キッスを連れて一番近くの街、デュオラへ帰還した。
街というにはこじんまりとした大きさだ。
大きな目の紋様の意匠の門は立派だ。
キッスとあなたは門に近づく。
「そのモンスターは何かね?」
驚いた。この門は生きているらしい。
あなたがじっと門を見る。
壊した方がいいだろうか。
「この人が助けてくれました。モンスターに見えますがバスターです。通してください。鑑定小屋に行かせてくれれば説明できます。」
「少し待ちなさい。衛兵が来る。」
そう言い衛兵が門から出てくる。
「本当にモンスターが……おい!他の仲間はどうした!」
「他の四人はバロンに殺されました。この人に私は助けてもらいました。言葉も通じます。ドローマンかどうか心配なら調べてください。」
衛兵が近寄りキッスを調べる。
泥の匂いも松明を近づけても怯えぬキッスとあなたを見て門に戻る。
「そうか、アーク戦士団はだめだったか……」
あなたの四次元ポケットにアーク達の死体は収納されている。
「君が何かあったら止めるんだよ。」
そういいながら門は開いた。
街中に入ると遠目に人から見られているのを感じる。
カオスシェイプは珍しいようだ。
鑑定するのに小屋までいくのかと尋ねる。
「君たちの街と少し違うのかな?鑑定小屋に行かないとレベルも上がらないし報酬も貰えないんだ。そっちは違うの?」
敵を屠れば勝手にレベルも上がる。報酬も死体を漁るのだ。
「随分荒れてるね……。」
何よりあなたはバスターという職業ではない。
鑑定小屋に付くと年配のローブを着た男が受付に居た。
「おおキッス、アークたちはやはり駄目だったか。」
「おじいさん、やはりとは……?」
「何、網膜を見ていれば人となりは分かるものよ」
逃げ癖の付いた冒険者と見抜かれていたようだ。
「そして、そちらは?」
あなたに視線を移し聞きたそうにしている。
あなたは自己紹介とムーンゲートを探している事を伝えた。
「初めて見るモンスターじゃ。話せるモンスターが居るときいたことはあったが里に来るほどの知性とはな……」
「バスター協会も把握してないモンスターですか?」
地元には山ほどカオスシェイプはいるがパルミアとは離れた場所のようだ。
「そうじゃ、知る限りこのような見た目のモンスターの情報は入っとらん。敵性でないモンスターもいるんじゃな。」
あのヴァンデルのバロンも話せば理性的だったが。
「ムーンゲートというものは見たことないのう。ヴァンデルの中には別の場所をつなぐ能力がある者も居ると聞くが定かではない。グランシスタ本国では武器やらアイテムの開発も盛んだからあるかもしれんがな」
取り敢えずバロンから貰えなかった星と呼ばれる宝玉を探したい。近くにヴァンデルは居ないだろうか。
「ヴァンデルを倒しに行くのか?ならばこちらでもバスター登録しておけ。報奨金も出るぞ。」
今はここの現地通貨の手持ちも無いから、登録しておこう。
「ならば胸に烙印(ブランディング)をするんじゃが……胸はどこだ?」
胸というか胴自体今はないのだが……
面倒なあなたは願いの魔法を詠唱した。
願いは?
「「種族変更イェルス」」
あなたはイェルスに種族を変更した。
きちんと人の姿をとったあなたに二人は口を開けて驚いていた。
「あなたはドローマスターみたいな人ですね。本当はそちらの姿なんですか?」
本当も何もいつでも種族変更は出来る。性転換も可能だ。
「そっちの方が人に怖がられる事もなかろう。烙印するからこっちに来い。痛いぞ。」
先端が菱形の鉄の棒のようなものを胸に押し付けられる。
胸を焼かれるような感覚だが、何度も焼け死んできたあなたにとっては何も言うことは無い。
「これで晴れて、ヴァンデルバスターの一員じゃ!ヴァンデルを好きなだけ倒してこい!」
その後はキッスと鑑定小屋の爺からこの世界の常識や、人とヴァンデルが争っている事を聞いた。
「そっか、バロンともたまたま一緒に居ただけなんだね。普段からそっちの格好のほうがいいと思うよ……」
キッスも目の前の異常者に疲れた。
近くの遺跡から見つかった古代技術にもなかった魔法なる技術を使う冒険者に助けられた。
バロンから聞いた魔賓館へ向かうと話しているあなたにはついていけないと内心思っている。
(ビィトは元気かなぁ)
キッスはあなたと別れ、宿に戻っていった。
「ヴァンデルの多くいる館?本当か?その情報は協会に伝えておこう。」
鑑定小屋でヴァンデルの討伐クエストを受領し門の外で野営を始めた。
魔賓館に行く為、黒の地平の事を聴くと目の色を変えて手紙を書き始めた。
帰還サービスなどは無いのか。
バスター協会総出で侵攻でもするのだろうか。中々好戦的だ。
彼らの争いはよく知らないがヴァンデルとはエレアのように日陰者なのかもしれない。
シェルターを地面に展開し、中であなたは幸せのベッドの上で眠り始めた。
ペット達も自宅の城に置いたまま来てしまったが、どうとでもなる。
願いの魔法も通用する。
帰ることは叶わない。
魔法も使えるならばいくらでもモンスター召喚の魔法で仲間を増やす事も駒召喚で嫌がらせをする事も出来る。
明日から黒の地平の中にある街、トロワナへ向けて出発する。
黒の地平とは虫たちの出した黒煙で日が差さぬ大陸の事を言うらしい。
虫を焼く為の火属性武器でも引っ張り出してみようか。
あなたは一人でも負けることはそうないだろう。
見た目こと人型だが実体は14手の生物だ。それは種族を変えても変わらない。
14刀流こそが最強であると信じている。生きた武器で強化した魔法威力で消し炭にするもよし、斬りかかるもよしだ。
朝を迎えて、昨日拾った死体を焼いてステーキにした。
旨い!これはあなたの大好きな人肉だ!
装備こそ貧弱だが体格はそれなりに良かった為、食いではある。
腹も満たしトロワナへ向かった。
あの星を加工してリングを作れば良いものが作れそうだ。
6つもあるのだから一つくらいくれても良かっただろうと不満を零しながら歩いてトロワナの森を歩く。
ろうそくのような虫や、黒煙を吐く虫。大きめのかぶとむしのようなものまで見たことのないモンスターが多く居る世界は新鮮に映った。
その全てが槍で一突きに散らせる弱いものだった。
その冒険者を目敏く監視しているヴァンデルが一人いた。