フロンタルに憑依した苦労人転生者のガンダムSEED 作:鉄血
新年、一発目の投稿です!
宇宙空間にて、フロンタルが乗る船がL4コロニー群の周辺をゆっくりと航行している。
《ムサカ》の格納庫には隊長機であるモビルスーツ〈シナンジュ〉と鹵獲したゲイツ、そして三機のギラ・ズールと二機のジン、そして一機のケンプファーが格納庫に並んでいた。
その周りをメカニックやクルーが忙しなく行き交っている。艦内に重力はないが今は非戦闘時の為、空気はありヘルメットをしていない者も多い。
その中、シナンジュのコクピットの中でトリトマはシミュレーションによる戦闘をしていた。
「・・・・ッ!!」
コクピットに映る相手は前に鹵獲したばかりのゲイツ。だが、パイロットの格が違った。
今ゲイツに乗ってトリトマとシミュレーションしているのは隊長───フル・フロンタルなのだから。
フロンタルが駆るゲイツがトリトマが乗るシナンジュに急接近する。
接近するゲイツをトリトマはビームライフルで迎撃するが、銃口から放たれた熱線は必要最低限の動きで回避され、速度を落とすどころか獲物を見つけたとばかりに更に加速してきた。
逃げるトリトマと追うフロンタル。
シミュレーションでは今まさにこのような状態だった。
トリトマからして見てフロンタルが操るゲイツの動きはハッキリ言って異常だ。
急速接近しながらその勢いを止める事なく、トリトマの先読みによる狙撃の更に先を読むような馬鹿げた回避をし、更にはビームライフルのビームを狙撃しビームを逸らすなどといった到底人には出来ない芸当をシミュレーションでして見せた。
そんな人外じみた動きをするフル・フロンタルについてこられるトリトマもまた異常と言ってもいい。
身を翻した際に出来る一瞬の隙を狙って狙撃したフロンタルの攻撃を射線を見ずに必要最低限の動きで回避をしたり、盾を投げて一瞬気を逸らした後、モビルスーツの真上から接近戦による奇襲。
正直、彼女も大概にしろと言う技量を持っていた。
「・・・・ッ!」
あっという間に接近してきたゲイツをトリトマはシナンジュの腕部に装備されたビームサーベルを取り出し、ゲイツの盾から発生するビームクローの軌道を逸らす。
逸らされた勢いで再び距離が離れるゲイツにシナンジュの頭部バルカンで自身の隙を潰しながらゲイツにビームライフルの引き金を引いた。
だが放たれたその熱線はゲイツに当たる事なく空を切った。
そして反撃とばかりにゲイツも手にしたビームライフルを撃ち返してくる。
「当たらねーです!」
そんな甘い射撃は当たらない。
『ならこれはどうかな?』
そう言ってフロンタルはゲイツの腰部に装備されたアンカー《エクステンショナル・アレスター》を射出する。
「そんなもの!」
トリトマが駆るシナンジュに向けて射出されたそのアンカーはビーム刃を形成しながら向かってくるが、それを難なく手にしたサーベルで迎撃し不意討ちとばかりにビームライフルの熱線も飛んでくるが、それも回避。トリトマは回避と同時に一瞬でゲイツに軸を合わせながらビームライフルを放つが躱されてしまう。
射撃戦では拉致があかないとトリトマは接近戦をしようとビームサーベルを取り出したその時───
『・・・・む!?』
フロンタルの声が通信越しでトリトマの耳に入る。
その声はどこか困惑と驚きが含まれていた。
『メインブースターがイカれただと!まさかシミュレーションでもおこるものなのか!』
どうやらシミュレーションでモビルスーツの機体限界が迎えてしまったらしい。彼女ですらそんな事が起こった事がないというのにシミュレーションでイレギュラーを引き起こした隊長はどれだけ無茶苦茶な動きをしたのだろうか?
『クッ、駄目だ!動けん!これが私の最後と言うか!』
なんかアホなことを言っている隊長にトリトマは呆れるのだった。
◇◇◇◇
「まさかシミュレーションでこんな事が起こるとは思わなかった」
トリトマとの模擬戦の後、フロンタルは整備長にそう言いながらコーヒーを啜る。
「それだけ隊長のモビルスーツの使い方が荒いって事でしょうに。私も初めて見ましたよ?シミュレーションでモビルスーツが使用不可になるのは」
「だろうな。私も初めて見た」
いやーまいったまいった。モビルスーツに乗って某フ◯ムゲーの動きをしてたらメインブースターが破損判定喰らうとは思ってもみなかった。
おかげでトリトマに勝ち星あげちゃったし。
私の無敗伝説ここで完ッ!!
