フロンタルに憑依した苦労人転生者のガンダムSEED 作:鉄血
プロローグ
目が覚めたらフル・フロンタルだった。
何故、自分が赤い彗星の再来になっているのかは分からない。が、状況は把握している。
どうやらバナージ・リンクスとの最終決戦前らしい。
よく転生してやり直し───なんて話が二次小説にはあるが、私は自分が生き残りたいからという理由で物語を変えたくはない。
完成された物語はそれで完成されているのだ。
無粋な改変など不要。
なら、私は自分という人間ではなく、フル・フロンタルとしてバナージ・リンクスと対立しよう。
彼のいう可能性の光を信じて。
◇◇◇◇
「君に───託す。為すべきと思ったことを」
覚醒したユニコーンガンダムと彼から伝わってきた温かな熱が妙に心地良い。
二度目の生は本当に短かった。
だが後悔はない。フル・フロンタルの作り物の器にシャアの怨念と僅かな希望が宿り、そして何故か自分も追加で入ってしまった。
本当はフロンタルもバナージとの戦いは本意ではなかった。最期の最後までバナージとミネバの説得を諦めていなかったのを自分は知っている。
だからこそ、ネオジオングのサイコシャードでガンダムの武器を破壊したのも最後までバナージ達と対話をしようという思いから来ていたのだ。
まあ、彼も苦労人だった訳だ。
皆の無理難題に何とか応えようとし、敵はなるべく殺したくはない。そして自分の中に入ってしまった思いを遂げてあげたい。
とにかくその願いを全部叶えようとし、意見がぶつかったら最後まで話し合い、そして意見がすれ違い、負けたら自分は静かに身を引く。
まあ、フル・フロンタルはシャアとは違い良い人だった訳だ。
だが、これでもう終わりだ。
ラプラスの箱は開かれた。世界は変わることはないが、それでも希望という可能性を見出すだろう。
まあ、宇宙世紀のその先を知っている自分からしてみれば不安でしかないのだが。
(バナージ君。君の選んだ可能性に私は全てを委ねよう。そして次、会うときはどうか聞かせて欲しい)
君が選んだ選択は間違いでなかったということを。
意識が闇に沈んでいく。
そして───彼の意識は途絶えた。
◇◇◇◇◇
微睡みの中、“フロンタル”は目を覚ます。
「・・・・ッ、ここは───」
見慣れない部屋だ。何処かの一般人家庭の部屋のようだが、自分がどうして此処にいるのかわからない。
「───まさか」
また転生か?嘘だろおい?しかもこの声は───
「鏡はどこだ」
彼はそう言ってベッドから立ち上がり、画面が消えたテレビを見た。そしてテレビに映る自分を見て、唖然とする。
「な───」
フル・フロンタルのままだった。
マジかよオイ。なに?今度はフロンタルごと転生しちゃったの?てか、この世界はどこなのかなー?またガンダム世界だったらアレなんだけど。
そう思いながら彼はテレビをつける。
そしてテレビには“ジン”が映っていた。
「・・・・・・」
彼は無言でテレビの中継を変えていく。だが、テレビの内容はどれもザフトや地球連合、オーブのことばかり。
そしてこの世界が何なのか彼は悟った。
コズミック・イラじゃねえか。馬鹿野郎。
よりにもよってコズミック・イラか。ガンダムシリーズでも宇宙世紀よりも世紀末のコズミック・イラに転生したということに彼は内心嘆いた。