フロンタルに憑依した苦労人転生者のガンダムSEED 作:鉄血
要人を人質にとれば、己の身の安全が図れるという目論見はどの世界でも変わらないとは・・・宇宙世紀の地球連邦やコズミック・イラの地球連合が似たような組織になりつつあるのが良く分かる。
アナハイム・エレクトロニクスのやることを基本黙認し、自分達連邦の力を保守する為にニュータイプの存在を否定し続ける連邦。
ブルーコスモスとロゴス。彼等の莫大な資金によってなり立ち、彼等の言いなりになることで自身の立場と力を保守し、そしてコーディネイターを否定する連合。
その巨大さ故に、地球連邦も地球連合も目的や形は違えど同じに成りつつあるのは奇縁と言うしかない。
任務の遂行と己の身の安全。どちらかひとつしか選べないとなった時、果たして彼らはそのいずれかを選択できるだろうか?
自らを犠牲にして尽くす気概もなく、気にするのは自分の立ち場とプライドだけ。
ただ───他の“誰か”が責任を果たすのを待っている。
それが地球連邦や地球連合の本質だ。
ラクス・クラインはいつでも取り戻せる。
このまま結論が出ない返答を待つとしよう。
◇◇◇◇◇
「───時間だ。返答を聞こう」
フロンタルの無機質な声がアークエンジェルの艦橋に響き渡る。
その言葉にマリュー・ラミアスとナタル・バジルールは互いに目を合わせる。
そして二人が選んだ選択は一つ。この交渉には乗るべきだと。
彼等クルー及び、向こうの艦には要人も乗っている。この交渉はいわば延命工作だ。
彼女───ラクス・クラインを引き渡し、先の安全は保証出来ないにしてもネルソン級一隻、ドレイク級二隻を安全に引き渡してくれるのなら、此方にはメリットしかない交渉だった。
しかも相手はあのフル・フロンタル。──赤い彗星だ。
もしあの噂が本当なのならば、アークエンジェルを含む三隻のモントゴメリなど彼一人で全滅させることが出来るだろう。
そしてマリュー・ラミアスはナタル・バジルールと決めた選択を口にした。
「その交渉には乗ります。ですが、モビルスーツは渡すことは出来ません」
「・・・ほう?それでは君達の安全の保証は出来ないが・・・理由を聞かせて貰いたい」
フロンタルのその問いにマリューは答える。
「ここで今、モビルスーツを引き渡せば今後戦闘が起こった場合切り抜けることが出来ません。たとえ貴方の言葉に偽りがないとしてもゼロではない以上、ストライクの引き渡しは貴方と敵対してでもお断りします」
「ふむ───」
ヨシヨシ良い決断。予想通りの返答をありがとう。マリューさん。
それでいい。そうしてくれた方が私も今後が動きやすい。
「了解した。──では、互いの交渉は成立でいいかね?」
「はい」
力強く返答するマリュー艦長にフロンタルは口を開いた。
「取引きは手短に終わらせる。新型モビルスーツのパイロットと共にラクス・クラインを乗せてくれたまえ。それが確認出来たら私達も彼等を引き渡す」
「キラ君を?それは何故?」
「罠かもしれない交渉だ。臆病にもなる。無論、此方が怪しい動きをしたら撃ってくれても構わない」
「・・・隊長。それ、私に遠回りに死ねと言ってます?」
「平等な取引きだ。あちらにもある程度納得出来る場を作るのも我々のやることだ」
「・・・まあ、いいですけれど」
ごめんて。だからそんなジトッとした目で見ないで。
トリトマはフロンタルに呆れたような目を向けながら取引きの場に立つ。
ザフトと地球連合。聞けばあり得ないとしか言われない交渉が成立した。
プロフィール1
フロンタルはDESTINYプランについてはかなり否定的。
それは何故か?
もし、DESTINYプランが実行されれば第二、第三のフル・フロンタルを作り出すことになってしまうことになるから。
DESTINYプランはフル・フロンタルにとって人の可能性を狭める行為でしかないと思っている。
ただ───無意識に人々に作られたフロンタルもそうするしか生き延びる手段がないと考え、憑依した彼も──こう思っているかも知れない。
皆も、自身と同じように希望に満ちたその可能性を自分と同じように絶たれてしまえばいい───と。