フロンタルに憑依した苦労人転生者のガンダムSEED   作:鉄血

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第二十二話

「ダメです!司令部、応答ありません!」

 

工廠内の司令部を呼び出していたバート・ハイムの報告に、タリア・グラディスは苦い顔になる。蜂蜜色の髪を前に流した凛としたふぜいの女性だ。

港との連絡もさっきの震動以来、途絶えたままだ。おそらくあれが、外部から港への攻撃だったのだろう。

 

「工廠内ガス発生、エスバスからロナール地区まで、レベル四の退避勧告発令」

 

別系統で情報収集に当たっていたメイリン・ホークの報告も、タリアの気分をますます滅入らせた。副長のアーサー・トラインが動揺した声を出す。

 

「艦長・・・これ、まずいですよね?もしこのまま逃げられでもしたら・・・」

 

まずいに決まっている。人柄はいいのだが、どうもこの副長は言わずもがなのことを言い過ぎるようだ。

 

「・・・バタバタ首が飛ぶわね。上層部と私達の首が」

 

アーサーはさらに情けない顔になった。この男には開き直るくらいの度胸はないだろうか?

 

「それにしても・・・」

 

タリアは顎に手をやりながら呟く。

 

「しかしどこの部隊かしらね?こんな大胆な作戦・・・」

 

モニターにはシン達の追撃を振り切って外壁を目指すセカンドステージシリーズ三機が映っている。

必然性から考えれば敵は旧地球連合軍のユーラシア連邦の連中だろうがあれほどまでに乗りこなすパイロットがナチュラルとは思いがたい。

にもかかわらず、これほどの作戦を遂行可能な部隊が地球連合以外にいるとも思えないのだ。式典前の混乱に紛れて潜入、新型機を奪取し、プラント内部で騒ぎを起こす。そしてそれと呼応するように、外部の部隊が港を潰す、などと───。

その時、背後のエレベーターが開き、タリアは振り向いた。艦橋に入ってきた人物を認め、彼女は驚きの声を上げた。

 

「議長?」

 

「デュ、デュランダル議長!?なぜこんなところに!?」

 

そこにいたのは随員を伴ったデュランダル議長の姿だった。議長が進水式と軍事式典に出席するため、訪問中であったことは知っていたんだが、なぜ避難せずにこんなところへ?

 

「状況は!?どうなっている!」

 

デュランダルは端整な顔を厳しく引き締め、早足に入って来るなりそう尋ねてくる。

 

「・・・ごらんのとおりです」

 

タリアはモニターを示したあと、こちらが把握しているだけの状況を手短に説明する。内心では厄介なことになったと感じながら。

デュランダルは被害が発生している地上から、シェルターへ避難するように勧められたが、フロンタルが前線にいるのに自分だけが安全な場所にいる訳にはいかないと案を蹴ってこの艦に来たのだという。

デュランダル議長はシーゲル・クライン、アイリーン・カナーバ、フル・フロンタルの後を引き継いで議会の中では穏健派を率いている。

前議長であるフル・フロンタルの推薦もあり、彼の後を継いで地球への宥和政策をとる穏健派ではあるが、フロンタルと同じく軍備の重要性をも理解している。つまり話のわかる人間だとタリアは認識していた。

こんな時に自分だけ逃げることを潔しとしない、という心情も立派だと思う。彼に対して他意はなく、むしろ好意を持っている。公的のみならず、いささか"個人的な事情"においても。

だがそれは艦橋の外に限ってのことだ。戦闘中に、部外者──しかも抗いがたい権力を持った人物を艦橋に入れたがる艦長や隊員はいない。

キャプテンやトリトマのような例外を除いてだが。

そのとき、モニターの中がパッと明るくなり、一同の目がそちらに向く。ガイアが背面砲とライフルを、外壁に向かっていっせいに発射したのが見えた。シンのインパルスがそれを止めようとビームブーメランを投げつけたが、それらはアビスが横から放射したビームに飲まれて融解した。

 

「まずいな・・・」

 

デュランダルが苦い呟きを漏らす。ガイアは再度、外壁へと砲撃するが、ルナマリアが乗るザクとクラディアが駆るザクがそれを妨害する。

その時、インパルスからの通信が入った。

 

『ミネルバ!フォースシルエットを!』

 

パイロットの要求に、副長のアーサーが戸惑った顔をこちらに向ける。

 

「艦長?」

 

ここがあの三機を押さえる最後のチャンス、ギリギリの瀬戸際だ。持てる手札を切るなら、今しかない。

 

「許可します。射出して!」

 

迷いのない彼女の言葉に、逆にアーサーがふと背後を気にした。タリアは肩ごしにデュランダルを見やる。

 

「───もう、機密もなにもありませんでしょ?」

 

デュランダルは諦めたように肩を竦めた。

 

「ああ・・・」

 

指示を受けてメイリンが、うわずった声でモビルスーツデッキに呼びかけようとしたその時だった。

 

「艦長!」

 

その叫びにタリアは顔を上げる。

 

「どうしたの!」

 

「アーモリーワンコロニーから飛翔する熱源帯を確認!」

 

「なんですって!?」

 

その言葉にモニターでその熱源の主であるソレを見た。

 

「なに?あれは・・・?」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

モビルアーマーとでも言えばいいだろうか。巨大な鳥の様なシルエットだが、その大きさはザフトで採用しているモビルスーツのほぼ倍の大きさだ。

そして二十基以上はあるプラズマ・ジェット・エンジンが火を噴き、凄まじい速度で宙域を駆けていく。

 

アリュゼウス。

 

オデュッセウスの義兄弟の名を冠するソレは戦場を駆け抜けた。

 

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