フロンタルに憑依した苦労人転生者のガンダムSEED   作:鉄血

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連続投稿じゃあ!!


第六十二話 原石

「シーゲル様。アイリーン・カナーバ様より通信です」

 

「つないでくれ」

 

「畏まりました」

 

キラが目を覚まして数日たった日、クライン邸に一通の通信があった。

その連絡先を聞いたシーゲルは執事に通信を繋げるように促すと、すぐにアイリーン・カナーバに繋がった。

 

「クラインだ」

 

『シーゲル・クライン!我々はザラに欺かれた!』

 

「カナーバ、連絡早々にどうした?何があった?」

 

ひっ迫したアイリーンのその表情にシーゲルは険しい顔を作りながらそう言うと、アイリーンはシーゲルの問いに答える。

 

『発動されたスピットブレイクの目標はパナマではない!地球連合の本部があるアラスカだ!』

 

「なんだと!?それは本当なのか!?」

 

「・・・・・ッ!?」

 

アイリーンとシーゲルの会話のやり取りを聞いたキラが動揺でガチャンッ!と紅茶が入ったカップを落とし、胸元を強く握りしめる。

 

「ぁぁ・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ぅ・・・」

 

キラの心拍はドクドクと上昇し、吐き気とイヤな冷や汗が頬を流れ落ちていく。

 

「キラ・・・」

 

ラクスが心配そうにキラの背中に手を置いて優しくさするが、それでもその動悸は収まりそうになかった。

そして再びシーゲルとアイリーンの切迫した声が部屋に響き渡る。

 

『彼は一息に地球軍本部を壊滅させるつもりなのだ!評議会はそんなことを承認していない!』

 

「フロンタルは!フロンタルはこの事を知っているのか!」

 

『ああ。あの男は最初からこうなる事を予測していた!二週間前、フロンタルがザフト軍総司令官の座から引きずり降ろされた時、連合の本部があるアラスカは不穏な動きがあるから止めておいた方が良いと言っていたのは、あの時からザラがアラスカを攻撃するだろうと予測していたからあらかじめ釘を刺しておいたのだろう』

 

「ええい!フロンタルは何故その事を我々に言わなかった!」

 

『言ったとしても戯言だと軽くあしらわれるのを分かっていたからだろう。それに問題はそれだけではない』

 

アイリーンはシーゲルに問題である次の話題に入る。

 

『フロンタルは今のアラスカに不穏な動きがあるとあの時に言っていた。もし、その言葉が戯言ではなく本当の事だとしたら・・・』

 

「罠の可能性があるということか!?」

 

その言葉を聞いたキラは顔を上げる。

そして脳裏に思いうかべてしまった。

アラスカへと向かったアークエンジェル。

 

サイ、ミリアリア、マリューさん、フラガ大尉・・・皆彼処にいる。

早く───行かないと。

 

「キラ?」

 

「・・・行かないと」

 

「どちらへ行かれますの?」

 

「地球に。戻らなきゃ・・・でないと皆が・・・」

 

「貴方お一人戻った所で、この戦いは終わりませんわ。それでも行かれますの?」

 

その問いにキラは頷いた。

 

「何も出来ないって逃げて、何もしなかったら、もっと何も出来ない。何も変わらない。何も終わらないから」

 

「また、ザフトと戦われるのですか?」

 

ラクスのその問いにキラは首を横に振る。

 

「では地球軍と?」

 

その問いにも首を横に振る。

そしてキラはラクスに言った。

 

「まだ、僕は何と戦わなきゃならないのか分からない。けど、今、僕がやりたい事は皆を守りたい・・・それだけだから」

 

その言葉にラクスは少し微笑みながら答えた。

 

「解りました。キラ、此方へ」

 

「・・・・ラクス?」

 

自分の手を引っ張る彼女にキラは戸惑うような声を上げると、ラクスは戸惑うキラに微笑みを返す。

 

「貴方の想いに私は答えます」

 

そして執事にラクスは言う。

 

「あちらに連絡を。ラクス・クラインは平和の歌を歌います。と」

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「こちらへ。さあ、どうぞ」

 

重い金属製の扉が開かれた先───

そこに一機のモビルスーツが鎮座していた。

 

「これは、ガンダム・・・」

 

キラの無意識で溢れたその言葉にラクスはクスリと笑った。

 

「ちょっと違いますわね。これはZGMF-X10Aフリーダムです。でも・・・ガンダムの方が強そうでいいですわね」

 

そう言ってラクスはフリーダムを見る。

 

「奪取した地球軍のモビルスーツの性能をも取り込み、ザラ新議長の、開発されたザフト軍の最新鋭の機体だそうですわ」

 

「これを、何故僕に?」

 

そう問うキラにラクスはキラを見る。

 

「今の貴方には必要な力と思いましたの」

 

