複雑初心ミミック   作:イエローケーキ兵器設計局

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xxx/12/27


こ〜ぷすこ〜ぷ

 2日後。私は死んだ。DOLLSにもなった。名実共にコープスパーティーの結成である。

「改めて着任おめでとう。この場合は……。」

「T29で良いです。」

 105mmT5E2の試射時に知ったけれど……改造先候補のT34の120mmT53には徹甲榴弾無いのね……。

「T29、よく似合ってるぞ。……立場的にはジェラルド君と呼ぶべきか?」

「ジェラルド、戦車を選んだの?」

「気がついたら重型戦車になっていた。……人間だった頃よりも身体が軽いのが腹立つなぁ。」

「あら、星屑連邦学連からお便りよ。」

「どれ……うーん。」

 要約すると私の死ぬ前の身体は他の人間よりもDOLLSに近かったらしく、意識の転写及びDOLLSへの記憶の刷り込みが容易であったという。まあ、それと、星屑連邦学連の方で訓練らしい。

 

 そもそもなぜ死んだのか。それはまあ……うん、それはそう、間抜けな死に方だった。戦火に巻き込まれた二人とは違って私は……いや、うーーん……即死だったかなぁ?(腔発事故による失血死)

 

「早速、出撃命令か。うむうむ……訓練地域なだけマシだな……行ってくる……ついてこなくていいよ?」

 明らかに二人の視線が私を見て訴えている。

「そんなに見ても連れて行かないよ?」

「ジェラルドはおっちょこちょいだし……。」

「エマが居ないと何もできないし……。」

「何も言い返せねぇ……。」

 二人の前で死んだ手前、何も言えない。

 

 なんとか二人を振り切って一人で訓練所に到着。

「ん?」

「あ。」

「お久しぶり、いや、この身体になってからは初めまして……かな?」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

「いいよいいよ。あれは残念な事故だった。」

 この娘が私の事故死の直接的な原因。ARMSに搭載されていた試験砲の腔発事故によって発生した破片が私を貫通。幸い頭部には被弾しなかったので記憶を回収できた……らしい。

「T92"HMC"……よく似合っているじゃないか。」

「いえ、そんな……似合っているなんて……死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい。」

「死ぬにはまだ早い、落ち着いてくれ。」

 落ち着くのを待って訓練区画へ。

「落ち着いたか?」

「は、はい……。ご迷惑をおかけしました……先輩。」

「構わんよ。じゃあ……行こうか、バベル。」

 彼女はバベルことシャーロット・バベル。彼女は私の数少ない後輩の一人であり、死体部隊の一員になる予定のDOLLSでもある。何があったのかは後で。

「目標、模擬"軽型遊猟種"(いわゆる石英)。個体数12。風速無し。」

「HE、装填完了。」

「駐鋤は?」

「展開済みです、先輩。」

 駐鋤(スペードとも呼ばれる反動を地面に受け流す装置)を展開せずに撃った結果、反動でバックしてきたのをよく覚えている。

「距離は?」

「およそ1000から1100と推定します。速度はおよそ10。」

「よろしい。」

 素晴らしい、大体合ってる。

「射撃許可を。」

「……目標の位置は?」

「位置……あ。補正します。」

 射撃目標との高度差の影響を考えないといけない。

「射撃を許可する。」

「了解。周囲に友軍無し、目標周辺良し。発射。」

 けたたましい爆風と共に榴弾が240mm砲から発射され、1km先の標的に着弾。8割撃破判定を叩き出した。

「お見事。」

「次弾装填。」

 自動装填装置ががちゃがちゃ動いて弾頭を入れて押し込み、薬嚢を入れてまた押し込んでいる。

 

 おや、連絡だ。うむうむ……。

「バベル、訓練中止。帰還するぞ。」

「え、あ、はい。了解です。」

 

 

 

 

「私達は第3独立自動車化狙撃大隊に組み込まれる事となった。」

「第3独立自動車化狙撃大隊…………整備会の存在しない大隊……。」

「……そうだ。そして、その指揮官が到着している。中佐、どうぞ。」

 執務室の扉がゆっくりと開けられる。

「……。」キョロキョロ

 星屑連邦学連にF4Uコルセアと呼ばれる軽戦闘機型DOLLSが居るらしいが、彼女によく似ているDOLLSが周囲を見渡している。

「……この部隊の指揮官は貴官か?」

 よく通る声。噂は本当だろう。

「はっ!ニューマコーニオシス中佐殿、お待ちしておりました!」

 返礼とその終わりを待って敬礼を解除。

「そこまで畏まらなくて良い。貴官らも元人間と聞いている。」

「中佐殿も元人間……でありますか?」

「まあ……そうなるな。ジェラルド・マーティン大尉、所属隊員の説明を。」

「はっ!」

 

