フロンタルに憑依した苦労人転生者のガンダムSEED 作:鉄血
「ラウ・ル・クルーゼ。君の隊がヘリオポリスから回収した四機は新型のモビルスーツだと聞いた。まさか連合がオーブ内でそのようなモノを極秘で開発してたとはな」
ナスカ級のブリッジに映される映像越しに二人の仮面男が会合していた。
「耳が早いな、フロンタル。連合からの新型のモビルスーツの奪取はこちらとしても良い結果となった。だが、もう一機の新型は奪取に失敗して厄介な相手になってしまったがね」
クルーゼから見ればフル・フロンタルは気味の悪い存在でしかなかった。
効率的で常に冷静。そして冷酷な中身が見えない男。
そしてオーブを仲介に地球連合と接触し、和平を結ぼうとした道化を思わせるような男。
それがクルーゼがフロンタルに抱く印象だ。
「過ちを気に病む必要はない。ただ、認めて次の糧にすればいい。それが大人の特権だ」
「気に留めておこう」
そう返すクルーゼだったが、先のフロンタルの言葉はどこか他人事のように聞こえた。
「それより君達はどうする?このまま残りの新型を追うかね?」
「ああ、そのつもりだ。だが、その前にやることがある。そちらを片付けたら順に追っていくつもりだ」
「行方不明になったラクス・クラインの捜索か」
「そちらも知っていたか」
「ああ。彼女の件についても把握している。どうやらパトリック・ザラも彼女に目をつけているらしい」
「彼女を担ぎ上げるもよし、彼女の死を引き金にザフトの結束力を高めるのもよし・・・どちらに転んでも私としては構わないのだがね」
「ふむ・・・」
ザフトの中でも過激派のザラ派と穏健派のクライン派に分かれている。クライン一族が死ねばプラントの結束が高まり、ザラ派一強となるだろう。
そうなれば地球連合とプラントとの絶滅戦争だ。
クルーゼとすればそれが起こっても構わない。
何故なら彼にとって人類とは憎悪の対象だ。いくら死んでも構いやしない。
だが、それと同時に───
(・・・可能性の光。貴様が言ったソレは争いを引き起こす毒にもなるというのに)
かつてのフル・フロンタルは言った。
人は変わることはないと。
現状を維持する為ならば、その可能性さえ葬る。それが人間だと。だが、“それでも”と言う人間はいるのだと。
本人も自覚しているようだが、世界はそこまで甘くない。
争いは争いを生む。
だが、クルーゼはまだ人間らしい。
人の可能性という言葉に少しでも期待し、考えを並べている時点でだ。
だがこの男は違う。───フル・フロンタルの本質、それはそうあるべきと望まれた器。
人としてではなく、器として与えられた役を演じる人間。それ以外に何も無い男。
中身の人間がフル・フロンタルという役を演じ、そして行動する。自分の意思というものが極限なまでに薄い。
(貴様がいう程、世界は甘くないぞ。フロンタル)
モニターに映るフロンタルに内心そう言い捨てる。
そしてそんなクルーゼに対し、フロンタルは言った。
「クルーゼ。ラクス・クラインの捜索だが、私達も出よう」
「なに?」
フロンタルのその返答にクルーゼは眉間を寄せる。
「私の隊にはクライン派の人間も少なからずいる。今、彼女を失うことはナチュラルとの和平も厳しくなってしまう。なら、私達も彼女の捜索に参加し、彼女の父君・・・シーゲル・クラインの不安を取り除き、少しでも対話による和平交渉が楽になるようにしたい」
「・・・・・」
嘘ではないと言うのは分かる。
確かにフル・フロンタルは穏健派だ。だが、本当に目的はそれだけかと疑いたくなる。
「目的はそれだけかね?」
「ああ。隠し立てするつもりはない」
そう言い切るフロンタルにクルーゼは───
「良いだろう。もとより我々も休暇中の任務だ。貴様に任せる」
「感謝する」
デメリットもないその提案に了承した。