「想いだけでも・・・・力だけでも駄目なのです。だから・・・キラの願いに、行きたいと望む場所に、これは不要ですか?」

 

(想いだけでも・・・力だけでも・・・)

 

想いだけでは夢は叶えられない。力だけでも夢が無ければ只の暴力装置だけでしかない。

あの人・・・フル・フロンタルも本当に世界を平和にしたくて今もこの状況で戦っている。

そして自分に今必要な力をくれた彼女にキラは言った。

 

「君は・・・誰?」

 

「私はラクス・クラインですわ。キラ・ヤマト」

 

そんな彼の問いにラクスは小さく微笑みを返す。

 

「ありがとう。行ってくる」

 

「ええ。では、行ってらっしゃいませ」

 

そう言って手を振る彼女を見送ってキラはフリーダムを起動させた。

 

「Nジャマーキャンセラー?凄い!ストライクの4倍以上のパワーがある!」

 

「おいなんだ? 」

 

「フリーダムが…動いている?」

 

「エアロックを止めろ!本部へ通報!スクランブルだ! 」

 

 

「誰だ貴様!止まれ!」

 

整備士が緊急発進をしようとするフリーダムを見てそう叫ぶが、その静止の声を振り切ってキラはフリーダムと共に宇宙へと飛び立った。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

同刻───第六ゲートにて

 

では、モビルスーツの起動をお願いします。

 

「了解です。シナンジュ、起動します」

 

その言葉と同時、彼女はシナンジュ・スタインのメインシステムを全て起動させる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

───スロールより MSN-06Sへ。インテンション・オートマチック起動開始。───3、2、1。

 

「───起動。インテンション・オートマチックシステムに異常なし。問題ありません」

 

『パイロットの容態は?』

 

『依然、安定しています』

 

『分かりました。トリトマさん、シナンジュの調整は完了しました。後はいつでも発進出来ます。ですがいくつか注意事項があります』

 

「なんですか?」

 

そう返事を返す彼女にキャプテンは言った。

 

『いいですかトリトマさん。シナンジュは本来、インテンション・オートマチックシステムやムーバブルフレームを採用した試作モビルスーツです。機体の追従性や機動力は現状、どのモビルスーツよりも圧倒的性能を持っていますが、核エンジンの出力の大半を推力に振っている関係上、殺人的な加速力を持っています。それに思考操作出来ると言ってもそれはあくまで隊長に合わせたシステムです。貴女にどれほどの負荷がかかるか分かりませんので、身の危険を感じたらすぐに撤退してください』

 

「了解ですキャプテンさん。私も気をつけます」

 

そう言ってトリトマはボール状のレバーを握る。

アームレイカーと呼ばれる未知のインターフェイスだが、昔から使っていたようなという感じと言えばいいだろうか?何故か彼女の手によく馴染んでいた。

そんな懐かしい既知感を感じながらトリトマは前を見た。

もうすぐ発進シークエンスが流れるだろう。

新しいモビルスーツに乗れて胸の内がワクワクする。

そんな興奮を隠しきれない彼女に”不思議な事が起こった”

 

”優しい青と黄色の光が彼女の目の前を通り過ぎたのだ”。

 

「貴方は───」

 

トリトマは無意識にそう呟くと同時───

 

『シナンジュ、発進どうぞ!』

 

急な発進シークエンスにトリトマはハッと我に返る。

 

「えっ!?あっ、シナンジュ、トリトマ出ます!」

 

慌ててトリトマがフットペダルを踏みこんだ瞬間───シナンジュの殺人的な加速力にトリトマは一瞬、意識を持っていかれそうになった。

 

「ぐッ!?・・・・ァ!?」

 

(なんですか!?この加速力!?ジャスティスやフリーダムよりも身体にかかるG圧が全然違うじゃねーですか!?)

 

本来、シナンジュは宇宙世紀でモビルスーツの限界性能を引き出す為に設計、開発された試作モビルスーツであり、無人機でのテスト運用をされていたと言われている。

そしてそのあまりにもピーキー過ぎる機体の特性から強化人間、もしくは特別なパイロットスーツを装着したニュータイプパイロットでないと碌に扱う事さえ出来ないとされている代物である。

そして今、トリトマが使用しているパイロットスーツはザフトで支給されている一般的な物。

シナンジュ用に作られたパイロットスーツでないが故に、その殺人的な加速力から生み出されるG圧を彼女はもろに受ける羽目になってしまった。

 

(これは調節を間違えると先に私の身体が保たねーです。隊長はなんでこんな馬鹿げた機体に乗ろうとしていたんですか!!)

 

苦悶の表情を作りながら彼女はシナンジュでフリーダムの後を追うのだった。





【挿絵表示】


チェロを持つトリトマ

なお本人は楽器を全く触ったことがないのでチェロの裏に小型の音声機器をつけてエア演奏をしていた
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