フロンタルに憑依した苦労人転生者のガンダムSEED 作:鉄血
フロンタル達は小さな慰霊碑を後にし、舗装された道を歩いていた。
そんな中、トリトマはフロンタルに向けて言った。
「・・・隊長。あの二人を捕縛しなくて本当にいいんでやがりますか?」
「構わん。ここで彼女等を捕まえた所で現状、ただの爆弾でしかない彼女等をどう扱うという?」
「思考。そう言われると扱いに困ります」
「手元にいつ起爆するか分からない爆弾を置いておきたくないってことっすか?」
「それもある。だが、私が気にしているのは旧クライン派の連中だ。彼等はラクス・クラインに対し、一種の崇拝じみた心情を抱いている。彼等に私がクライン嬢を捕縛したと知られたら暴動に近い抗議が起こるだろう」
ラクス自身のカリスマもあるのだろうが、彼女のアコードとしての洗脳にも近い精神干渉能力は恐ろしいものがある。
ゾルタンの言いたい事も分かるわ。
人の頭の中に勝手に入り込むよりなんとやらだ。
「だから現状放置と。報告書にはどうします?」
「書かなくていい。デュランダルにもすぐに伝える予定だ」
「え?それって・・・」
トリトマは歩いていて気づいたのだろう。
自分達が停泊中のミネルバへと向かっていることに。
「この後、私は昨日の会議で話あった事をデュランダルに報告する。君達はそれまで船で好きにしているといい」
そう言われ、トリトマは露骨に嫌な顔をした。
「・・・またクラディアの相手をしなくちゃいけねーんでやがりますか」
「いや、それについては大丈夫だろう」
「・・・?なんでです?」
首を傾げる彼女にフロンタルは言った。
「・・・ただの勘だ」
本当はあの中華料理屋でルナマリア達と一緒にくたばっていただなんて彼女達の名誉にかけて言えない。
◇◇◇◇◇
「・・・フロンタル司令官。この船に来られるのは明日だと議長から聞いていますが」
「突然の来訪に申し訳ない。グラディス艦長。今日は私用ついでに議長に急用の話をしなければならなかったのでね。こうして訪れた次第だ」
冷静を装っているグラディス艦長を横にトリトマが言った。
「申し訳ねーです、艦長さん。本当は明日来る予定だったんですが、近くを通ったからついでだと言って来ちゃいました」
眉間を押さえるタリアの横をフロンタルは通り過ぎる。
「デュランダルは他の議員達と進歩のないやりとりをしているのだろう?今回の話はプラントや連合も関わる重要な話だ。すぐに席を外させる」
「プラントと連合も関わる重要の話?それはどう言うことでしょうか?」
「それは君の知る事ではない。失礼させてもらう」
そう言って船の中へと入っていくフロンタルにタリアは胃が痛くなるのだった。
◇◇◇◇◇
「フロンタル?今日は来ないはずではなかったのか?」
そう言うデュランダルにフロンタルは口を開いた。
「私用のついでに来ただけだ。本題に入る前に、アレを調べてくれたか?」
「ああ。とは言っても全部は無理だった。それにデータが紛失してしまったものもある」
そう言ってデュランダルはパソコンを取り出し、ウィンドウを 開けた。
「アコードは元々、私とアウラが今の世界を公平で平和な世界へと変える為に作り出された存在だ。すべてにおいて卓越した能力を持ち、他者と完璧に融和できる個体、新しい世界にふさわしい子ども達として。だが、その実験で完成した七人ができる前に数え切れないほどの失敗をした」
「・・・その七人が出来る際に何人処分した?」
その言葉にデュランダルは悲痛そうな顔で首を振る。
「正確な人数は分からない。私は君と出会ってからその事実を知ったのだ。その頃に処分された子供は恐らく三桁・・・いや、四桁はいくだろう」
「そうなると・・・アコード達の名前は完成品にだけつけられたのか」
「ああ。それまでは番号やローマ字で呼ばれていた。中にはアコードよりも優秀な能力を持つ者いた筈だ」
デュランダルの言葉にフロンタルは疑念を抱く。
「アコードより優秀な能力を持つ子供がいたのなら何故処分された?」
「人の心が読めなかったり、モノを感知する能力が低かったりする者。後は、感情が表に出ない者もいた」
「つまり、アコードに必要な能力を持ち合わせていなかったからか」
その問いにデュランダルは頷いた。
「ああ。アコードになり得た候補は五人いた。見るかね?」
「確認させてもらう」
そう言ってフロンタルはデュランダルのパソコンの画面を覗き込むと、そこに被験体の番号が並べられていた。
A015 感知する能力が著しく低い為、廃棄。
K049 人の内心を読み取る事が出来ない為、廃棄
N022 他の被験体とのテレパシーが感知出来ない為、廃棄
S006 肉体面や精神面が他の被験体よりも脆弱。よって廃棄
M041 感情が表に出ず、他の被験体との協調性や融和性がない。 廃棄の前日にM041は脱走。生死不明。
『挨拶。M041──エムです』
エム。レオントッツォ隊──副隊長。エムの事だった。