シラトリ区の探偵   作:ガガミラノ

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夕陽とラーメンは至福の刺激

「君はなんで私の事知ってるの?」

 

アビドスに向かうタクシーの中、私は小鳥遊ホシノから質問をされる。

 

「ヴァルキューレの要注意人物に貴女がいた、ヴァルキューレでもかなりの有名人でした」

 

「要注意人物?」

 

先生が疑問の声を漏らす。

先生は恐らく最近キヴォトスに来た人物だから小鳥遊ホシノの事は分からないのだろう。

 

「ホシノさんは二年前にふごふごっ」

 

と喋ろうとした時、小鳥遊ホシノさんから口を抑えられる。

 

「ちょっとその事は秘密にしておいてくれるかな?」

 

「えっ?」

 

「今はそういう事あんまりやってないから……ね?」

 

「は、はぁ……」

 

どうやら先生が二年前の事を知らないから秘密にしておいて欲しいらしい、乙女の恋とかそういうのだろうか?

 

「到着しました」

 

タクシーの運転手がそう言い、タクシーが止まる。

外を見るとアビドスらしさがある砂漠が広がっており、太陽がギラギラと輝いている。

 

「それじゃあ行きましょうか」

 

 

……

 

 

「いやー、暑いね〜……」

 

「流石アビドス、春の時期になると暑いですね」

 

ギラギラしている太陽は容赦なく私達を照らし、体温を上昇させる。

 

「お、学校が見えてきたね〜」

 

道路の角を曲がるとアビドス高校が見えてくる。

借金があるにしては大きな校舎だが、少し掃除が行き渡っていないように見える。

 

━━

 

「ただいまーっ」

 

小鳥遊ホシノがそう言ってドアを開けるとそこには数人の生徒らしき人達がいた。

 

「おかえり、あれ、先生もいるの?」

 

「うん、ちょっと人手が欲しいしね」

 

「……その後ろにいる人は?」

 

「えっとね……名前なんだっけ?」

 

そう言い、小鳥遊ホシノが私の名前を聞く

 

「相澤ユウキ、シラトリ区で探偵をやっています」

 

「わ〜♣探偵さんですね!初めて見ました!」

 

椅子に座っているおっとりとした雰囲気の少女がいた。

髪の毛は金髪で翠色の目をしている。

名札には十六夜ノノミと書かれている。

 

「ん、よろしく」

 

その隣に座っているのは狼の耳が生えたオッドアイの子。

寒いのだろうか、水色のマフラーをしている。

名札には砂狼シロコと書かれている。

 

「よろしくお願いします!ユウキさん!」

 

その対面に座っているのはエルフの耳をしたショートカットの少女。

目が悪いのだろう、メガネをかけている。

名札には奥空アヤネと書かれている

 

 

「ねぇ、結局今日何するの?」

 

ショートカットの子の隣に座っているのは猫耳のツインテールの子だ。

ツンデレの覇気を感じる。

名札には黒見セリカと書かれている。

 

「えっとね〜、今日は物置の掃除をしようと思って先生を呼んだんだ、あとユウキ……ちゃん?くん?」

 

「お好きな方で構いませんよ」

 

「じゃあちゃんで……ユウキちゃんも手伝ってくれるらしいしね」

 

「ですが私は力仕事はあまり得意ではありませんよ?握力は二十五ですし」

 

私の握力は二十五だ、それに腕力の方もあまり強くない。

 

「大丈夫大丈夫、そんなに重たい物は無いと思うから、量が多くて人手が欲しかったんだよね」

 

アビドスは昔、それなりに大きな学校だったそうだ。

今は見る影もないがその遺産だろうか、多くの椅子が残されているらしい。

 

「なるほど、まぁそれなら問題ありませんよ」

 

「うへ、ありがとうね、それじゃあ早速物置に行こっか」

 

━━

 

部屋にたどり着くと大量の錆びた椅子と砂埃、机があった。

椅子も机も古臭さを感じ、使おうとすれば壊れそうなくらい錆びている。

 

