GOD EATER2 ほのぼのアフターライフ 作:W-cat
「ふぅ、とりあえずこれで終わりね」
力尽きたヴァジュラからコアを抜き取る。夕方ということもあって、西陽が眩しくも美しい。
「エミール、帰投ポイントに向かうわよ?」
今日はエミールと共に、サテライト拠点へ接近中のヴァジュラを仕留めるという任務だった。単独でも勝てる相手ではあったが、エミールも同行したいと申し出たので二人で任務にあたった。
「今日は同行してくれてありがとう!」
「なに……例には及ばん。それより、僕は君に伝えたいことがある」
「伝えたいこと?」
エミールの眼はいつになく真剣だ。
「ああ……僕は……」
急にエミールは、赤い薔薇を携えてひざまずいた。プロポーズの王道パターンだ。
「僕は……君のことが、好きだっ‼︎」
「……えっ⁉︎」
気まずい静寂が流れる。
異性からプロポーズを受けるのは初めてだ。ハルオミのナンパとは違い、エミールは本気のように思える。
「……すぐに応えを出さなくてもいい。あくまで、僕の想いを届けたかったんだ!」
「えっと……」
「もちろん、僕が君に相応しい男だという自惚れはない。むしろ、不釣合いだと自覚している。だから僕は、いつか君に相応しい男になってみせる‼︎」
両手をおおげさに広げながらそう誓うエミール。薔薇を渡してプロポーズをしたエミールはその後何も言わなかった。
「………」
帰還用のヘリの中でも、いつも煩いエミールが黙っている。薔薇を持った紅い顔のステラを見て、ヘリのパイロットが、ずっとニヤついていた。恥ずかしいことこの上ない。静寂が続くこの時間は、いつもより長く続いた。
アナグラのエントランスは夕食時ということもあって、キグルミとヒバリしかいなかった。帰ってきて早速、ソファーに座っていたキグルミと目が合った。耳を動かしながら、薔薇を持ったステラをじーっと見ている。
これ以上注視されていては精神がもたないので、ステラは逃げるように自室に入っていった。
「はぁー……」
エミールからもらった薔薇は、捨てるにはあまりにも勿体無いので、とりあえず部屋に飾ることにした。殆どの植物がアラガミによって絶えたこのご時世において、これ程までに美しい薔薇は二度と見ることができないかもしれない。
時刻は既に19時を回っていた。とりあえず夕飯を食べることにした。
「…………………………………」
オムライスを食べながらぼんやりと窓の外を眺めていた。頭の中はエミールの告白のことでいっぱいだ。
エミールは『騎士道精神』を語るだけあって少々暑苦しい所もあり、人の話を聞かない所も多々ある。だがその心は誰よりもまっすぐで、嘘や偽りなどなく、極めて純粋である。そして何より、良くも悪くも決して逃げない。だから今回の事も…………引くつもりはないだろう。
「どうした? そんなぼーっとして……」
「あっ、ギル……」
ぼんやりしているステラに声をかけたギルバートは、何も言わず隣に座った。ブラッド隊唯一の男性でイケメンでもある。同じグラスゴーにいたハルオミとは対照的に、冷静で生真面目かつ器用だ。
「何か考え事か?」
「えっと……うん……まぁ」
「そうか……やっぱり隊長職ともなると考える事も多いよな……」
しみじみと語るギルバートは、同じように遠い目をしていた。グラスゴー支部はもともと小さな支部だとハルオミから教えられた。ハルオミがいなくなった後に、ギルバートがグラスゴーで部隊長をしていたのかもしれない。
だが、今ステラが悩んでいることは仕事のことではない。
「ねぇ、ギル? 私のこと……どう思う?」
「…………………………はい⁉︎」
「あっ! いや……その……深く考えなくていいよ?」
「隊長のことをどう思ってるか、かー……」
深く考えなくていいと言われても、どうしても考え込んでしまう。
隊長はいつだって前向きで、まっすぐで、面倒見が良くて、誰からも好かれるタイプだ。その癖頑なで、他人の頼み事はあまり断らないし、すぐに無茶をするし……放っておけない。
だから俺は、隊長をずっと……
「……支えたいと思っている」
「えっ⁉︎」
「いや……なんでもない」
思わず口がすべってしまった。横目で隊長を見ると、若干赤くなっていた。
俺自身も、顔が赤くなっていると思う。
「とっ、とりあえず私は……報告書あるからっ‼︎ また後でね!」
突然立ち上がった隊長はそう叫んで走り去っていった。
俺は隊長が残していった食器を、自分のと一緒にムツミちゃんの元へ返した。
「ごちそうさんだ」
「はい‼︎ また来てください!」
ムツミちゃんは満面の笑みで食器を受け取った。
報告書を出し終えたステラは晩酌をしようと思ってラウンジに向かっていた。
「あっ、ギル」
「ん? おう」
エントランスにいたギルバートは、ピンク色のラベルが貼られた可愛らしい缶ジュースを持っていた。
「ギル、そのジュースは?」
「これか? 『初恋ジュース』だ。前から気になってたんだが、発売中止でな……で、今日見たら販売中ってなっててな。気になったから買ってみたんだ」
『初恋』という言葉が頭を過る。そういえば私の初恋の相手は……
「お前も飲むか?」
「あ、うん。いただきます」
そう言うとギルバートはジュースを手渡してくれた。どうやら奢ってくれるようだ。
「じゃあ、かんぱーい!」
「乾杯っ!」
ギルバートと乾杯を交わして缶のプルタブを開けた。そして『甘酸っぱくてほろ苦い』という売り文句のラベルを一瞥してから喉に流し込む。
うん、甘酸っぱくておいし………………………………
「おい、生きてるか……?」
「ええ……なんとか」
今回は語り手を途中で変えてみました。