フロンタルに憑依した苦労人転生者のガンダムSEED 作:鉄血
「・・・・ここかね?」
「そう、みたいでやがりますね」
大型商業施設の外、少し歩いた細い通り沿いにある一軒の中華料理屋の入口に設置されたメニュー看板を見て、トリトマは顔を引き攣らせる。
真紅。そう言うに相応しいソレに冷や汗が流れた。
「辞めておくかね?」
フロンタルが気遣いを向けると、トリトマはすぐに覚悟を決めた表情になり、フロンタルに言った。
「だ、大丈夫です!」
そう言って、トリトマは店に入っていく。
完全に負けず嫌いな部分が出ているトリトマに、フロンタルはこれは何を言っても駄目だと諦めて、彼女の後に続いて店に入った。
「いらっしゃいませ」
店員の無駄に良い声と共に、強烈な刺激臭が目と鼻を刺激した。先に入っていったトリトマが涙目になっている。
「何名様ですか?」
「ふ、二人です」
「では、此方のカウンターへどうぞ」
店員に案内され、そのまま二人は並びの順で席に着く。
フロンタルが左隣のトリトマをチラリと見下ろすと、トリトマが涙目で鼻を押さえていた。
「・・・大丈夫か?」
「・・・だ、大丈夫です」
威勢が無くなってらぁ・・・。
味覚が無くなってからはギルバート達と店に行くとき、激辛料理を頼んでいる自分は慣れているが、辛いものが大丈夫と言っていた彼女でも、この刺激臭は辛いらしい。
押し殺したような声で、彼女はメニューに手を伸ばす。
そして───
「・・・・あの」
「む?」
「・・・辛さ控えめとか、ないんです?」
そう言うトリトマにフロンタルは彼女が手にしているメニューを覗き見る。
確かに辛さをどれくらいにするかの表示はあるが、控えめという言葉はどこにもない。
「・・・ないようだな」
その言葉を聞いてか、表情に焦りが見え始める。こりゃ、トリトマにはちょっとキツイか。
「私はこの一番人気と書かれた"麻婆ラーメン"にするとしよう。辛さもスタンダードなもののようだ」
「そ、そうですよね!やっぱりそれが気になりますよね!」
せめてもとフロンタルは助け舟を出すと、トリトマもすかさずそれに乗った。
「ご注文は?」
店員が伝票を持ってそう聞いてくる。
「一番人気の"麻婆ラーメン"を二つ。辛さはスタンダードで頼む」
「承った」
ん?どっかで聞いたことある声だぞ?
やたらと渋いバリトンボイスの男性店員が厨房に入っていくのを横目に、トリトマの方を見る。
「・・・・・・」
目が死んでた。
トリトマは死んだ目で机を見ていたからか、気付いていないようだったが、エル達やルナマリア達が店に入ってきた。
自分達の少し離れた場所に座る彼等を気付かないフリをしつつ、料理を待つこと十数分───
「お待たせした。存分に味わうといい」
届いたソレに目を落とす。
ソレが放つ刺激臭にトリトマが一瞬で涙目になり、身を仰け反らせた。
・・・・赤い。とてつもなく赤い・・・マジで赤い・・・。
メニュー写真より赤いドロッとしたスープに満たされた見た目のインパクトに目が沁みる。
この時点で軽くむせそうになるトリトマを余所に、フロンタルは箸を手に取った。
「では、麺が伸びない内にいただくとしよう」
フロンタルは躊躇いなくその劇物を口にする。
「ふむ、これでスタンダードか。これは中々に・・・」
むっちゃ辛いコレ。
マジですか?と顔をするトリトマはフロンタルと劇物を交互に見た後、いただきますと言って箸を手に取り、恐る恐る麺を啜った。
「・・・・・・・」
麺を咀嚼していた口が止まる。
目を見開いたまま、全身を強張らせ、辛さによるものか大量の汗をかいてブルブルと震えていた。
あ、ダメだこれ。これ、完全にダメなヤツだわ。
多分俺がどう言っても、彼女は強がって大丈夫だと言うことだろう。
「・・・・・いたぃですよぉ」
トリトマの泣き言が聞こえてきた。
哀れだと思いつつ、フロンタルは麻婆ラーメンと一緒に出された水を飲む。
「・・・・ッ!?」
そして口の中に広がる辛さに思わずむせそうになった。
これ、水じゃねえ!!めっちゃ辛ぇ!!麻婆ラーメンで思ったけど絶対これ作ったの某神父だろ!!
トリトマにこれは水じゃないと言おうとしたが───
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!?」
───遅かった。
店内にトリトマの無音の絶叫が響き渡った。
◇◇◇◇◇
あと、これは飯を食べ終わった後の話だが・・・店内が殺人現場に変わっていたとだけ言っておく。
機体解説
ガンダムデルタカイ 陸戦仕様
プロト・フィン・ファンネルが使えない重力化での戦闘をメインに改修した機体。
デルタカイの中身こそは変わっていないが、ビームライフルはレールガン装備のものに換装され、宇宙用では盾にメガ・マシンキャノンを装備していたが、地上では炸裂ボルトに変えられている。
元々は追加装甲をパージする為のものだが、ソレを武装に改修したもの。
いくらフェイズシフト装甲でも、流石に炸裂ボルトの衝撃に内部は耐えられないらしく、パイロットを殺すだけの武器など言われている。