「結構広いですね、しかしそれと同時に埃っぽい」

 

「あんまりこの辺りは掃除が行き届いてないからね〜、それじゃあこの椅子を外に運びだそっか」

 

「セリカ、そこの窓開けて」

 

「はーい……あれ?なんか車の音が……」

 

ガララと窓をセリカさんが開けると、暖かくもあり暑い日差しが差し込む。

外を見ると戦闘車両が校庭におり、校庭の真ん中で止まった。

 

ブロロロロ……バタン。

 

戦闘車両から出てきたのは、ヘルメットを被った集団。

ヘルメット団だ、アビドスにもいるのか。

 

「あれ、ヘルメット被ってますね……」

 

「ホシノさん、アレは知人ですか?」

 

念の為にあのヘルメットの集団がアビドスの子達の知人か聞く。

 

「いーや?多分学校を襲う輩だね〜、最近は減ってきたけどまだ来るんだね〜」

 

どうやら違うようだ、となるとやる事はただ一つ。

 

「人数は十人程度ですね、私一人で十分なので皆さんは掃除の準備をしておいて下さい」

 

「あの量を一人でやるのは厳しいんじゃないですか?私達も加勢しますよ?」

 

と、提案されるが

 

「問題ありません、あの程度ならすぐにやれます」

 

「私の指揮もいらない?」

 

「えぇ、だいじょ……先生指揮するんですか?」

 

何気にとんでもない事を聞いた、先生はヘイローが無い、つまり銃弾に当たると致命傷という事だ、なのに戦闘の指揮を……?

 

「うん、指揮には自信があるかな」

 

「先生の指揮は凄いんだよー、物凄く……なんというか、やりやすいというか」

 

どうやら指揮はかなりの物らしい、にわかには信じられない。

 

「まぁ大丈夫です、あの程度のチンピラなら無傷でやれます」

 

事実私は二十人までなら単独でやれる。

あの程度の烏合の衆、五分でやれる。

 

「そうですか……気をつけて下さいね」

 

「お気遣いありがとうございます、では行ってきます」

 

そう言い、私は走ってその場を去った。

 

 

 

━━

 

 

「オラオラァ!」

 

ヘルメット団が銃を乱射している、暇なのだろうか?

 

「こんにちは、こんな真昼間から暴れていて虚しくならないんですか?」

 

「あァ!?」

 

まずは挑発、こういう輩は少し小馬鹿にするだけで調子に乗る。

 

「ぶっ殺してやる!」

 

まず一人目のチンピラが私に向かい突進してくる、マヌケだ。

 

「おい……しょっと」

 

ヴァルキューレ式合気道で突進してくるチンピラを放り投げる。

 

「ぐあっ!」

 

あと九人。

 

「くそっ!やれ!」

 

チンピラ三人が銃を連射する。

が、チンピラ如きのエイムでは私にかすり傷を与える事も出来ない。

 

バン!バン!バン!

 

的確にチンピラ三人の頭を狙い、撃つ。

簡単な仕事だ。

 

「ぐっ!」

 

三人はそのまま倒れ、気絶した。

 

「……覚えてろ!」

 

まだ六人いるのに六人は私に恐怖して倒れた輩を車に押し込んでアクセル全開で走り去った。

 

「張り合いがありませんね」

 

こうも逃げ腰だと楽しめない、それに……

 

「あら、終わっちゃった?」

 

小鳥遊ホシノがショットガンを担いで現れる。

 

「いやー凄いねー、流石だよ」

 

「……まぁ、これくらい当然です、それに私は貴女達に謝罪しないといけない事がありますので」

 

「謝罪?」

 

「はい、私はヴァルキューレにいた頃、治安維持担当地域がありました」

 

「ミレニアムのスタディーエリア、ゲヘナの中華街、そしてアビドス」

 

