フロンタルに憑依した苦労人転生者のガンダムSEED 作:鉄血
アスランとカガリはデュランダル議長とフル・フロンタルと共に司令部を出た。
執務室から出る際に工廠を案内すると言っていたが、本当に案内をするつもりだったらしい。
周囲には格納庫が建ち並び、ときおり広い路面をモビルスーツが地響きを立てて横切る。
アスランはカガリの後ろにぴたりとついて辺りを見渡すと、周りは明日に予定されている式典の為に酷くごった返している。
アスランはきびきびと動く兵士たちや、オイルの匂い、雑然とした雰囲気の中に身を置き、郷愁のようなものを覚えた。かつてはここが自分の属する場所だった。
警戒の為に周囲を見回しながらも、その目はついついモビルスーツの方へと向いてしまう。
”ジン“や”シグー“は自分がいた時と変化はないようだが、当時実戦配備が始まったばかりだった”ゲイツ“は腰部両側のアンカーがレールガンに換装されている。
薄黄色の戦車タイプに変形する機体はおそらく”ザウート“の次世代機だろう。
そんな中、アスランはこの工廠でまだ一度も見ていないモビルスーツがあった。
(・・・袖付きのモビルスーツが一機もいない?)
袖付きのモビルスーツ───“ギラ・ズール”の機影がどこにもない。
あのモビルスーツは二年前からフロンタル隊にだけ実戦配備されていた。
そう言えばギラ・ズールや彼女が乗るデルタカイはフロンタル自身が設計したものだと言っていた。
もしそれが本当なのだとしたら───
(ギラ・ズールの生産ラインはこの男が握っているのか)
デュランダル議長の横を歩くフロンタルに改めてこの男は規格外だと認識させられる。
元遺伝子学者でモビルスーツの開発、設計士としての技術もあり、元議長として政治にも口だしすることが出来る。
それでいて自分はまだ見たことはないが、モビルスーツを生身の状態で破壊出来るときた。
そんなアスランから見ても化け物としか思えない人物が何故、七年前急に出てきた?
それがわからない。この男の手腕なら死んだ父が議長につくことすらなく、議長の座につけたかもしれなかったのに。
「姫は先の戦争でも自らモビルスーツに乗って戦われた勇敢な御方だ。最後まで圧力に屈することなく、自国の理念を貫かれた『オーブの獅子』、ウズミ様の後継者でもいらっしゃる」
父の名を持ち出され、カガリはやや感情的な表情になった。
ウズミ・ナラ・アスハは最後まで地球連合と戦い、その理念をカガリ達に託して死んだとフロンタルはそう耳にしている。
国やそこに住む国民達を優先にして動いたその生き様には敬意するが、その娘がその英雄性のお下がりをぶら下げて周りに踊らされている無力な娘なのだ。
そんななりでもウズミの娘という立場は政治的にも強い。
まあ、マスドライバー施設もろとも爆死したのは一部の理由を知らない国民からしてみれば『彼奴等責任逃れして心中しやがった』と思われなくはないが。
「───ならば今のこの世界情勢の中、我々がどうあるべきかは良くお分かりのことと思いますが・・・」
デュランダルのほのめかしに対して、カガリは硬い声で答える。
「我らは自国の理念を守り抜く。それだけだ」
「他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いを介入しない?」
「そうだ」
頷くカガリにデュランダルは笑みを浮かべたままだ。
「それは我々も無論同じ考えです。そうであれたら一番良い」
しかしデュランダルはもの柔らかな笑顔のまま、こう続けた。
「───だが、力なくば、それは叶わない」
その時アスランはひとつの格納庫を覗き込み、中に並んだ機体に息を呑んだ。随員の一人が誇らしげに声をかける。
「ZGMF─1000”ザク”───これは”ザクウォーリア”と呼ばれるタイプですな。ニューミレニアムシリーズとして次期量産モビルスーツとしてロールアウトされた我が軍の最新鋭機です」
モスグリーンを基調とした装甲の新型機は袖付きの”ギラ・ズール”からの流れを受けたデザインを残している。だが、こんな機体を自分達に無造作に見せてよいものだろうか?
そう思っていたアスランにフロンタルが口を開く。
「アレックス君。君は今、このモビルスーツをこんな無造作に見せてもいいものなのかと思っていないかね?」
「・・・!?、ええ。少し無警戒過ぎるかと」
内心を読まれアスランは少し焦りを見せたが、フロンタルはそれ以上追求することなく話始めた。
「無警戒なのは私も同意見だ。私なら警備から見直すとも。だがね、アレックス君。私はこのザクを最新鋭機とは思っていない」
フロンタルの口からその言葉にザクを自慢していた随員が顔を真っ赤にして叫ぶ。
「このザクを最新鋭機だと思っていないだと!!幾ら貴方でもそれはプラントに済む技術者に対する冒涜だ!」
「ムーバブル・フレームを採用していない半モノコック式の旧式フレームで耐久性はあるが、運動性や整備性は天と地の差があり、装甲が破損すればそのフレームごと交換しないといけないザクに対してギラ・ズールは装甲だけを取り替えれば済む。それに、だ。ザクの特徴であるウィザード・システムもギラ・ズールの背部コネクタを変えれば換装できてしまう時点でザクがギラ・ズールに勝てる要素は機体の出力くらいしかないぞ」
ぶっちゃけた話、袖付きのパイロット達はザクに対してかなり不評だ。
ギラ・ズールの劣化。トマホークを盾の中に入れるな。ウィザード・システムだけ寄越せetc・・・
宇宙世紀のジオン版ジェガンの名は伊達じゃない。
ギラ・ズールにコンペ負けした機体。それがザク。俺の印象は正にコレ。
「ならばその独占している技術を広めれば更に強力な兵器を作る事を出来る!何故、それをしない!」
おいおい・・・カガリがいるのにそんな馬鹿みたいに取り乱すなよ。事実を告げただけだろうが。
「今の私達は過去の戦争とは違い、敵国を攻める戦いではなく、自国や同盟国を守る戦争をしている。行き過ぎた技術は時にジェネシスのような大量破壊兵器を生み出す。今の君のように強力な兵器をつくり、敵を倒すという考えを持つ人間には身に余る技術だ」
明らかにその随員を下に見ている発言に男は更に顔を怒りで真っ赤に染める。
流石に言い過ぎたか?思わず素に戻りかけたが・・・
元エーギル人だったとはいえ、傲慢に過ぎたな。
そう思ったフロンタルと今にも掴みかからんとする随員にデュランダルが割って入った。
「そこで止めておきなさい。客人の前だ。後、フロンタル。君の言い分はもっともだが、このモビルスーツを作った技術者に失礼だ」
「失言だったな。彼等の努力に敬意がなかった」
「ああ。まあ、君の言い分に関しては私も共感はするが」
コイツ・・・周りに聞こえない声でザクをディスりやがる。
───そんなやりとりをしていると、ふとトリトマが真剣な顔をして顔を上げた。
「疑問。どうしました?」
エムがトリトマにそう話かけるが、トリトマは一方向を見つめたままで返事はない。
そして───
「─────来る」
「えっ?」
彼女がそう呟いたその次の瞬間───警報が鳴り響いた。
フロンタルさんの質問コーナー
Q.フロンタルさんは自分の部隊に相応しいと思う人をどうやって決めていますか?
A.基本はスカウト。後、技術と面接対応。
面接官としての対応に関してはフロンタルさんは自分から質問する事は滅多になく、受ける側に質問を三つさせる。
それに受け答えして合格ラインを見極めているそう。
受ける側のストレスはかなりヤバいらしいが。