「しかし良くもまあゲイツであんな動きが出来ますね。ムーバブル・フレームを採用していない機体であの運動性は他のエースパイロットでも無理ですよ?」
「元となった機体が余程優秀だったのだろう。運動性では流石にギラ・ズールよりは劣るが装甲の厚さや機動性はこちらが上だろう」
「ギラ・ズールはセンサー範囲が馬鹿みたいに広いですけどね」
整備長とそんな話をしていると、シナンジュのコクピットからトリトマが降りてくる。
彼女がシナンジュ用に設計されたヘルメットを外すと結ばれた長い髪が汗と共に舞い上がる。
汗ばんだうなじがちょっと色っぽい。
「あ、隊長」
フロンタルを見つけたトリトマが此方に向かって走ってくる。そしてコーヒーを飲みながら談笑していたフロンタルに言った。
「すみません隊長。シミュレーションに付き合ってもらって・・・・」
「いや、やっていて私も良い経験をさせてもらった。まさか最後にああなるとは思わなかったが」
これが海だったら水没王子だったと内でそう思いながら話にフケっていると、一人のクルーに呼ばれた。
「あ、ここにいましたか。フロンタル隊長」
「どうした?」
「キャプテンが定期連絡があったから来てほしいと」
アスラン脱走でもしたかな。それともエターナルを奪取されたのかな。
そろそろ頃合いだとフロンタルは考え、この場にいるクルーに言う。
「了解した。すぐに行こう。後、この場にいるクルーの皆に言っておく。もうすぐ大きな戦闘が始まるだろう。過去に我々が体験した事のない大きな戦争だ。気を抜かぬようにな」
「「はい!」」
その言葉に皆が揃って返事をする。
「よろしい。では私はここを離れる。トリトマもシナンジュに乗るのは構わないが、ゲイツにも慣れておけ。モビルスーツの反応感覚の違いで負けたとなったらパイロットの恥だぞ」
「了解です」
そう言ってフロンタルが見えなくなった後───
「・・・・そう言えば隊長、パイロットスーツ着てませんでしたよね?」
つまり実戦ではハンデありと言う事。そう言う事である。
食堂から良い匂いがする
シミュレーションから帰ってきたトリトマは夜の食堂で良い匂いが香ってきたのでふらふらと立ち寄ってみたら隊長がキッチンに立っていた。
「さて──」
そんな掛け声と共に隊長が圧力鍋を用意し火をかけ始める。そして隊長はトレイに並べられた食材を切り始めた。
玉ねぎは薄切りにスライスし、マッシュルームは石づきを取って一口サイズに。じゃがいもを一口サイズにカットしてにんにくを細かく刻んでから四等分に切ったお肉に塩、胡椒を振り、小麦粉を薄くまぶしていく。
そして火が十分に回ったその鍋にオリーブオイルと刻んだにんにくを入れて炒め始めた。
オリーブオイルとにんにくの香りが隠れているトリトマの鼻腔をくすぐる。
グゥと自分のお腹が鳴った事も気づかずにトリトマは料理を続ける隊長を見つめる。
香りが出たその鍋の中に下味をつけ等分にしたお肉を次々と入れていく。
ジュウウウウッとお肉の焼ける音と香ばしいその匂いがトリトマの胃袋を刺激した。
「・・・ゴクリ」
十分に焼目がついたお肉を鍋から取り出した後、隊長は次に玉ねぎを入れて炒め始めた。しばらくしてお肉を再び鍋に戻して赤ワインを取り出し、トクトクと鍋に流し込む。それと一緒に水と塩、ブーケガルニを入れ強火で煮込み始める。
コトコトという音とリズミカルに鍋を鳴らしながら赤ワインの良い匂いが部屋に充満する。
しばらくの間アクを取った後、フロンタルは鍋に蓋をした。
「・・・いい加減出てきたらどうだトリトマ。髪が隠れていないぞ」
「えっ!?」
ピョコンと出ていたアホ毛が入り口でピョコピョコと左右に揺れていたのだ。
誰が隠れているのはすぐに分かる。
おずおずと出てくるトリトマにフロンタルは言う。
「手伝ってくれたら半分あげよう」
「ホントでやがりますか!?」
そんな彼女にフロンタルは苦笑しながらああと言ってウキウキしているトリトマに言った。
十分の間軽く煮込んでから蓋を開け、マッシュルーム、じゃがいも、切った玉ねぎを入れ、片栗粉を入れてとろみを出す。
後は三十分ほど煮込めば───
「完成だ」
「ああああ美味しそう・・・!」
器に盛られていくワイン煮込みにトリトマは目を輝かせる。
パンと一緒に並べられたワイン煮込みとフロンタルを視線行ったり来たりする彼女にフロンタルは頷いた。
「食べるといい」
「・・・・ッ!!いただきます!!」
そう言って一口───
「ふあっ」
口の中で蕩けたお肉がじゅわっと広がり、トリトマは幸せそうな顔をする。
そんなトリトマに対し、フロンタルも一口。
「悪くない」
そう言ってフロンタルは幸せそうな顔をしながら食べるトリトマを見て満足そうにするのだった。
【挿絵表示】
着物姿のトリトマちゃん