フロンタルに憑依した苦労人転生者のガンダムSEED   作:鉄血

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第七十八話

「いやいや、お見事でした」

 

軽薄な調子の声が、いまだ戦火の爪痕も生々しいビクトリアに響いた。いくつも倒れ伏すモビルスーツ、ビームやミサイルに抉られた大地、破壊された機体の間では掃討部隊が動き回り、コクピットの中を確認しては、まだ息のあるザフト兵を次々と撃ち殺していく。

そして気温が高くなるにつれて焼けた建築物やプラスチックの臭いを圧して、不快感しか産まない生々しい異臭が立ち込めていた。

降伏は認められず、捕虜に関する条約は黙殺され、この惨状を作り出していく兵士達の目には、憎しみと残忍な喜びの表情が浮かんでいた。

そんな陰惨な銃声が間歇的に響き渡る空気の中を、一人の将校とこの場にそぐわないスーツ姿の優男が、マス・ドライバー施設に向かって車を走らせていた。

 

「流石ですなぁ、サザーランド大佐」

 

スーツの男──ムルタ・アズラエルは、戦場の悲惨さなど全くその目に入らないようで、なにより大きな戦利品であるマス・ドライバーレールをほれぼれと見上げた。

 

「いえ。”ストライク・ダガー”はよい出来ですよ。オーブでアズラエルさまが苦戦されたのは、お伺いした予期せぬ機体のせいでしょう」

 

「まだまだ課題も多くってねぇ、こっちも」

 

アズラエルはうんざりとした溜息をつく。

 

「しかし、よもやカラミティ、フォビドゥン、レイダーでああまで手こずるとは思いませんでしたよ。ホントにとんでもない国だねぇ、オーブは。何考えていたんだか」

 

「巧く立ち回って、甘い汁だけ吸おうとでも思っていたのでしょう。卑怯な国です」

 

サザーランドが馬鹿にしたように鼻を鳴らす。しょせん人は自分の尺度でしか他者を計れず、それ以外の意志があろうことなど彼らには思いもよらない。

 

「”プラント“の技術も相当入っていたようですからな。いや、もしかしたらその二機、実はザフトのものだったかもしれない」

 

自分たちに反抗するからには、敵に通じていたに違いないという単純な思い込みで、サザーランドの口から出た言葉に、アズラエルは軽薄そうな顔を引き締める。

 

「どちらにしろ、アレはなんとかしなくちゃねぇ」

 

「────手に入れられるかな?」

 

「それで、ご自身が宇宙へと?」

 

「まあネ」

 

奪還されたばかりのマス・ドライバーには、すでに一機のシャトルがセットされている。輸送機から降り立った特徴的な青緑色のモビルスーツがシャトルへと向かう。巨大な砲を背負ったカラミティだ。その後ろにフォビドゥン、レイダーが続いてく。

 

「そう言えば・・・宇宙にはあの”赤い彗星“とかいうコーディネーターがいると盟主殿はご存知でしょうか」

 

「ああ、知っているよ。二年前にジン一機でドレイク級三隻とネルソン級一隻、後メビウスを三十機近くを一人で沈めた話だよネ」

 

アズラエルも赤い彗星───フル・フロンタルの事は知っていた。

あの男が一部の連合と赤道連合との取引をしていたことも。

 

「ええ」

 

そう答えるサザーランドにアズラエルは言った。

 

「聞いた話だけど向こうからの交渉を断って不意討ちした挙句、全滅したとか」

 

「それは・・・」

 

言い淀むサザーランドに対し、アズラエルは言う。

 

「使えるコーディネーターは使ってやればいいのに惜しい事をしたネ。君達も」

 

実際にアズラエルにとってもフル・フロンタルは脅威であり、鎖に繋げる事が出来るのなら、繋げておきたい存在であった。

連合との会談の記録を拝見した時、アズラエルがフル・フロンタルに抱いた第一印象がこの男は話が通じる男だという事だった。

 

フル・フロンタルが連合に提示した要求は二つ。

一つ目はプラント自治権の要求。

 

簡潔に言えば自分達の政治に口出しするなという要求。言わば独立し、オーブと同じ立場にしろと言っているようなものだ。

正直な話、これは受け入れがたいとは連合や自分は思っている。が、それに対しての見返りがアズラエルにとって魅力的なものだった。

それは地球に打ち込まれたニュートロンジャマーの無償の撤去、もしくは無力化。

正直それだけでも魅力的ではあるのだが、更にもう一つ。中立国家であった赤道連合、プラント、地球連合の三つの国家組織で連携する事で技術の促進を促すのは利益を目的とするロゴスの方にもメリットしかなかった。

事実、重い腰を上げようともしない老人共の中には出来ることならこの提案を飲むべきだと言うものいるくらいだった。

 

「───でもまあ、強い牙を持つヤツはちゃんと閉じ込めておくか、繋いでおくかしないといけないネ」

 

野放しにしておくには流石に危険過ぎる。

多少の不利益を被ってでも、アズラエルはフロンタルを抑えておきたかった。

そんなアズラエルの内心を知ってか知らずかサザーランドもフッと笑って肯んじる。

 

「宇宙に野放しにしたあげく、これでは───ですな」

 

「まあ、頑張って退治してくるヨ、ボクも・・・」

 




プロフィール

フロンタルとギルバートそしてクルーゼの関係はフロンタルが転生してから一年後、原作の四年前からの交流があった。

その際に他の研究員を巻き込んでキャスターチェア滑走大会やらフラッグ争奪戦などアホな事をしていた。

DESTINY編、デュランダルが議長になる前日に酒に酔った勢いで三人でまた滑走大会をしている所をトリトマに目撃された。
そしてギルバートは二日酔いの状態で就任式に出席した。

エムちゃん


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