フロンタルに憑依した苦労人転生者のガンダムSEED   作:鉄血

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第二十三話

「なんだ・・・ッ!?」

 

皆が凄まじい速度で宙域を駆けるアリュゼウスに目を見開く。

灰色の機首、巨大なスタビライザーと無数のスラスターの光が目に焼き付く。戦闘機というにはあまりにも巨大で機体後部には翼部がない。それを見定める前にその機影の下部に目をやるとスティングは目を見開いた。

 

「こいつ!?まさかアレがモビルスーツだって言うのか!?」

 

一瞬鳥のような脚部に騙されそうになるがその根元──本体からモビルスーツ特有の人型の脚部がはみ出しているのが見え、驚愕した。

 

機首と思しき場所から赤い色のツインアイがこちらの姿を捉えていた。そして両腕部に装備された円状のシールドからピンク色の光が収束する。

 

『スティングッ!?なんかアレ、ヤバいんじゃないの!?』

 

「そんなことは分かってるッ!ステラ!!」

 

スティングはステラに通信を入れるが、等の彼女は怯えきった悲鳴を上げる。

 

『やめてぇッ!あっち行ってッ!』

 

その言葉と同時───鮮やかなピンク色の熱線が放たれた。

 

「・・・ッ!?」

 

スティングは咄嗟に手にしていたシールドで防御の体勢を取る。

だが、オデュッセウスの通常装備であるコンポジット・ウェポン・ユニットのビーム砲の威力は普通のビームライフルのそれとは違った。

放たれたその熱線はカオスのシールドに直撃する。普通のビームライフルの一撃なら数発は耐えるビームコーティングが施されていた筈のそのシールドはその一撃で原形を一部だけ残したまま融解してしまった。

 

「なんだあの馬鹿げた威力は・・・!?」

 

その威力は艦砲射撃そのもの。艦砲射撃に近い威力のビームは自身の乗るカオスやアウルのアビスにも装備されているが、アレは本体に内蔵してなおかつ、射程も短いからこそ成せる威力だ。

携帯式であそこまでの威力を出せる武装は見たことがない。

数の有利で負け、こちらはバッテリーのエネルギーも残り少ない。

そしてあの化け物も相手をするのは流石に分が悪すぎる。

 

「アウル!ステラ!こいつらの相手をするだけ無駄に消耗するだけだ!墜とすのは諦めて逃げることに専念するぞ!」

 

『はいはい!分かったよ!』

 

三機は追っ手を倒すのを諦めてインパルスの横をすり抜けて逃げ出した。

 

「くっそォッ!」

 

シンは歯噛みした。

───やっとここまで追い詰めたというのにやられっぱなしじゃないか!せっかく手に入れた力を活かすこともできず、奪われるがままに翻弄される。シンにとってそれは耐えがたいことだった。もはや義務感というより執着心に突き動かされ、彼は躊躇うことなく追いかける。

 

───絶対にあいつらを逃がすものか!

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

ネオ・ロアノークは敵モビルスーツを撃退したあと、エグザスを駆り、アーモリーワンを目指した。一応、潜入させた別働隊の成否を確認するためだ。ネオは部下たちの能力を正しく評価していたので、彼らが失敗するとは考えなかった。なにかイレギュラーがあったと思った方がいい。

プラントの外壁付近で彼はエグザスの相対速度を合わせ、エンジンを切る。

今頃、自分達の部隊が“袖付き”と交戦している頃合いだろうがなるべくあの連中とは交戦を避けたいところだ。あの部隊は超がつくほどのエリート集団。ユーラシア連邦の軍の連中達もあの白い悪魔が出てくるのを恐れているぐらいだ。

様子を窺ううち、プラントの一角からビームが放たれた。外壁を沿うように黒いモビルスーツが一機の飛び出し、ついで二機が連なるように続く。“連中”だろう。遅れはしたものの、ネオの期待に応えて任務はこなしたようだ。

それにしても随分と遅くなったものだと思った瞬間、さらに後方からミサイル群が飛翔してきた。

 

「あれは・・・」

 

