フロンタルに憑依した苦労人転生者のガンダムSEED 作:鉄血
IFストーリー
もしキラがキラちゃんで砂漠遭難時点の最初期から鬱病になってしまっていたら
「あの・・・書類の整理、終わりました」
「ああ、ありがとう」
(や、やり辛えええ!!砂漠でなんでかキラちゃんがアークエンジェルに乗るのを嫌がったからうちでサイ達も一緒に保護したけどキラって女の子になるとこんな子になるの!?)
「・・・・・・」
爪をガジガジと噛むトリトマ
(止めてぇ!トリトマちゃん!そんな恨みがましい目でこっち見ないで!胃が!私の胃が死ぬ!)
続かない
「今戻った」
フロンタルは鹵獲したゲイツと共にムサカの格納庫へと帰還する。
「お疲れ様です。シナンジュの性能はお気になりましたか?」
「悪くない。が、まだ機動部分の動きが少々硬い。まだ向上の余地はありそうだ」
「アレだけの動きをしておいて良く言いますね」
「伊達に赤い彗星の名を語っているわけではないのでな」
呆れたような声を出す整備士にそう言うと、そんなフロンタルの耳に怒声が飛んできた。
「パイロットスーツ無しで出撃した馬鹿野郎はどこでやがりますかあぁぁぁぁ!!」
「・・・・マズイな」
格納庫内に響くその声にフロンタルは無意識にそう呟いた。
どうやらパイロットスーツ無しで出撃した事が彼女にもうバレたらしい。
前も同じように怒られて今回もまた同じ事をしたのだ。
しかもシナンジュの殺人的な機動性を彼女も知っているのだからその怒りは前のものより凄まじいものだろう。
フロンタルは隣にいる整備士に視線を向けるが、彼はそんなフロンタルに「自業自得では?」と言って肩を竦めるばかり。
そして彼女の怒りで満ちた目と仮面越しでだがあった。
ズンズンと威圧的にこちらへと向かってくるトリトマは自身の前に立つ。
そしてそのまま自分の腕を掴むと、その小さな身体からでているとは思えないほどの力でフロンタルをズルズルと引きずり始めた。
「トリトマ、どこへ連れて行くつもりかね?」
「医療室です。話はそこでゆっくりとしましょう」
「しかし私の身体は特に問題ない───」
「あ"?何か言いました?」
「・・・・・」
ガチトーンで思いっきり睨まれましたはい。
「な に か い い ま し た ?」
「・・・なんでもない」
ごめんなさい。だからそんな怒らないで。
◇◇◇◇◇
「身体の方に異常は何もないね?」
医療室の診察室で、医者はそう言った。
「そんなのありえねーですよ!?私がシナンジュに乗った後は身体の負担が酷いって言っていたじゃねーですか!」
バンッ!と机を叩きながらそう叫ぶトリトマだったが、医者の男は肩を竦めながら言う。
「とは言っても異常がないものはないからね。モビルスーツにパイロットスーツ無しで乗るのはどうかとは思うけれど、患者が止めようとしないなら私は止めはしないよ?」
「医者としてそれはどうなんですか・・・」
「言う事聞かない患者に何言っても無駄だからね?隊長さんが過労で何度も運ばれている事は知っているんだよ?止めろと言っても直そうとしないから諦めてるけれど」
「・・・・隊長?」
初めて知ったんですけど?と言わんばかりの目でトリトマはフロンタルを見る。
止めて止めて。据わった目で見ないで。お願いだから。
「とはいえ、隊長さんには暫く身体を休めた方が良いと私は思うよ。彼女の機嫌をこれ以上損なわないのも考えてね」
「そうさせてもらう」
そう答えるフロンタルに彼は言う。
「ああそうそう。隊長さんは少し残ってくれないかな?少し話があってね」
「なら私も・・・」
その場に留まろうとするトリトマに医者は口を開く。
「いや、大事な話だから君は外で待っていてくれないかな?」
「そう言う事だ。トリトマ、話はまた後で聞く」
そう言う二人にトリトマは少し不安な顔をした後、医者の男に言った。
「本当に大丈夫なんですよね?」
「ああ大丈夫だとも。そもそもそう言う話ではないしね」
「・・・・分かりました。食堂で待ってますのでぜってーにきてください」
渋々といった様子でトリトマは引き下がり部屋から出ていく。
そして二人きりになった所で医者は口を開いた。
「さて・・・君に言わせて貰うけれど、いくら君が強化人間とはいえこれ以上無茶はしない方が良いと思うよ?」
「無茶はしていないさ」
そう言って見るが目の前に座る医者は回転椅子をくるくると回しながらフロンタルに言う。
「嘘だね。私は君が遺伝子工学にいた事も知っているけれど、元々は過酷な宇宙に適合する為の人体強化をメインに研究していただろう?そしてその処置を自分に施すだなんて正気の沙汰じゃないと私は思ったけれど、君があのモビルスーツに乗る為に遺伝子工学の研究に手を出したのなら納得いくんだよね」
そもそも君はあまり遺伝子工学には興味ないんだろう?と言う彼にフロンタルは溜息をつくしかない。
「やれやれ。それを知るのはキャプテンしかいないのだが、貴方も気づいていたのか」
「私も元々は研究員だよ?君がこのプラントに残した研究の成果はとても凄い事なのにソレを自慢しないのは興味がないか、そもそも通過点として見ていないかのどちらかだからね」
そう言いながら男はフロンタルを見る。
「・・・あの子には何も教えていないんだろう?誰よりも君の事を心配しているのに。君が出撃中の時だってすぐに診察出来るよう準備してくださいって来たんだよ?」
「・・・そうか」
それは悪い事をしたなと思う。
「君が何を考えているか分からないけれどこの船には君を心配する人は沢山いるんだ。あまり彼等を心配させないようにね?」
「・・・善処しよう」
「ならいいんだけどね。・・・・と、ああそうそう。三年前に君が潰しまくってエル君と一緒にうちに連れてきた兵士養成機関出身のあの子のことなんだけれど」
「ああ・・・どうかしたのか?」
「うん。実はもうそろそろあの子を船の外に出そうと思ってね。その前に私達が軟禁状態になってしまって長引いてしまったけど、もうそろそろ船の中くらいなら大丈夫かと私は考えてる。あの子のサポートに同年代のレオントッツォ君や同じ機関出身のエル君に任せようと考えているんだけれど」
「トリトマにあの子を?」
あの強烈な個性を持っているあの子を?
出来るかぁ・・・?
あの子ほっとんど喋らない上にコミュニケーション能力という能力が終わってるあの子を?トリトマが?無理である。
俺ですらなんて伝えたいの?って首を傾げるくらいだからな?
そんなフロンタルに医者の男は言う。
「何時までもあの子をカウンセリングという名の軟禁をしておく訳にはいかないしね。それに前に比べたら受け答えはしてくれるよ?伝え方はかなり独特だけれど」
「それなら構わない・・・か?」
正直クソほど心配だが、エルが一緒なら大丈夫だろう。大丈夫だよな?
「じゃあよろしく。あの子はカウンセリングルームにいる筈だから食堂に行くなら一緒に連れて行ってね」
「ん?今からか?」
「うん、今から」
「この忙しい時に?」
「この忙しい時に。というかそうしないと船員全員に挨拶出来ないでしょ?ただでさえ、全員が船に乗ることが珍しいんだから。期待しているよ?」
厄介事がもう一つ増えた。
過去の自分をぶん殴りたくなったフロンタルであった。