フロンタルに憑依した苦労人転生者のガンダムSEED   作:鉄血

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第六十九話

「それでも・・・君はソレを否と言うのかな?答えを聞かせてもらおう。ラクス・クライン」

 

そう言ってフロンタルはラクスを見る。

フロンタルの目的は多少の犠牲を黙認し、国同士が膠着状態に持ち込む事によって得られる謂わば次の戦争に向けての休戦状態に持ち込むと言った仮初めで得られる平和だ。

要するに先を見ず、現状を解消する為の一時的な処置だと考えていい。

それは先の未来の平和を望むラクスにとっては否定しなければならないものだ。が、ラクスが知っている目の前に立つ男は更に先を見ている。

だからこそ、ラクスは返答を返す前にフロンタルに言った。

 

「その前に一つ聞きたい事があります。フル・フロンタル」

 

「・・・・なにかな?」

 

そう聞き返すフロンタルにラクスは言った。

 

「貴方の目的は何ですか?同じ平和を望む者ならば貴方は争いを許容しない筈。なら何故、貴方は西暦の時代である弱者と強者が入れ替わり続ける時代を作ろうなどと思い至ったのですか?」

 

ラクスはフロンタルが考えている“先“の事をどうしても聞きたかった。

指導者として立つ者がこの先、どうやって未来を変えていこうとするのかを。

そんなラクスの内心に対し、フロンタルが返したのは一瞬の沈黙。

だがその沈黙も、フロンタルが発する言葉で消え失せた。

 

「・・・・西暦の時代の再現はあくまでもただの時間稼ぎでしかない。今、生きている人々は安寧を求めている人は多くいる。が、それと同時に相手に復讐を求める人間も同様だ。なら、彼等の代弁を聞いた上で平和を目指す為の土台を作るには時間がない。ならば時間稼ぎとして弱者と強者が入れ替わる時代をつくり、そしてその時間を使い、各国家がどうやって世界を平和にしていくかを手探りで選び取る。君のように現状が気に食わないからという感情的な理由でクーデターやテロを引き起こすのはやめた方がいい。仮にそれが全て上手くいったとしても、民衆からは不満が溜まり、それが爆発すればまた戦争の始まりだ。君はそんな彼等の事も考えているかね?」

 

フロンタルのその内容には説得力があった。

ラクスは血で血を洗う未来を引き起こさない為にクーデターを起こす事を決めた。

だが、それはあくまで自分やクライン派の意思だ。

フロンタルは過激派の意見も聞きつつ、世界を平和にしようとしている。謂わば人々が求める物に可能な限り応えようとしているのだ。

血のバレンタイン────あの事件で沢山の人が死んだ。

そしてそれが許せない人がいてこの戦争が始まった。

誰も彼もが善人ではない。

それを知って、聞いて、受け入れる。ラクスはフロンタルの事を人々の願いを聞き受ける“器”にしか見えなかった。

 

自分を殺し、人々の願いを聞いてそして実行する。

自らは人には可能性があると謳いながら、その人によって自らの可能性を殺した男。

人々が求めた“理想の指導者”。

これがジョージ・グレンが言った“人類を導く調整者”の在り方なのだとしたら怪物としか言いようがない。

何も言えない───何も返せない彼女に対し、フロンタルは内心で嘆息をついていた。

 

こんなもんか。

あのラクス・クラインも現実を突きつけたら何も言い返せない。

劇場版の時もそうだったが、彼女は現実を知らなさすぎる。

つか、理想だけでも力だけでも駄目って言った彼女が現実や人々がどう思っているのか考えてみろって言っただけでコレは駄目だろ。

もうちょっとさ、バナージ君みたいに若気の至りを見せてくれよ。

 

決着ついたかなと考えるフロンタルに耳元のインカムからトリトマの声が響いた。

 

『隊長、今大丈夫でやがりますか?』

 

「どうした?」

 

何か緊急事態の時は呼ぶようにと言ったが、何かあったのだろうか? そう言うフロンタルにトリトマは言った。

 

『司法局の人がホワイト・シンフォニーに侵入しました。数は十人以上います。今はエルさんがハッキングして妨害してますが、もう少ししたらそちらにくるかと』

 

どうやら第二波が来たようだ。

司法局も大変だねぇ。パトリックが議長になってから駆り出されまくっているじゃん。

 

「了解した。すぐに戻る」

 

そう言ってフロンタルはラクスを見て言った。

 

「どうやら時間切れのようだ。司法局の連中が来る前に私は引かせてもらう。次会う時、答えを聞かせて欲しい」

 

「なっ!?」

 

今まで空気だったアスランが司法局と聞いて声を上げるが、フロンタルはその声を無視し、その場から去った。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「あー焦ったぁ・・・司法局の人相手にバレたらって考えたら物凄い怖かったんですけど」

 

「二人共無事なのだから問題ないだろう?」

 

「そうですけどぉ・・・」

 

ホワイト・シンフォニーから撤退したフロンタル一行は車の中でそんな会話しながら抜け道がある場所へと走っていた。

 

「私や隊長はもうぶん殴っちゃいましたし。隊長が大丈夫と言うなら大丈夫だと信じます・・・多分」

 

若干やってしまったという顔をする二人にフロンタルは苦笑しながら言った。

 

「問題ない。司法局には私の部下がいる。もしバレたとしても偽装するように指示はしてある」

 

「うわぁ・・・悪い大人だ!トリトマちゃん。こんな大人になっちゃメッだよ!」

 

「そうだな。私みたいな大人にならない方がいい」

 

「隊長さんがそれを言います!?」

 

良い突っ込みをありがとう

 

「まあ、迷惑を掛けたお詫びとして何か買っていこう。私が支払いは持つ」

 

「なら紅茶とお菓子買っていいですか!最近、集めていた紅茶が少なくなっていたので補充しておきてーです!」

 

「なら私も!お酒!お酒買いたい!」

 

そう言う二人にフロンタルは苦笑する。

 

「構わないとも。だが、その前にこの格好から着替えなければな」

 

「また変な服じゃねーですよね?」

 

「安心したまえ。後ろの袋に着替えは入っている」

 

「・・・これですか?」

 

フロンタルのその言葉にトリトマは紙袋に入った服を覗き込む。

そこに入っていたのは『まだだッ!まだ終わらんよ!』とプリントされたシャツが・・・

 

「隊長。服を買いにいきましょう」

 

「ん?何故だ?」

 

首を傾げるフロンタルにトリトマはいう。

 

「買いにいきましょう」

 

「いやしかし・・・」

 

「買いにいきましょう」

 

あっ駄目な奴だコレ。フロンタルは服を買いにいきましょうと目が据わってきたトリトマを見て察してしまった。

横ではエルが声にならない笑い声をあげている。

 

いや、笑ってねえで助けてくれよ・・・と思うフロンタルだった。

 

 

フロンタルが乗った車が青信号になって走り出す。

その車を一人の少女は見ていた。

真っ白な髪に真っ白な肌。

そしてサファイアのように輝く目には運転中のフロンタルと話すトリトマを見て───

 

 

「・・・・お姉ちゃん?」

 

 




エルさんをスケッチしたみたいですが・・・なんか誰かに似ているような・・・?


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