この狭い黒の地平の真ん中で   作:地雷犬

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第1話

あなたはパルミアの中に放置されているムーンゲートを手慰みに食べていた。

 

ムーンゲート自体は何度も潜った経験もあるものだ。

 

門自体がデカく腹を満たすにはいい。

悪食なあなたは街中を食い荒らす害獣と化していた。

 

散々バブルをシェルターでスウォームし続け、腹の減ったあなたはパルミアを食い尽くす勢いだ。

 

 

 

その中で間違えてムーンゲートの中に転がり落ちてしまった。

 

 

 

 

 

 

門の先は自然溢れる草原だ。

 

 

心洗われるがあなたは戻って、バブル肉を神に捧げる仕事に戻らなければ。

 

 

あなたは後ろを振り返り、門を探したが見当たらない。意図せず食べてしまったのだろうか。

 

 

 

 

帰還の魔法を詠唱した。失敗した。

「残念、それじゃ帰れないわ。」

 

願いの神の無慈悲な通告が聞こえた。

 

別の月の門を探してあなたは歩き始めた。

 

どうせそこいらに掃いて捨てるほどあるのだ。

 

 

 

近くを探索する。

 

 

 

 

すこし歩いた先、大岩の上に兜と青いマントを被った冒険者を見つけた。

 

 

ここが何処か教えてほしい。ここらでムーンゲートを見ていないだろうか。

 

 

「変わったモンスターだな。俺を恐れないのか。ムーンゲートというものを知らないがどんなものだ?」

 

 

青紫に光る別の空間に繋がる門だ。

 

 

 

「見たことがないが、群れからはぐれたのか?」

 

 

完全の野良犬の類と思われている。

 

 

これでも一端の冒険者だ。

 

 

「そうか、申し訳ないな。お前も俺に挑みに来たのか?」

 

 

全くの偶然だ。戦う意思はないが、そちらは強いのだろうか?

 

 

「この星が5つを超えた辺りからバスターに挑まれる事が増えた。お前もその仲間かと思ったが無駄に命を散らす必要もないだろう。行け。」

 

左腕についた綺麗に澄んだ宝玉を見てあなたは欲しくなった。

 

 

それを一つ譲ってくれないか。

 

 

 

 

「それは出来ない欲しければ力ずくで来い。」

 

彼は不敵に笑った。

 

 

相手の力はあなたと同程度に見える。

 

 

あなたは全ての手に持った14個の武具を構えて突撃した。

 

 

 

 

 

 

見たことの無い、飛び込んでくる奇怪なモンスターにバロンは内心喜んでいた。

 

(ヴァンデルの星をねだるモンスターなど初めて見た。それも私と同程度の強さと見た。)

 

 

「おい!ボーイこいつはやべえ!全力でいけ!」

 

 

兜の中の友人ザンガもバロンに声をかける。

 

 

「わかっているとも。」

バロンは羽を展開した。

 

 

あなたとバロンの攻防は一晩続いた。

 

 

 

 

「ラチが空かないな、そろそろ帰るといい。」

あなたを盾ごと吹き飛ばし、バロンが告げる。

 

 

あなたも満足した。

すくつを踏破して満足していた冒険者は、まだ見ぬ強さのモンスターを見つける喜びに打ち震えていた。

 

 

お互いの回復力が高すぎるせいで、決定打にならない。

 

あなたは回復魔法の発動装備で多少ズルはしている。

 

 

あなたはこの世界には君のような強い冒険者がいるのかとマントの戦士に訊ねてみた。 

 

 

 

 

「少なくとも、私と同格のものが6人ほどは居る。私達の種はヴァンデル(魔人)というのだが。君の群れでは教わらなかったのか?ヴァンデルに戦いを挑んではいけないと」

 

 

あなたは未開の文明で生まれたわけではないし、ヴァンデルというモンスターを初めて見た。

 

 

ムーンゲートを潜る幸運に感謝した。

 

 

パルミアでもカオスシェイプであるあなたを見て珍しいものを見たという顔をする者も居るが、カオスシェイプ自体がとても珍しいわけではない。

 

 

あなたのように13本、手のみが生えるものが珍しいというだけだ。

  

 

 

ならば腕の星を探して弱いヴァンデルを探すとしよう。

 

 

 

バロンと名乗ったヴァンデルは強かった。

 

「ヴァンデルを探して居るなら魔賓館に行くといい。魔人がたくさんいるとも。向うの山を超えた先、黒の地平の奥にある。」

 

 

(生き残れるかは保証しないがな。)

 

 

「おい!天空王バロン!」

声の主は五人組の冒険者のパーティーだろうか。

 

「バロンとの勝負を挑みに来た!」

そういうや否や襲い掛かってくる。

 

五人のパーティーはそれなりに熟練しているが一人の魔法使いがまだ育っていないようだ。

 

「クソ!あの配下のモンスターの攻撃もヤバいぜ!」

 

 

あなたはバロンの配下になった覚えはないが、襲い掛かってくる相手を見逃すほど優しくない。

 

 

有効打のない彼らは一旦下がり作戦を練っている。

 

かわいいものだ。

 

一番経験の無さそうな魔法使いを先陣に飛び込み、一斉攻撃といった筋書きだろうか。

 

 

黄色の髪のキッスと呼ばれた男が魔法を使った後、一斉に残りの四人組は逃げ出した。

 

これはいけない。

 

 

直後閃光が奔り、四人を貫いた。

 

 

 

戦士団の死体が転がった。

 

バロンはキッスに視線を向けた。

 

「仲間のために身をなげうった勇敢さに免じて、その命を助けよう。勇気のない愚かな戦士には死を与えよう。その拾った命でまた戦いを挑むもよし。戦いを恐れて隠れ生きるもよし。好きにしろ。」

 

 

 

そういうとバロンは風のように去って行った。

 

 

 

あなたは死体を集めキッスと呼ばれた男に話を聞いた。

 

バロンに挑むなど無茶だと。

 

 

「君は主人に似て優しいね……。生き残ってしまった……」

 

あんな仲間を見捨てる輩など放っておけばよいのだ。

 

 

「モンスターなのに話せるんだね。途轍もなく強かった。勝てっこないや。配下の君にも勝てないんだ。」

 

 

あなたは配下ではなく、たまたま居合わせただけだ。

 

 

「そうなの?なんてモンスターなのかな?」

  

 

カオスシェイプだと名乗った。これでも冒険者だ。ここらにはカオスシェイプの種族はいないのだろうか。

 

 

「聞いたこともないね。モンスターがバスターになる里もあるんだね。敵じゃないなら、近くの里まで連れて行ってくれると嬉しいな……。」

 

息も絶え絶えに負傷したキッスに向けて癒やしの手を詠唱する。

 

「水の天撃を使えるの?」

 

 

天撃ではなく魔法の一種だ。

 

「魔法?知らない技術だね……昔の技術かも」

 

 

キッスを回復させ、近くの里へ連れ立っていった。

 

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