「ふあぁ……」
午前九時、今日は少し寝坊してしまった。
「昨日は本当に色々ありましたね」
強盗事件、シャーレとの出会い、アビドスとラーメン、黒崎コユキ。
まるでシュークリームのような……あぁ、お腹が空いた。
「おや、不在通知が……」
キリノさんからだ、恐らく昨日の強盗事件の事だろう。
「もしもし?キリノさんですか?」
「ユウキ先輩!何処に行ってたんですか?」
「ちょっとシャーレの方に行っていました、アクセサリーはありましたか?」
「はい!ユウキさんのおかげです!」
「いえ、それよりどうしたのですか?」
「……恥ずかしい事なのですが……」
「……銃を無くした?」
……
「おはようございます、キリノさん」
「おはよ〜、ユウキ先輩」
「はぁ、おはようございます、ユウキ先輩……」
午後十時、今日は土曜日。
キリノさんは私服でシラトリ区の公園にやって来た。
「銃を無くしたのはこの辺りですか?」
「はい、いつの間にか落としちゃって……」
昨日、キリノさんはパトロール中に……警察官としてあるまじき行為なのだが食べ歩きをやっている時に子供達とふれあう機会があったらしくその時に銃をここで落としてしまったらしい。
「いや〜、キリノもドジだね〜」
「全く、食べ歩きをして警察官の命とも言える銃を落とすなど言語道断!それに貴女はその不器用でおっちょこちょいな所をですね……」
と、私がいつもの様に説教を始めようとしたところ
「わー!分かりましたから!」
と、キリノさんに止められてしまった。
「はいはい、ユウキ先輩もそこら辺でストップ」
フブキさんも私を止める。
「まったく……それではこれより中務キリノが紛失した銃の捜索を開始する!」
「はーい」
私の大きな声が公園中に響く。
「うぅ……公園のど真ん中で大声出さなくても……」
涙目で私に訴えかけてくるキリノさん。
申し訳無いことをしてしまぅた。
「失礼、癖で……」
━━
「そっちはあった?」
「いえ、草むらの中も探しましたがありませんでした」
草むらの中、砂場、あらゆる所を探したがどこにも無かった。
「私の銃、どこに行ったのでしょうか……」
「まぁヴァルキューレの汎用の奴だしさ、最悪また支給してくれるよ」
「うぅ……」
「……ん?」
滑り台の下に何かがある。
あれは……
━━
「いや〜、あって良かったね、キリノ」
「ありがとうございます、ユウキ先輩!」
「これからはちゃんと管理して下さいね」
滑り台の下にあったキリノさんの拳銃は砂が付いている。
「はい!……それにしてもお腹空きましたね」
ぐ〜、と鳴るお腹の音はキリノさん……ではなく。
「そうだね、ドーナツか何かを食べたい気分だよ」
私の数少ない友人でもあり後輩の一人、合歓垣フブキ。
彼女はキリノさんと比べて怠惰な人物だ。
キリノさんとは真反対の人物であるにも関わらず、フブキさんとキリノさんのコンビをよく見かける。
そしてドーナツをこよなく愛し、ドーナツに愛されている少女。
そんな彼女達と私の出会いは……おっと、私までお腹が鳴っている。
「私も今日朝ご飯は抜きでしたからね、お昼と行きましょうか」
「いいですね!」
「キリノさんに失礼な事をしてしまったので今日は私の奢りです、そうですね……」
辺りを見回し、レストランか何かが無いかを探す……
「お、あのイタリアンレストランなんか良いんじゃないの?」
フブキさんが指を指した先はビバ ピッツァという店、美味しそうなピザとトマトの香りがする。
「いいですね!」
キリノさんの目が輝いている。
「それじゃあそこにしましょうか」
かくいう私もお腹が空いている、早く行こう。
━━
「美味しいですね!このパスタ!」
「私のペペロンチーノも結構美味しいですね、なんというか食べやすいです」
「私もピザじゃなくてパスタにすれば良かったかなぁ」
キリノさんはボロネーゼを、私はペペロンチーノ、フブキさんはマルゲリータを食べている。
どれも美味しそうだ。
「いや〜、にしてもユウキ先輩公安辞めても活躍するのは流石だね」
「成り行きです」
「それでも凄いですよ!強盗事件をあっという間に解決しちゃって!しかも単独で!」
「偶然です、それにキリノさんが強盗事件の事を言ってくれなければ私は強盗事件が起こったことすら気づけなかったでしょう」
それどころか私は強盗事件に加担した野郎という事になってしまう。
本当にキリノさんには感謝しかない。
「そういえばなんでユウキ先輩はヴァルキューレ辞めちゃったの?」
「アビドスで起きた誘拐事件の責任を取らされて退学にされました、この決定は連邦生徒会の防衛室長も一枚噛んでるようです」
「へ〜、何処の馬の骨か分かんない奴が退学……か」
フブキさんの声色が変わる、少し怖い。
「ですが今の生活も充実していますよ、シャーレの先生とも出会いましたしね」
「お、ユウキ先輩シャーレの先生と会ったんだ?」
「ええ、ラーメンを奢ってくれましたよ」
どうやら私は彼がラーメンを奢ってくれたのがよっぽど気に入っているらしい。
「あの人人気だよね〜、色んな人がこぞってシャーレに行ってるらしいよ」
どうやら先生はかなりの人気者らしい、確かに人気になるのも頷ける人柄だ。
「キリノも行ってたよね、当番……だっけ?」
「はい!シャーレには当番制度があってこの前当番だったので行ってまいりました!」
シャーレに当番制度があるらしい、初耳だ、今度調べてみよう。
「そのおっちょこちょいな所と不器用な所を先生に迷惑かけないようにしてくださいね」
「も、勿論です!」
ふんすと息を鳴らすキリノさん。
……そして、火薬の香りがする。
「……待ってください、少し火薬の香りがしませんか?」
「そう?私は別に……前言撤回、臭うね」
フブキさんも察したようだ、この店に爆弾がある。
「キリノさん、周辺住民に避難勧告を、フブキさんと私で火薬……の原因は見つかりましたね」
少し奥な方を見ると、銀髪の女性が爆弾を手に持っている。
……ハルナ?
「まずい!フブキさん、キリノさん!逃げt」
ちゅどーーーーん!
灰色の粉塵が店内を舞う。
━━
「キリノさん!大丈夫ですか!?」
店は崩壊し、瓦礫に埋もれているキリノさんを引っこ抜く。
「あへあへ……いてて、あれ?ここは!?」
キリノさんの意識が戻る、良かった。
「さっきの店の跡地です、爆破されてしまいましたね」
「そんな……結構美味しかったのに……」
と、しょんぼりするキリノさん。
「それより出番ですよ、悪名高いテロリスト共がお出ましです」
「さて、そろそろ逃げますわよ」
「んーー!んーー!」
「……なんかロープでぐるぐるに巻かれてる人いませんか?」
「いますね、どうしたのでしょうか」
ロープでぐるぐる巻きにされている角の生えた子はうんざりとした顔をしている。
「あっ!車で逃げますよ!」
彼女たちは車を走らせ、この場を去った。
「追いかけましょう、恐らく次の標的もレストランでしょう」
「なんで分かるんですか?」
「彼女達が美食研究会だからです」
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