「自分で言うのも自惚れみたいで嫌なのですが、私は当時かなりの腕の刑事でした、それ故に多忙を極めており治安維持の活動が疎かになってしまっていた」

 

「そのせいで貴女達に迷惑をかけてしまいました、本当に申し訳ございません」

 

「……そっか」

 

小鳥遊ホシノは困惑した顔つきで返事をする。

 

「そして私は最近起こった誘拐事件の責任を取らされヴァルキューレを退学しました」

 

「えっ、退学!?その、謹慎とかじゃなくて?!」

 

「はい、私もおかしいと思い異議を唱えたのですが何せ連邦生徒会の防衛室長の決定らしく……」

 

「そうだねぇ……でもその誘拐事件って言うのは私のせいだからなぁ……」

 

 

「あっ!ホシノ先輩!ユウキさんも!」

 

セリカさんが走ってこちらにやってくる。

 

「ヘルメット団は?」

 

少し息が荒い、恐らく椅子を運んでいたのだろう。

 

「逃げました」

 

「うん、私が行く前に終わっちゃってたよ」

 

「はぁ、ありがとうユウキさん、今から椅子を外に運ぶからちょっと手伝ってくれない?」

 

「ええ、構いませんよ」

 

「ありがとう!ほら、ホシノ先輩も行くよ!」

 

「うへ〜、おじさんに力仕事は厳しいよ〜」

 

 

……

 

 

「よし、これで掃除は終わりかな」

 

全ての椅子と机を外に運び出した。

外は夕陽が輝いており、少し風が吹く。

 

「お疲れサマンサ〜」

 

小鳥遊ホシノのおじさん臭いギャグが炸裂する。

 

「……あ、ユウキ、これ」

 

先生の懐から二千円札が取り出され、渡される。

 

「……すいません、受け取れません」

 

「えっ!?どうして?」

 

先生が目を丸くして驚く。

 

「ホシノさんにも言ったのですがアビドスの治安悪化の原因は私なんです」

 

「治安維持活動を疎かにし、その結果アビドスの治安が悪化」

 

「そして私は誘拐事件の責任を取らされ退学」

 

「役割を果たせなかった私にお金を受け取る権利はありません」

 

「……ユウキさん……」

 

アヤネさんの哀れんだ声が校庭に響く。

 

「うーーん、じゃあ代わりに一緒にラーメン食べに行かない?」

 

「えっ?」

 

ラーメン?

 

「アビドスには柴関っていうとても美味しいラーメン屋があるんだ、せっかくだし一緒に行かない?」

 

「……実はお昼食べてなくて、先生が良いのであれば……」

 

今日は沢山の仕事をして疲れた、これくらいは神も許してくれるだろう。

 

「皆も行く?今日は私の奢りだよ」

 

「良いですね〜、ラーメン!」

 

「おじさんも行こうかな〜」

 

「ん、先生の隣は譲らない」

 

私達はその柴関に向かい、歩いて行った。

 

「ちょっと!……もう、行くわよ!アヤネちゃん!」

 

「あ、はい!」

 

 

……

 

 

ずるずる、とラーメンを啜る。

 

「美味しいですね、このラーメン」

 

「でしょ?」

 

「大将のラーメンは最高級だからね〜……あ、大将水切れてるよ〜」

 

 

「ユウキ、皆とラーメン食べたりするのは初めて?」

 

「はい、というのも私は仕事が忙しくて友達があまりいなくて……」

 

中務キリノ

合歓垣フブキ

……あれ、これ以上思い出せないな、もしかして私は思ったより友達がいないのでは?

 

「そっか、良かったらシャーレに遊びに来てね」

 

「はい!先生も困った事があれば私の探偵事務所に来て下さいね」

 

 

夕陽が傾き始めた空は赤く輝いている。




「あれ?そういえばユウキさんはなんで私達の名前を知ってるんですか?」

「名札からです、職業柄そういう所は細かく見てるので」

「因みに先生から出されたお茶も毒が無いか警戒してました」

「えぇ!?毒なんか入れないよ!」




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