、別の道から行きましょうか」

 

「はい、分かりました」

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