フロンタルに憑依した苦労人転生者のガンダムSEED   作:鉄血

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フロンタル プロフィール

実はフロンタルさん、現時点でもう強化人間

だからこそあんなワーカーホリック染みた行動力してる

なお、そんな強化人間状態でも過労でぶっ倒れることはある


第六十三話

ラクスからフリーダムを受け取ったキラは地球のアラスカにいるであろうアークエンジェルの救出の為、いくつもの追手を振り払って地球に一秒でも早くたどり着けるよう駆け抜けていた。

追手はこれまでに二度退けている。

もうこれ以上の時間や武装の消耗することは出来ない。

焦りと緊張で神経を張り詰めるキラが駆るフリーダムの前方を一筋の熱線が横切った。

 

「ッ!?」

 

一瞬、足を止めたフリーダムに向けて再び質量を帯びた熱線が遠距離から放たれる。

 

「艦砲射撃!?」

 

正確に放たれたそのビームを見て普通のビームライフルから放たれる威力ではないと察したキラはそう判断する。が、フリーダムのレーダーに映し出されたのは高速接近する機影が一つだけ。しかもその速度はフリーダムより数段速い。

つまり先の狙撃は艦砲射撃なのではなく、モビルスーツによるものだとキラは驚愕した。

そしてそんなキラの前にそのモビルスーツが姿を現した。

自身が駆るフリーダムより一回り巨大な体躯に白と黒の装甲、そして袖や胸部に流麗な装飾が描かれている。そして丸みを帯びた流線的な頭部からは真紅のツインアイがフリーダムの姿を捉えていた。

そのモビルスーツはフリーダムを視界に入れた瞬間、手にした大型ビームライフルから熱線を放った。

山吹色の熱線はフリーダムの盾をギリギリで掠め、虚空の彼方へと消えていく。

そしてそのモビルスーツは腕からビームサーベルを引き抜くと、そのままフリーダム目掛けて振りかぶる。

 

「くッ!」

 

キラはその攻撃を咄嗟に回避し、フリーダムの背部のバインダーに格納されたバラエーナプラズマ収束ビーム砲をそのモビルスーツに向けて発射するが、そのビーム砲の僅かな隙間をすり抜けるようにして回避してきた。

 

「ッ!?」

 

その自殺行為染みた回避行動にキラは思わずその手を止めてしまう。そして動きを止めたフリーダムを見てか、目の前の正体不明のモビルスーツから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

『お久しぶりですキラさん。砂漠で戦った時以来ですか』

 

「君は!?」

 

トリトマ・レオントッツォ。

 

砂漠でキラとムウが二人がかりで戦って一度も攻撃を当てることが出来なかった少女。

そんな彼女にキラは言った。

 

「トリトマさん!僕を行かせてくれ!行かないとアークエンジェルの皆が!!」

 

必死な声でキラは彼女を説得しようと試みる。

が、そんなキラに対してトリトマは酷く冷徹だった。

 

『貴方にはわりーとは思いますが今すぐ機体と一緒に戻ってくれねーですか?今ならまだ間に合うと思いますので。貴方とラクスさんがその機体を持ち出したせいで隊長が割食ってやがるんですよ』

 

彼女はそう言ってつば競り合っていた状態からフリーダムを弾き飛ばし、再度ビームサーベルを振るった。

彼女らしくない感情に任せた戦い方にキラは動揺を隠せない。

そんなキラを知ってか知らずかトリトマは言う。

 

『貴方がその機体を持ち出したことは遅かれ早かれバレてしまいます。そうなったら隊長の立場どころか世界情勢が滅茶苦茶になることは予想してやがりますか?』

 

そう言うトリトマはキラを見る。

無感情で氷のように冷たい目。

 

『あの人といい、もうこれ以上、隊長に迷惑をかけねーでください。あの人は口に絶対出さねーだけでもう限界なんですよ』

 

キラには彼女がどれだけフロンタルを心配しているのか先の言葉で感じられる。

 

『これが最後の警告です。機体と一緒に戻ってくれねーですか』

 

これが彼女なりの最後の優しさなのだろう。

戻ってくれと言う彼女にキラの出した答えは───

 

「・・・・ごめん。君の気持ちも分かるけれど・・・僕にも守りたい人達がいるんだ」

 

その言葉に彼女の返した言葉は沈黙だった。

そして数秒した後、彼女の口から言葉が漏れる。

 

『・・・そうですか。なら・・・ここで貴方を“撃墜“します』

 

その言葉を皮切りに二人の譲れない戦いが始まった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

フリーダムから一斉に放たれるビームと実弾が交わる弾幕の中にトリトマが駆るシナンジュ・スタインは一切減速することなく、その身を踊り出す。

急加速による上下左右の高速移動。シナンジュというモビルスーツの運動性と追従性を合わせた機動力を駆使し、正確に放たれる弾幕の雨の中をすり抜け、盾を使って受け流し、最短距離でフリーダムに接近した。

一瞬でフリーダムの懐に飛び込んだシナンジュの腕部からトンファーのように展開されたビームサーベルをフリーダム目掛けて振り払うが、フリーダムは急上昇によってその振り払いを回避する。

たった数秒の攻防。

二人が見せたのはたったそれだけだが、その戦闘で互いがどれだけの技量を持って戦闘をしているのか素人でも見てわかるほどのものだ。

だが、パイロットの負担を考えれば劣勢なのはトリトマの方だった。

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ケホッ!」

 

たった数秒の動きだけで彼女の額や頬には大粒の汗が流れ落ちる。

彼女の化け物染みた反応速度にモビルスーツはついてきている。だが、彼女自身の反応速度にモビルスーツがついてきているということはそれだけのGが彼女を襲っているのだ。

そしてそのGに彼女の肉体がついていけていない。

 

「・・・正面から突破するのは出来なくはねーですが、その前に身体の方が持ちませんね」

 

凄まじいG圧で悲鳴を上げている自分の身体に苦笑いしながらトリトマは再びフリーダムを見る。

フリーダムの正面からの火力は凄まじいものだ。

ならそんなフリーダムをどう攻めるか?

