フロンタルに憑依した苦労人転生者のガンダムSEED 作:鉄血
リムジンの車内でクルーゼは大きなため息をつく。
「やれやれだよ。オーブにバカンスによる観光で来てみればこのような事になるとは予想もしていなかった」
「艦で来たのが不味かった。というより、今回の件については私に船を出してもらおうと考えていたお前が悪いだろう」
そもそも事の発端はコイツである。
オーブへと行くのに便がないからお前の飛行機を出してくれと言うからエアーズロック基地へと来てみればこの有様。正直な話、カガリを乗せていなかったら無視してた。
「とはいえ、助かった。こうしてオーブへと来ることが出来たのは幸運だ。空港を頼りにしていたら出発はかなり遅れていただろう」
「そもそも軍用艦を航空機代わりにするなと言う話だが?」
「乗せたのはそっちだろうに」
ギャフン。なーんも言い返せねぇ!
◇◇◇◇◇
夕方の街の郊外やトリトマ達と話していると、あっという間に目的地のホテルに到着した。
それは数十年前の最新技術を駆使したトロピカルなつくりに、時間が積み重なって、重厚さをみせる一流のホテルだった。
エントランスの広い空間の中央にココナッツの林が作られており、天井の明かり窓からは、夕方の太陽の光が、フロント・サイドを浮き立たせている。
「・・・スゲーですよ!隊長!私、こんなホテル、初めて来ました!」
「同意。何度かホテルに泊まった事はありますが、これほど豪華なホテルは見た事ありません」
「はー・・・やっぱりオーブって凄いねー」
うちの三人娘がはしゃいでる中、フロンタルは周辺を見渡しながらこのホテルを用意した係員に向けて言う。
「これはまた随分と豪勢なホテルを用意したものだ」
「セイラン様がアスハ代表を無事お送り致してくれた事と前回の非礼も詫びての事で用意されたホテルです。それに、貴方様の立場を考えればこのクラスのホテルを用意するのは当然の事かと」
「そうか。ならありがたく使わせてもらおう」
裏がありそうな雰囲気ではあるが、あり得なくはない対応だ。かくいう俺もプラントにアズニャンとか来たらそれなりのもてなしの準備をしている事なので、前回の非礼もとなればこのレベルのホテルを用意するのも頷ける。
とはいえ、慣れねえな。こう言うのは。
転生を四、五回繰り返してるが、こうした豪勢な部屋に泊まるのは片手で数えるほどしかない。
ぶっちゃけた話、今までは簡素な部屋に泊まるか屋根もない野宿ばっかしてた。特に漁村なんて廃村化した建物の中で十年間、寝泊まりしてたし。
「お部屋はもう皆様の分を用意してあります。客室の最上階、三十六階です」
「最上階の四十三階は何があるんでやがりますか?」
トリトマの質問にボーターの男は答えた。
「はい。レストランにバー、それにダンス・フロアもあります」
「はー・・・すっごいなあ・・・」
エルがそんな声を上げた。
エレベーターのドアが開くと、左側は窓になっている廊下だった。ホテルの廊下とは思えない豪華な作りで、一方が窓になっている。
「すげーフロアですね!隊長!」
「ああ。客室最上階だ。ほとんどが長期滞在用のスウィートルームだろう」
海とゆるやかな稜線、そしてオーブの街並みが見せる光景に歓声を上げながら、トリトマ達はボーターについていく。
この左の光景の右奥に、空港とガランシェールが停めてある基地がある筈だと思いながら、フロンタルも足を進める。
ボーターは、その廊下の突き当たり近くまで行き、隣り合わせの部屋のキーを、五人に渡してから、部屋にクルーゼのスーツケースを運び込んだ。
「・・・わあ!!」
トリトマが、年相応の声を上げるのも当然であった。正面のかなり広いリビング・ルームからは、岬と水平線がひらけて見えた。
メイン・ベッド・ルームは右。
左には、食堂と補助ベッド・ルームがあり、そちら側はオーブの街並みが夕日のうすボンヤリとした空気の中に、ひっそりと広がっている。
「大っきいベッドだーッ!!」
エルがベッドに飛び込む。彼女の身体はベッドに深く沈み込むと、エルはそのままだらしない顔で頬ずりを始める。
「柔らかいベッドに大っきい部屋。はー・・・幸せ」
「あまりはしゃぐのはやめなさい。それでも軍人かね?」
エルの奴、浮かれてやがる。
そう言うフロンタルに今度はエムが口を開いた。
「質問。隊長、部屋割りはどうしましょう。隊長の護衛役に誰がなるか決めないといけません」
エムのその言葉にバッ!とトリトマが手を上げた。
「なら、私が隊長と同じ部屋が良いです!」
「失笑。私が隊長の護衛をします」
誰がフロンタルと一緒の部屋になるか。そんな言い争いをしている二人にフロンタルは────
「何を言っている?お前達は三人同じ部屋だ。そもそもの話、年頃の娘が大人である私と同室は色々な意味で不味いだろう」
そう言うフロンタルに二人は────
「「・・・・は?」」
思考を停止させ、二人はまるで石のように動かなくなる。そしてそれを横で見ていたクルーゼは────
「フロンタル・・・貴様、そう言うところだぞ・・・」
そう呟くのだった。
フォビドゥン・ヴォーテクス
連合が開発したフォビドゥンブルーの後継機。
水中でこのモビルスーツから逃げる為にアビスが開発されたというくらいに、水中戦に特化したモビルスーツ。
機動力はあのゼ・ズールを圧倒するが、ステルス性では流石に負ける。
コイツとシャンブロがタッグを組んで海にいるせいでアークエンジェルはSEED時代のように容易に海上や海に潜れなくなり、オーブの戦艦類もただの数合わせ扱いになってしまった。