「やはり貴女以外にも強盗の被害に遭った人は多いようですね」
現場に行く為に他の道を探していた時。
いつもこの道は辺りは騒がしいが騒動のせいだろうか、今はしんと静かになっている。
そしてヴァルキューレに事情聴取を受けている様々な生徒、包帯を巻いている者や怪我をしている者もいる。
「かなり大規模な強盗事件だったようです……ん?」
路地裏で誰かの姿が少しだけ見える、カタカタと何かの物音もする。
「あの……」
「しっ」
人差し指を口に立て、静かにする事を促す。
「おい、ヴァルキューレの奴らが集まってきたぞ」
「くそっ、早くアジトに隠れるぞ」
「おい押すな!バレるだろ!」
「大声を出すな!早く行け!」
……小声のようだが私は耳が良いので声がよく聞こえる。
「依頼人さん、どうやらこの事件、危険な事になりそうです、貴女は一度帰宅して下さい」
私も強盗に加担した以上、この事件を解決する責任がある。
奴らを仕留め、アクセサリーを返さなければ。
不安そうな顔で依頼人はこちらを見る。
「必ずアクセサリーは私が取り戻します、私の威信に賭けて」
「……分かりました、お願いします」
……
「はぁ、奴らがいない所まで逃げたぞ」
「早くアジトに行くぞ、奴らがここまで来ない内に」
「……」
ヘルメットを被った集団を追いかけていると奴らが止まったと思ったら、ビルの中に入っていった。
「あそこがアジトですか、不良にしては大層なアジトですね」
四階建てのビル、鉄筋のようだ。
━━
かつ、かつ。
不良達が歩く音が廊下に響き渡る。
「おい、シャーレの先生の話聞いたか?」
「あぁ、どうやらすげーお人好しらしいな」
「何かに利用したいな、もしかしたらアタシ達がヘルメット団の天下を取るのも……いや、キヴォトスの天下を取るのも夢じゃないぜ」
「はは!そうなったらアタシ達は大金持ちだな!」
「……くだらない事を……」
シャーレの先生、私のヴァルキューレ退学を一足担いでいる人物。
まだ会った事は無いしテレビでも見ないけど……どうやらアビドスの誘拐事件を解決したのも先生らしい。
「……なんか視線感じねぇか?」
「はっ!まさか、ヴァルキューレの奴らに追われる訳がねぇ!アイツらは最悪金さえ渡しゃ何も見なかった事にする奴らだぜ?」
「そうだよな……」
危ない、不良達の慢心とヴァルキューレの汚職が無かったらバレていたかもしれない。
「おい、鍵をくれ」
「ほらよ」
どうやら部屋に着いたようだ、ガチャリとドアを開け不良達は入っていく。
「……ここは一階ですし二階からあの部屋を覗いてみましょう」
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階段を登り二階に辿り着く。
「どうやら全て空き部屋のようですね」
二階の部屋は全て空き部屋のようでドアを開けられる。
「あの部屋は……あの辺かな」
不良達がいる部屋の真上の部屋に入り、床に耳を当てる。
「……がお前……」
「いや……それ……おお……」
「うーん、あまり聞こえませんね、防音処置バッチリです」
私のビルとの処置の差に嫉妬しつつ、ベランダに行ってみる。
「下の部屋にもベランダがありますね」
物干し竿が一階と二階にもある、恐らく洗濯物を干す為のベランダだ。
私のビルにこういうのはない、だから風呂場で干している。
さらに嫉妬する。
「私はあまりこういうのは好みませんが……強行手段で参りましょうか」
街で出会ったヴァルキューレ生徒から
「あ、その前に……」
電話を取り出す。
━━
「よし、これをブラックマーケットで売り捌いて大金を……」
こつん。
上から部屋の中にグレネードを投げ、部屋の中に入る。
「あ?何の━━━━」
パァァァンッ!!!!
閃光と破裂音が部屋中に木霊する!
そして窓から飛び降り一階のベランダに降りる!
「ぐぁっ!目が!目があぁぁぁぁあっ!」
「くそっ!撃て!撃て!」
バンバンバンバン!
視力を一時的に失った不良達が銃を乱射するが、勿論当たらない。
「そのアクセサリーは返して貰いますよっ!」
拳銃を不良達の脳天目掛け撃つ。
バキュン、バキュン、バキュン、バキュン!
