フロンタルに憑依した苦労人転生者のガンダムSEED   作:鉄血

177 / 192
投稿!


第三十三話

p.m 9:21───レウルーラ 艦内

 

「フロンタル司令。ザラ派の残党はユニウスセブンの残骸を太陽風のエネルギーを使って地球に落とすつもりかと」

 

「観測は続けろ。ユニウスセブンを地球に向けて動かされる前に対処をしなければならん。報告は怠るな」

 

「了解」

 

オペレーターの報告にフロンタルは短い返答を返した後、《レウルーラ》の艦長──ハリー・ロートンは言う。

 

「しっかし・・・彼等はあんなものを地球に落とそうとするとは。彼等の怨みも底知れないものですなぁ」

 

「怨みや復讐というものはそれだけで凄まじい熱意と起爆剤になる。復讐に囚われた人間というものは恐ろしいものだよ。何をしでかすか予想をする事は出来ず、相対したとして自身の命のことなどもはや必要ないものとして特攻してくるのでな」

 

「自棄っぱち、無敵の人とかいうヤツですかね」

 

復讐者をそんなのに入れていいのか少し悩むがまあ、それに近い。

 

「だからこそ、彼等が行おうとしているコロニー落としは事前に処理をしなければならん。大西洋連邦に連絡は繋がったかね?」

 

「ええ。それはもちろん。作戦が失敗した時に使う爆破解体用に"核“まで用意してくれるようですよ」

 

「核を使うのは出来るだけ控えたい。地球を危機から救う為とはいえ、民衆の印象が悪くなる」

 

残骸とはいえ、二度もユニウスセブンに核なんて使ってみろ?日本でいう原爆ドームにもう一回核を落とす所業だ。マトモな感性を持ってるヤツでもブチギレるわ。

 

「まあ、プラント国民の印象は悪くなるでしょうなぁ」

 

呑気な奴めと思いながらもフロンタルはモニターを見た。

ユニウスセブンの全長は約36km、直径3km。アクシズよりかは小さいがこんなものが地球に落ちたら原作のブレイク・ザ・ワールド路線まっしぐらだ。

そうなってしまえば今まで積み重ねてきたものが全てパーである。

 

サトーだったか。いくら妻や戦友を殺されたからってその墓代わりになっているユニウスセブンを地球に落とすか普通?

 

そんだけ恨み辛みあったってことだろ?

 

恨み辛みでいったら俺なんてアレだぜ?アホなことやって今までの苦労を水の泡にするアホ共全員に復讐する権利くらいはあると思うの。パトリックとシーゲルは死んだけどさ?

 

でもお前はやらんだろ?

 

やらないよ?最初に首突っ込んだの俺だしね。まー、オリジナルは多分やるだろうけど。

 

数分の間、モニターを眺めていたフロンタルは身を翻した後、艦長席に座るロートンに言う。

 

「私は部屋に戻って休む。何か変化があればすぐに連絡しろ。この作戦は私も出ることになるだろう」

 

というか流石に俺もそろそろ休みたい。ほぼ二カ月休み無しみたいなもんだったし。

 

「分かりました。ごゆっくりと」

 

そう返事をし、フロンタルはレウルーラにある書斎という名の自室へと戻る。

そして扉を開けると、“私服姿“のエムが机に置かれたお菓子を食べながらソファに座っていた。

 

「帰宅。隊長、お帰りなさい」

 

「・・・いや、何故私の部屋にいる?」

 

「疑問。何か問題がありましたか?」

 

当たり前のように部屋にいるエムにフロンタルは思わずそう言ってしまうが、エムは首を傾げてそう答える。

 

「いや、問題はないが・・・」

 

なんだろう。セキュリティガバガバな気がする。

そう思いながらフロンタルは仮面を外し、いつも着ている赤い上着を脱いでワイシャツの姿になると、そのまま椅子に腰を降ろす。

 

「明日、ザラ派の残党狩りを行うがこの作戦には私も出る。相手は死に物狂いで止めにくるだろう。エム達には最前線での戦闘になるがやれるかね?」

 

「返答。問題ありません。修羅場にはもう慣れています」

 

「・・・そうか。なら期待させてもらおう」

 

そう言ってからフロンタルは椅子に肩を預け、目を閉じる。

そんなフロンタルにエムが口を開いた。

 

「質問。隊長、少し痩せましたか?」

 

普段は仮面越しで分からなかったが、仮面を外している今だと分かる。少し窶れているフロンタルにエムがそう問うと、フロンタルは目を閉じたまま答えた。

 

「最近は激務続きだったから仕方のないことだ。私は他の皆と違って政治家だけ、パイロットだけをやっている訳ではないのだからな。痩せるのも無理はない」

 

どっかの過労死王みたいにはなりたくないが、多分手遅れな気がしないでもない。

そう答えるフロンタルにエムはしばらくの間、考え込むような仕草をする。

そしてすっと立ち上がると、フロンタルの前まで歩みを進める。

 

「隊長」

 

「どうした」

 

そして、目を閉じたままのフロンタルにエムは包み込むように優しく抱きしめた。

 

「・・・!?エム?」

 

隊長の聞いたことのない驚きと戸惑いの声が部屋に響く。

だが、エムは手を止めずに言った。

 

「心配。最近の隊長は無茶ばかりしています。隊長が身体を壊して倒れでもしたら私達は心配で仕方ありません」

 

「・・・・・」

 

「隊長が私達を心配するのと同じように自分を大事にしてください」

 

「・・・ああ気をつけよう」

 

エムのその言葉にフロンタルは「言わせてしまったな」と考えていた。彼女達が心配するのも分かる。

自分でもこの激務は不味いと思わせるのだ。近くで見ている彼女達も心配するだろう。

 

だが、今は少しでも無茶をしなければならないのだ。エムの言葉に反省しつつも、フロンタルは彼女達に「すまない」と内心で謝るのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。