フロンタルに憑依した苦労人転生者のガンダムSEED   作:鉄血

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来週から投稿が遅れます
何故かって?年末頃から仕事が忙しくなるからです!


第八十一話

ダコスタは周囲に気を払いながら、狭い路地を曲がった。ここはアプリリウス市街の、少々寂れた区画だった。くすんだような外壁の、なんの変哲もないビルの裏口から、彼は中に入る。階段を駆け上がり、ドアを開くと、そこにはラクスと情報収集の為の端末に向かう十数人の同志たちがいた。

 

「ごくろうさまです。────どうでしたか、街は?」

 

ラクスが柔らかな口調で尋ねる。父を亡くしても、彼女は涙ひとつ見せず、かえってその報せに衝撃を受け、浮足立つ同志たちをなだめてみごとにまとめ上げていた。ダコスタはきびきびと報告する。

 

「変化は特にありませんね。エザリア・ジュールの演説でも、シーゲル様の暗殺を公表したせいで市民や軍は二分割したままです」

 

「そうですか・・・」

 

「後はこの騒ぎに乗って速い段階でフル・フロンタルを始めとしたフロンタル隊はもう宇宙に出航しています。パトリック・ザラもその知らせを聞いて追っ手として司法局を向かわせた様ですが・・・・モビルスーツ一機に多大な被害を負わされて戻ってきているようです」

 

まずい状況だ。

フル・フロンタルはラクスの次の手を読み始めている。

あの男が宇宙に出たということは彼は彼なりにこの騒動に参加するつもりだろう。

 

「エターナルの奪取後、彼の手を借りますか?仮にも元クライン派の一頭ですし、ザフトの中ではザラ派やラクス様よりフロンタルが担ぎ上げられています。同じ志を持っているのなら手を貸していただけるのでは?」

 

そう言うダコスタにラクスは首を横に振る。

 

「それも出来るかもしれません。あの人がやろうとしている事は最終的には私達と同じ世界の平和ですが、その間に沢山の血が流れます。彼は戦争に対して許容範囲内であれば容認するつもりですから」

 

世界の平和の為、弱者と強者が入れ替わり続ける時代を作り、その混沌と化した世界の中で各国家で平和を模索する。

長期的に見ればそれが一番なのかもしれないが、その間に沢山の人々が苦しみ、死ぬことになる。

ラクスとしてはその苦しむ人々の世代を長く続けるつもりはない。段階を踏まずに一発勝負で世界を平和にしてみせる。

そのつもりで挑むつもりだった。

 

フロンタルからしてみればラクスがやろうとしているのは一発限りの世界平和のRTAだ。

もし何もかも上手くいったとしても、一発勝負の急激変化に対する反動を懸念しなければならない。

そのリスクを考えた上でラクスはこの選択を取った。

 

「わたくし達も、行かなければなりません」

 

それがラクスの決断だった。

だが、それはのちの彼女にとっての失敗だったとフロンタルは語る。

 

君のように失敗を経験した事のない人間は世の中を甘く見ている節がある───と。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「ごめんなさい、隊長。私の為にこんな・・・・」

 

「気にする事はない。私の予想外だ。まさか君の成長速度がここまで速いと想定していなかった」

 

格納庫でアホ毛をシナシナとさせながら謝るトリトマにフロンタルは気にする事はないと言う。

 

「でも・・・」

 

「モビルスーツの事については心配する事はない。私が戦場に出なければならない時以外はシナンジュを好きに使うと良い。それまではゲイツを君の反応速度に出来る限りついていけるよう調整しておく。今日はもう休むといい」

 

「・・・・はい」

 

そう言うフロンタルにトリトマは気まずそうに返事をし、格納庫を後にする。

そして彼女が訪れたのはお風呂場だった。

フロンタル隊が扱う〈ナスカ級高速戦艦〉には他のナスカ級とは違い、小さいながらも浴場がある。隊長曰く、クルーのストレスを出来る限り無くす目的の為にわざわざ作ったらしい。

トリトマは汗ばんだ服を脱ぎ、籠に入れ、折りたたまれたタオルを手に取り浴場へと入る。

トリトマは適当な洗い場で身体を洗うと、湯船に向けて歩く。

そこには既に先客がいた。

 

「あれ、トリトマちゃん?こんな時間にお風呂?」

 

先に湯船に浸かっていたのはエルとエムだった。

 

「エルさんに、エムさんじゃねーですか」

 

そう言いながらトリトマは足を止める。

そんなトリトマにエルは言った。

 

「あ、立ち話はいいからお風呂に入りながら話そう?」

 

「では・・・遠慮なく」

 

そう言ってトリトマはエル達と向かい合うように湯船に浸かる。

そしてそんなトリトマにエムが言った。

 

「質問。暗そうな顔をしています。何かありましたか」

 

「まあ・・・隊長絡みで」

 

気まずそうに答えるトリトマにエルは言う。

 

「何があったのか・・・聞いても良いかな?」

 

「・・・・はい」

 

エルのその言葉にトリトマは先ほどまであった事を話始める。

現状、自分に合った機体が隊長のシナンジュしかない事。隊長に余計な仕事を増やしてしまったこと。

それらを聞いたエルとエムは暫しの沈黙の後、落ち込むトリトマに言った。

 

「私は気にしなくて良いと思うよ。隊長さんはトリトマちゃんを死なせないように自分の機体を使っていいって言ったんだと思うな。だって私が前にいた所はそう言ったことなんてなかったし」

 

「同意。贅沢な悩みです」

 

「・・・・そうでしょうか?」

 

そう言うトリトマに二人は頷いた。

 

「そうそう。もしそれでも気に悩むなら今度隊長にお礼すればいいじゃない」

 

「でもお礼なんて何をすれば・・・」

 

「なんでも良いの。感謝が伝わればね」

 

「・・・・考えてみます」

 

「よろしい」

 

そう言いながらエルはトリトマを見る。

ジーッと自分を見るエルにトリトマは不思議そうな声を上げた。

 

「どうかしました?エルさん」

 

「・・・改めて思ったんだけどさ、トリトマちゃんって結構着痩せするタイプだよね」

 

湯船に浮かぶソレを見てエルは言う。

 

「・・・・?なんのことでやがりますか?」

 

「いや、それは・・・ほら、ねえ・・・?」

 

「同意。何を食べたらそうなるのでしょうか」

 

「だから何のことです?」

 

二人して納得する理由が分からないトリトマは首を傾げるのだった。

 

 




オマケ
原作が始まる三年前───

ソレはある日の事だった。
一人の作業員が大きなため息をついて身体を大きく伸ばす。

「モビルスーツのメンテは大変だなぁ、ホント」

モビルスーツの装甲を外し、異常がないか夜遅くまで確認していた作業員は眠気に襲われながらもパソコンの画面に映し出されたグラフを目に通していた。
暫く作業をしていると、格納庫に良い匂いが漂ってくる。

「なんだこの匂い?」

何かを焼くような匂い。しかしここはモビルスーツを収容する格納庫だ。
異常だといけないので作業員は匂いのもとを辿る。
そしてその匂いのもとには───

分解されたモビルスーツの装甲の上で手持ちのバーナーを手に肉を焼くサングラスを駆けた赤いノースリーブ姿の隊長の姿が・・・

「・・・疲れてるのかな俺・・・」

うちの隊長がこんな事するはずが無い。
幻覚を見るほどの疲れているのだろうと作業員は目元を押さえながら元の場所に戻るのだった。



【挿絵表示】


積極的なトリトマちゃん
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