「ぐあっ!」
「ぐえっ!」
「うわぁ!」
「うげぇ!」
うーーん、豊かな断末魔。
不良達に手錠をかけて机に座る。
我ながら惚れ惚れする制圧スピード、ヴァルキューレでも評判だったのだ。
「くそっ……お前は……」
不良達は這いつくばってこちらを睨む。
が、睨まれてるのは慣れてるので効かない。
「こんにちは、いくつか聞きたい事があるのですが宜しいですね?」
メモとペンを取り出す。
質問の時間だ。
「まずこのアクセサリーは今朝起きた強盗事件の物で間違いありませんね?」
机の上に置かれた数多のアクセサリー。
その中には依頼者の物らしいアクセサリーもあった。
腕輪、腕時計、ネックレス。
どれも高級で高そうな物だ。
「ああ!人も少ねぇから襲って金品奪ってやった!」
「そうですか、では次の質問です」
「貴方達の資金源は何ですか?」
「……金品奪って売った金だよ」
嘘だ。
少し躊躇いがある、これは嘘をつく時のよくある動作。
「そんな端金でよくこんな防音処置付きでベランダがあるビルを借りれましたね」
「悪いかよ!」
「いやー、そうですよね、違いますよね」
「どうやら最近貴方達ヘルメット団を
「っ!」
分かりやすい動作、所詮チンピラか。
「質問は以上です、あぁそれと……」
ピーポーピーポー、ウ〜……
パトカーの音が外から聞こえる。
「勿論ヴァルキューレの方にも連絡させて頂いております、ええ、先程言ったことが真実かどうかも確かめさせて頂きます」
「お前は一体何モンなんだよ!」
「そうだ!いきなり現れやがって!」
「……相澤ユウキ」
「元刑事、今は探偵をやっています」
……
ドアを開け、外に出ると最初に出会ったヴァルキューレの子と出会う。
「ゆ、ユウキ刑事殿!」
「だから今は探偵です、それよりアクセサリーに関する事なのですが……」
「……なるほど、依頼者さんの物だと確定したらお返しします、その方をここに呼べますか?」
「えぇ、分かりました、それと……」
右手からひょいとグレネードを見せる。
「いくら元上司とはいえ油断してはいけませんよ」
「そ、それは私の……!」
「警察官がスられた……なんて、ヴァルキューレの威信に損害が出る話ですのでね、では私は依頼者を呼びます」
……
「……探偵さん!」
「どうも、アクセサリーはあっちの方にあります」
「ありがとうございます!あのアクセサリーは私の友達からもらった大切なアクセサリーで奪われた時はもう大声で泣いちゃって」
「ははは……それは良かったですね……」
苦笑いをする、相手が私ならバレてるだろうな。
「……やっぱり、お金渡してもいいですか?」
「えっ、そ、それは……」
「なんというか、こういうのを無料でやって貰うのってちょっと……」
……どうやら真実を言うしかないようだ。
「……実はあの窓から奇声を発していた人間は私なんです」
「えっ」
「眠りを妨げられるのがどうしても苦手で、それでヤケになりながらうるさかった奴らに乱射してたんですよ、それが貴女に命中して……」
「そうなんですね……でも」
「探偵さんはその事を言ってくれたし、ちゃんとアクセサリーを奪還してくれたので私は別に怒りません」
「なので、どうぞ」
封筒を渡される、もう彼女の意思は揺らがないだろう。
「……有難くいただきます、ですがこのお金は」
と、言いかけた時ヴァルキューレ生徒が車から現れる。
「ユウキ刑事殿!」
「今は探偵です、どうしました?」
「それがシャーレの先生がユウキ刑事……探偵殿を!」
「何?」
シャーレ?先生?
何故?
「ユウキ刑事……いや、探偵殿と会いたいと」
「分かりました、では依頼人さん、またのご利用お待ちしております」
「はい!」
車に乗ると発進を開始する。
運転室から缶コーヒーを手渡される。
「あ、缶コーヒーです、お好きだったでしょう?」
「私は刑事を辞めた身というのに……気が利きますね」
ぷしっ。
……
午後三時、おやつが食べたくなる時間。
私は車に乗り、渡された缶コーヒーを飲んでいた。
「ユウキ殿単独で事件を解決させたのですか?」
「はい、たまたま不良を見つけたので尾行し、アジトを発見して制圧しました、楽な仕事でしたよ」
「流石の仕事っぷりです、ヴァルキューレを退学したのが悔やまれますな」
「はは、おっと」
車がブレーキする、到着だ。
「こちらがシャーレになります」
「なるほど、ここがシャーレですか」
そびえ立つ高いビルは圧巻だった。
シャーレの先生との初の会合、果たしてどのような人物なのか。
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