ネオは身体を起こすと追われている彼等のさらに後方───巨大な機影と四機目の新型機であろうモビルスーツの姿があった。

 

「あんな機体の情報はなかったはずなんだがね・・・!」

 

ネオは彼らが遅れた理由を悟り、自嘲する。

 

「なるほど。これは確かに俺のミスかな・・・!」

 

ネオはガーディ・ルーへの通信文をキーボードで打ち付けた後、エグザスのエンジンを始動させる。

彼等では恐らくアレを捲くのは厳しいだろう。機体は優雅にトンボを切り外壁を離れ、一気に加速すると、巨大な機影に目掛けて急迫した。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「───ッ!加速力が凄い・・・!」

 

トリトマはアリュゼウスのその加速力に顔を顰める。身体にこれほどのGがかかるのはシナンジュの高機動モードを初めて使った時のことだった。

シナンジュのあの高機動モードは人型のまま人体を無視した加速力によって生み出された結果、出来た代物だが、このアリュゼウスは基本構造から違うのか身体の負担はシナンジュに比べて楽だ。

そのあたりもエムさんの事を考えて造られたのだろう。トリトマは少し先にいる三機を捉えながらモニターを見る。

 

「武装は・・・!」

 

トリトマはアリュゼウスとオデュッセウスに搭載された武装欄を一瞬だけ見た。

ビームライフルにビームサーベル、メガ粒子砲、ミサイルにファンネル・ミサイル?

見慣れない武装があるがトリトマは気にすることは後だと言わんばかりにファンネル・ミサイルを選択する。

左右のミサイルコンテナから錐状のミサイルが三基ずつ射出され、前方の三機へと飛翔していった。

それを迎撃しようとアビスはビームを一条に発射し、カオスもまたポッドで撃ち落とそうとする。

放たれるビーム熱線をファンネル・ミサイル達はそれぞれが意志を持つかのように不規則な軌道を描いて”ビームを避けた”。

 

『な───ッ!?』

 

ミサイルがビームを避けるという理由の分からない現象にアウルとスティングは驚愕し、その隙をついてファンネルミサイルはその二機に噛みついた。

 

『おわッ───!?』

 

爆炎と共に凄まじい衝撃が機体を襲う。

フェイズシフト装甲で機体は無事だが、スティング達は内心で爆炎から出てくるソレを見て冷や汗を流す。

 

 

【挿絵表示】

 

 

あのパイロット───ヤバい。

 

あのスピードを維持しながらミサイルを当ててきた。しかもさっきのミサイルは普通のミサイルではない。

恐らくこの機体のドラグーン兵器に近い代物だ。でなければあのような不可解な軌道を描ける理由がない。そしてそれを当てる技術。あの高速戦闘であの速度を維持したまま戦えるのは凄まじい技量のパイロットだ。そう───あのネオと同等くらいの───

 

そう思った次の瞬間──ミサイルが更に追加で飛んでくる。

ヤバい!とスティングが思った時だった。

無数のビームが四方から壁のようにミサイルを撃ち落とす。

 

「・・・・上ッ!」

 

トリトマはすぐさま殺気を感知し、機体を捻った。

バレルロールをするように回転しながらアリュゼウスは回避行動を取ると、さきほどまでいた場所にビームの熱線が通り過ぎた。

 

「この感覚・・・クルーゼさんに近いですね」

 

トリトマは直感で先ほどの攻撃がクルーゼと同じ能力を持つパイロットだろうと目星をつける。

同じ殺気が別々の方向から向けられる。それは一度プロヴィデンスというモビルスーツやサザビーといった遠隔操作が可能なモビルスーツと交戦したことのあるトリトマからすれば慣れたことだった。

トリトマはモニターに矢のように迫る赤紫の機体がこちらに迫ってくるのを見て呟いた。

 

「・・・あれでやがりますか」

 

二年前、隊長がストライクと戦った時に似たような機体と戦っていたことを覚えている。

トリトマは再度、操縦桿を握りしめてから口を開いた。

 

「私を舐めねーでください」

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