フロンタルに憑依した苦労人転生者のガンダムSEED   作:鉄血

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第百四話

カチカチカチと時計の音が部屋に鳴り響く。

 

「・・・ふぅ」

 

フロンタルは手元のタブレットの電源を落とし、小さな吐息を吐く。

午前一時。

出発の時間まで後、七時間といったところだ。

 

「・・・少し休憩を挟むか」

 

強化手術を自身の肉体に施したとはいえ、前世・・・ウルピアヌスだった頃の肉体スペックには程遠い。

たまに休憩をとらなければすぐに無理が祟ってしまう。

とはいえ、だ。

今の時ほどあの身体が欲しいと思う。

あの身体はシーボーン遺伝子を自身の身体に組み込み、百回以上強化手術を施した結果出来た肉体だ。

たかが、宇宙世紀の強化手術を数回受けた程度で得られるほどの恩恵ではない。

まあ、それでもアビサルハンターの中で俺は平々凡々だった訳だが。

 

「・・・ないものねだりか」

 

ああイヤだイヤだ。

俺がこんなのでどうするんだよ。

プラントを救うと決めた時点で覚悟なんぞ決まってるてのに。

 

フロンタルは内心でそう愚痴を零しながらも、椅子から立ち上がった。

流石に晩飯を食わずにプラントの侵入ルートをこの時間帯まで練っていたのだ。

少しは腹に何か入れたい。

そうして自室から出たフロンタルは食堂へと向かう。

と、その道中に光が漏れていた。

 

「ん?」

 

フロンタルはその光を見て足を止める。

確かあの場所はトレーニングルームだった筈。誰か消し忘れたのだろうか?

そう思いながらトレーニングルームへと足を進める。

そして部屋の中を覗いてみると、そこには一人の少女がいた。

 

(・・・・エム?)

 

「・・・・っ!」

 

素早くナイフを主軸とした体術を軽やかな身のこなしで見せていく。

トレーニングウェア越しでも分かるそのしなやかな身体は齢十五前後の少女のものとは思えないほど鍛えられている。

 

「・・・・ふッ!」

 

勢いよく吐き出された息と共にエムは蹴りをサンドバックに打ち込む。

バコッ!!と大きな音と共に揺れるサンドバックを見てかなり威力があるのだろうと見てとれた。

トレーニングに熱心なのはいいが、時間が時間だ。

それに明日から彼女には護衛をしてもらう予定である。

フロンタルはトレーニング中であるエムに声をかけた。

 

「トレーニングに熱心なのは良いことだが、こんな夜中までやっているのは感心しないな」

 

「・・・・ッ!?」

 

不意にかけられたその言葉にエムは警戒を解くことなく、ナイフを構えたまま此方へと振り向く。

そして声をかけたのが自分だとすぐに認識したのか、彼女はすぐにその警戒を解いた。

 

「吃驚。隊長でしたか。びっくりしました」

 

そう言いながら彼女はゆっくりとナイフを持った手を降ろす。

 

「驚かせたのならすまない。だが、この時間帯までトレーニングとは感心はしない。明日から長期任務になる。今のうちに身体を休ませておけ」

 

「・・・・・」

 

沈黙するエムにフロンタルは違和感を覚える。

 

「どうした?何か言い辛い事でもあるのかね?」

 

「肯定」

 

その言葉にエムは小さく頷いた。

そう言うエムにフロンタルは一度周りを見渡す。そして誰もいないと分かると、エムに言った。

 

「ここで言い辛いのなら私の執務室に来なさい。そこで話を聞こう」

 

そう言って部屋から出ていこうとするフロンタルの背に向けてエムは言った。

 

「静止。待ってください」

 

「む?」

 

エムのその呼びかけにフロンタルは足を止める。

そして足を止めたフロンタルにエムは言った。

 

「返答。最近、よく眠れません」

 

「不眠症かね?」

 

「否定。違います」

 

フロンタルの問いに彼女は首を横に振る。

どうやら違うらしい。

 

「・・・・夢の中で仲間を殺した夢を見ます」

 

そう言うエムは更に続ける。

 

「殺した時の感触、悲鳴。それを感じるたびに目が覚めます」

 

そしてエムはフロンタルを見た。

 

「質問。私はどこかおかしいのでしょうか?」

 

答えを求める彼女にフロンタルは───

 

「おかしくないことだ」

 

そう言ってエムの頭を撫でる。

 

「・・・・ん」

 

小さく声を漏らしながらエムはその手を受け入れた。

無防備に頭を撫でられるエムにフロンタルは言う。

 

「その感情は"お前"がまだ人間であるという証拠だ。その感情を"失くすなよ"。失くしたら最後、"俺と同じような人間になる"」

 

「・・・・隊長?」

 

一瞬───まるで"別人"のようになったフロンタルにエムは顔を上げる。

 

「どうした?」

 

だが、それも聞き間違いだったのだろう。

いつもの隊長の声にエムは何の疑問を抱かなかった。

 

「眠れないのなら眠れるまで私がそばにいよう。眠れなかったら申し訳ないがね」

 

「・・・感謝。ありがとうございます」

 

エムは一言礼を言い、フロンタルの肩に自身の頭を置いて目を閉じる。

そしてしばらくすると、小さな寝息が聞こえてきた。

 

「・・・エム?」

 

フロンタルは自身の肩に身体を預けるエムに声をかけるが反応はない。

 

「・・・・すぅ」

 

安心したかのように眠る彼女にフロンタルは小さく溜息をつく。

そして───

 

「・・・・良い夢を見るといい」

 




プロフィール オリ主

ヤーナムやテラの大地にいた時代───フロンタルさんの事オリ主は容姿も名前も全くの別人だった。
その時の名はウルピアヌス。エーギル技術執政官にしてアビサルハンター計画プロジェクトの担当責任者。
そして最初のアビサルハンターでもある。
その戦闘能力にいたっては他のアビサルハンターには劣るが、常人ならば身体が爆散するような一撃をもろに食らっても気を失う程度で済む耐久性と分厚い金属で出来た甲板を一撃でブチ破るほどのフィジカルを持っていた。

だが、同時に彼として生きていた時間が最も長かった弊害もあり、オリ主が海に来たり、裏切り者を刈り取る時には当時の性格に戻ってしまう。

それとオリ主にとっての問題があと一つ。
SEEDの原作知識はまだ"記録"として残ってはいるが、"本当の自分"の記憶と自我はほぼ消滅している。

普段の裏側でふざけ倒した性格も"本当の自分"の再現でしかなく、これが本来の自分なのかどうかも怪しい。

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