彼女はその一瞬でフリーダムの攻略法を頭の中で組み上げた。

 

「・・・・ッ!」

 

トリトマはハイ・ビームライフルでフリーダ厶の背部バインダーに狙いを定め、トリガーを引く。

そんなシナンジュが放つ熱線をフリーダムは機体の位置をズラして射線を回避し、反撃のビームライフルを返してきた。

 

きた───ッ!

 

トリトマはその反撃のビームに目掛けて背部に装着されたプロペラントタンクを切り離した。

そして撃ち抜かれたプロペラントタンクは炎を撒き散らしながら一気に爆発し、フリーダムの視界を光で覆った。

 

「当たっていない!」

 

切り離したプロペラントタンクに直撃したのを直前まで見ていたキラはそう叫びながら辺りを見渡す。

爆発があった周辺にはシナンジュの”シールドとバズーカだけ”であり、トリトマが駆るシナンジュの姿は何処にもなかった。

 

「何処にッ!?」

 

行ったと叫ぼうとした瞬間、真横から山吹色の光が見えた。

 

「右!?」

 

一コンマの判断でキラはシナンジュから放たれた必殺の一撃を機体を横に逸らすことで間一髪回避し、 そちらへとビームライフルを向ける。

が、その時───

 

フリーダムの左斜め下から爆風と凄まじい衝撃が襲った。

 

「うわあぁぁぁぁっ!?」

 

その予想外からの射撃にキラは対応出来なかった。

いくらフェイズシフト装甲で守られているとはいえ、爆発によって機体がふっ飛ばされれば、激しい衝撃がコクピットを襲う。

そんな中でもキラは狙撃された場所に視線を向けた。その射線の先には捨てられた筈のバズーカが煙を上げている。

 

暴発!?

 

最初はそう考えた。だが、それにしてはあまりにもタイミングが良過ぎる。

目を凝らして見ると、バズーカにはよく見なければ分からない程の細長いワイヤーが繋がれていた。

 

さっきの一瞬でトラップを張ったのか!?

 

あれがビームだったら確実に死んでいた。戦慄するキラに対してトリトマは違った。

 

「チッ!またあの装甲に防がれた!」

 

苛立ちを隠さず、トリトマは舌打ちをする。

かつてフロンタルが彼女にした置きバズーカ。タイミングは完璧であったし、ちゃんと命中もした。

だが、フェイズシフト装甲で致命傷を与えることができなかった。

 

「これ以上の戦闘は私の身体が保たねーですか」

 

そう呟くと同時、口いっぱいに鉄臭い味が広がる。

さっきの一瞬で行った急加速でどうやら身体の何処かをやったらしい。

トリトマはそんな状態になりながらも、キラに通信を繋いだ。

 

「わりーですがここでタイムアップみてーですので私は撤退します。追ってくるならどうぞご自由に。追って来たら来たで別に構いやしねーですが、貴方にそんなメリットはねーでしょう?」

 

フロンタルからも無理して追う必要はないと言われているので此処で引き上げる。タイミングとしては悪くはない。

まあ、その辺りは相手が聞くかどうかだが。

そんなトリトマにキラの方からは辛そうな声が返ってきた。

 

『・・・ごめん。あの人に助けられてその恩に何度も仇で返してるって事は分かってる。けど、僕にも守りたいものがあるから』

 

「・・・・そうですか」

 

その言葉にトリトマは短く返事を返した後、キラに言う。

 

「では私はこれでしつれーしますよ。仲間、無事だと良いですね」

 

そう言ってトリトマは半ば強引に通信を切ってその宙域から去っていった。

後にはただ一機・・・フリーダムがその場に残された後、そのフリーダムもその宙域から離脱していった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

『無理をさせて済まなかった。トリトマ。キャプテンから全て話を聞いた。怪我をしたのだろう?帰ったらしっかりと検査をしておきなさい』

 

宙域から離脱したトリトマはシナンジュの中でフロンタルに先のフリーダムとの戦闘で取り逃がしたと報告をしていた。

任務失敗の報告にもかかわらず、フロンタルから投げられた言葉は叱責でも罵倒でもなく、ただただ自分の身を案じる言葉と謝罪だった。

 

「平気ですよ。これくらい」

 

そう言うが、フロンタルは一切引いてもらえない。

そんなフロンタルにトリトマはとうとう折れ、帰ったら検査をしっかり受けることを了承した。

だが、そんなことよりも重要なことはある。

 

「隊長・・・議員の席は・・・どうなったんですか?」

 

その質問にフロンタルはただ

 

『気にしなくていい』

 

そう言って答えてくれなかった。

いくつかの会話を済ませてからトリトマは通信を切る。

そして一人、シナンジュのコクピットの中で小さくうずくまる。

 

「何が気にしなくていいでやがりますか・・・一番辛いのは隊長の方でしょう・・・!」

 

何もかも一人で抱え込もうとする優しくてそれでいて悪い人。自分以外誰もいないコクピットの中、彼女は一人で泣き続けるのだった。





【挿絵表示】


お料理中なトリトマちゃん

なお、見た目は良いが飯の味はあのゲテモノ好きのフロンタルが顔を顰めるほど不味い

トリトマ自身も不味いと言っている当たり相当であるが
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