「……以上となります。」

「わかった。覚えておこう。」

 整備兵一人一人にまで及ぶ大点呼だった……疲れた……。

「では、お邪魔した。また後ほど連絡しよう。」

 嵐は去った……。

「お疲れ様、ジェラルド。」

 ランカスター(……エマさん)が人目を憚ることなくソファに座らせて抱き締めてくれる。

「エマ、せめて私や他の秘書官が見てないところでやってよ。」

 その一言をきっかけに執務室に居る秘書官達が退出していく。

「あ、ごめん、姉さん。」

「終わったら呼んで、ジェラルド君。」

 

 2日前から特に進展は無し。抱き合って顔が近くなってもお互いに照れて顔を背ける始末。いつもの大胆さが影を潜めるのは見ている分には面白いけれど少しもどかしい。けれどこちらから近づくのもそれはそれで恥ずかしい。

 結果、お互いに近寄っては様子を見て膠着状態に陥っている。

「……。」

「……。」

 なぜDOLLSの胸部はしっかりと弾力とハリがあるのにフニフニなのか。

「……変態。」

 ぐえっ……苦しい……。

「彼女のおっぱいを潰して喜ぶ変態にはぎゅうぎゅうハグがお似合いよ。」

 

 何時間経っただろうか。さっきから強く、呼吸困難になりそうなくらい強く抱きしめられる以外に何も起きていない。DOLLSの体力には感謝しなくてはいけない……いや、エマの力が強いのはDOLLSだからであることを考えると感謝してはいけないのか?

「あのー……そろそろ…………寝てる。」

 エマは静かに眠る娘だったのか……知らなかった。起こさないように無線機に手をそろりと伸ば……よし、掴めた。

「秘書官室、こちらジェラルド大尉。震電を執務室に寄越してくれ。」

「秘書官室、了解。震電さんを派遣します。」

 数分後。シャーリー(……震電という名の義姉?)さんが静かにドアを開けて入ってきたものの、にこにこ顔で反対側のソファに座ったきり動かない。

「あのー……。」

 静かにと静止される。

 

 1時間経った。これは時計を見てのもの。

「ん……ん〜〜……あれ?ジェラルド……?」

「おはよう……エマ。」

「おはよう…………うん?シャーリー姉さん!?」

「私達が離席してから3時間は経っていた。ジェラルド君が困ってたぞ。」

 自分でよくそう言えますね、ほんと。逃げられない状態の、妹の恋人にキスしようとしておいて、何が恋人が困っていたぞ、ですか……左手がフリーじゃなかったら危なかった。

 

 

 さらに数時間後。屋上に居る。どこのとは言わないが。

「先輩。」

「なんだ?」

「後ろからの視線が怖いのですが……。」

「気にするな。別に、そういう関係じゃないだろう?」

 敵の偵察機にずっと監視されている、そんな冷たい視線を後ろから感じる。

「……。」

 視線が少し暖かくなった……気がする。ガンバレー!とかコノボクネンジン!なんて声まで微かに聞こえだした……どっちの味方なんだ。

「先輩……。」

「バベル、月を見てみろ。」

「ふぇ……?月……ですか?」

「そうだ。月だ、月。」

 立派な満月が黒い闇の空に浮かんでいる。

「綺麗……。」

「君はあの月を目指せ。満月ではなくても良いが……君なら立派な満月になれるだろう。」

「はい、先輩。満月になります。必ず、何があっても。先輩のために。」

 だんだんしっとりとした声音になってきたので怖くなってきた。助けてエマさん。

「バベルさん、私の彼に"お手つき"は許さないわよ?」

 ありがとうエマさん……神……。

「存じ上げています、ランカスター先輩。」

「なら、いいわ。」

 ぼそっと「ジェラルド、たまには貴方からガス抜きをしてあげてね。」と耳元で囁かれたのは幻聴だろうか……。

 




後書き
 ジェラルド・マーティン大尉の元ネタはジェラルド・ブル(カナダの弾道研究者)氏。


 T92の元ネタ:ブルーアーカイブの"伊草ハルカ"。作者のTwitter(現 X)アイコンは別作品(書き直しを検討中)に出てきたハルカなのでちょっと違うけれど多分雰囲気は似ている……かも?
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