フロンタルに憑依した苦労人転生者のガンダムSEED   作:鉄血

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第三十二話

アリュゼウスに装備された複数のスラスターノズルから推進剤が燃える炎が上がる。

そして一気に加速して“ミネルバ“から離れていく姿を一人の少女が窓の外から見つめていた。

 

「・・・“お姉ちゃん“」

 

彼女は遠ざかっていくトリトマが乗るアリュゼウスの姿を見送りながらそう呟く。

また、会って何も言えなかった。

家のことも。母のことも。

“あの事件“でお姉ちゃんの記憶が無くなった時は私にとってどうしょうもない絶望の淵に落とされた。

そしてその事件にお姉ちゃんを巻き込んだあの男も。

だからこそ最初から“やり直そう“と思ったのだ。

お姉ちゃんが記憶を無くしたのなら、また最初から作ればいい。そしてまた二人でと思った矢先、お姉ちゃんは家を出て軍の士官学校へと入った。

母は記憶を無くして落ちこぼれとなったお姉ちゃんが家を出たことで喜んでいたが、私は違った。

お姉ちゃんが士官学校に入ったことを知って、一度は遺伝子学者を目指していた私も士官学校へと入学しようとしたが、母はそんな私を止めたのだ。

 

“貴女はあの子よりも優秀なのだから士官学校なんて行く必要ないわ“

 

そう言って私は二年前のあの時、お姉ちゃんの後を追うことが出来なかった。

だが私はそんな母の言葉を“振り切って“士官学校へと入った。

そして私が士官学校で勉強を励んでいる間に戦争が終わり、お姉ちゃんはあの戦争で皆を救った英雄として讃えられた。

最初はそうだろうと内心で胸を張った。

 

そうお姉ちゃんは優秀なのだ。決して落ちこぼれではない。

 

そんなお姉ちゃんと一緒にいたくて私は“袖付き“の一次試験を合格し、仮入隊としてお姉ちゃんの隊へと入った。そしてそこにいたお姉ちゃんの姿を見て衝撃を今でも覚えている。

 

『キャプテンさん!今から隊長の所に行くんですよね!だったら私も一緒に行ってもいいですか!』

 

『同行。私も一緒に行きます』

 

『じゃあ、私も行こうかなー。久しぶりに隊長さんの顔も見たいし』

 

『ええ、構いませんよ。あの人も貴女達が元気にやっている姿を見れば安心するでしょうし』

 

あの男や他の人の前でお姉ちゃんは笑顔を浮かべていた。

私にもう向けてくれなくなったその顔を。

家を出ていったあの日からお姉ちゃんは一度も家に帰ってくる事はなかった。最初はエースパイロットとして忙しいから帰ってくることが難しいからだと思っていた。

だけど実際は違った。

 

『エムさん、久しぶりに家に戻る前にアイスとかお菓子を買っていかねーですか?確か任務前に全部食べきってから家を出ましたし』

 

『あ、なら私もお酒買っておきたい!いやー丁度切れちゃっててさ』

 

『了承。なら車を回してきます。基地の入口で待っていてください』

 

『車のバッテリーが上がってねーといいですが・・・』

 

お姉ちゃんがあの家に帰ってこないのはあの二人がお姉ちゃんを縛り付けていたからだと。

そして何よりも───

 

『隊長、どうです?紅茶の入れ方を少し変えてみたんですが、口に合います?』

 

『ああ、飲みやすくて悪くない。礼だ、茶菓子を用意しよう』

 

『なら、隊長も一緒に休憩しねーですか?どうせ碌に休んでねーでしょう?』

 

『最近は碌に休める状況でなかったから仕方ない。だが、せっかくトリトマからの誘いだ。私もお茶にしよう』

 

『・・・!ならすぐに準備しますね!』

 

羨ましかった。妬ましかった。

目が覚めてから私にはあんな顔を見せる事はほとんどなかったのに。

だから私はもう一度お姉ちゃんに振り向いてもらおうと思って様々な手を打った。

だが───

 

『すまないがクラディア・レオントッツォ。君は近々出来るミネルバと言う艦のパイロットになってもらう』

 

『なぜ・・・?』

 

その時は単純な疑問だった。

だが、私の質問にフル・フロンタルは言った。

 

『トリトマ・・・レオントッツォ隊から君に対する苦情が出ている。隊長のレオントッツォから五件、エルから二件、リケーレから三件、後はエムから一件。身に覚えはないかね?』

 

『・・・ありません』

 

『そうか。軽く目を通させてもらったが、全て君の姉・・・レオントッツォ隊長絡みだ。彼等彼女等からこうした苦情届けが出ている以上、君を彼女の隊に置いておく訳にはいかない。だからこその異動だ』

 

私の思いはお姉ちゃんに届いていなかった。

そして私は異動となり、このミネルバに来た。

そして今に至るまで何度かお姉ちゃんに連絡を取ろうとしたが、向こうも向こうで地球とコロニーを行ったり来たりしているらしく、中々連絡が取れていない。

そして今もまた、さらりと避けられるようにお姉ちゃんは行ってしまった。

アリュゼウスが航行して行った宙域をクラディアはしばらく眺めていると、廊下から怒りを含んだ声が響いてきた。

 

「シン!」

 

そちらへ視線を向けるとレイとシンの姿があった。

 

「なぜアスハ代表の前であんな事を言った?」

 

「別に・・・本当の事を言っただけだろ。連合がオーブに攻めてきた時、アイツは俺達を見捨ててあの戦いから一人逃げたんだぞ!あんな偽善者なんかに謝るか!」

 

「シン・・・!」

 

どうやら艦内で噂になっているオーブの代表と揉め事があった様子だ。

もう少し内容を聞いてみようと近づこうとしたその時───

 

《───敵艦捕捉。距離八千!》

 

一触即発の空気を、鳴り響くアラートが打ち破る。

 

《コンディション・レッド!パイロットは搭乗機にて待機せよ!》

 

どうやら取り逃がした敵を見つけたらしい。

慌ただしく動くクルー達を横目にクラディアも動き始める。

 

お姉ちゃんの事は後だ。今は目の前の事に集中しよう。クラディアは頭の中を切替えてモビルスーツデッキへと向かった。




おまけ

フロンタルさんの適正な職業は?

トリトマ「モビルスーツのパイロットじゃねーですか?机の前にいるより活き活きしてますし」

エム「回答。開発者では?隊長はモビルスーツを沢山作っています」

エル「政治家じゃないかなー。あの人、人を丸め込むの上手いし」

デュランダル「学者だろう。奴は元々パイロットになる前は学者だったんだぞ?」

作者「で?正解は?」

フロンタル「作曲家だが」

「「「「!!!??」」」」

フロンタル「元々は作曲家の才能があったが、とある事情(シーボーン問題)でその選択を切り捨て学者になり、その後に戦士(アビサルハンター)になっただけだ。政治家や開発者になったのは現状を変えなければならないと思い、なったという感覚でしかない」
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