フロンタルに憑依した苦労人転生者のガンダムSEED 作:鉄血
フロンタルから一時間もの考える時間を貰ったラクス達はアークエンジェルの艦橋で沈黙していた。
その沈黙をバルトフェルドが破った。
「フロンタルの目的は分かった。奴はこの不安定な現状を少しでも整える為に連合と組むつもりだ。現状のまま戦争を終結させても平和にはならない。痛み分けにしかならないと理解しているからな。だからお姫様とは違う方向性で奴なりの平和の道を模索したんだろうな。確実で一歩ずつ進める道を、な」
「それが連合との戦争シェアリングって訳か」
「ああ。そうすればこの戦争が終わった後、現状に不満を溜め込んだ奴らの捌け口としては丁度いい鬱憤晴らしになる」
現実を見ているとバルトフェルドのその言葉に返答はない。
「もし、この提案を断ったらどうなると思う?」
カガリのその言葉にムウは答えた。
「少なくともブルーコスモスの盟主であるアズラエルは乗り気だ。ここでオーブが断ったら連合とザフト、両軍を敵に回す事になる」
「・・・ッ、だったらフロンタルがザフトの実権を取り戻さなければ良いんじゃないのか!ラクスにはそれが出来るんだろう!」
「それは・・・」
必死になるカガリのその言葉に誰しもが口ごもる。
確かにそれは可能なのかもしれない。
だが、それに答えたのは以外な人物だった。
「・・・それは、無理だ」
「アスラン?」
ラクスがザフトの実権を握るのは無理だと答えたのはアスランだった。
「俺がプラントに戻った時はもうザフトはザラ派とフロンタル派に内部分裂していた。それに今のラクスは国家反逆者だ。それはフロンタルも一緒だとは思うが、ザフト内ではラクスや父よりもフロンタルの方がプラントに相応しいと思う人は多い」
「お姫様と違って長いこと議員にも前線の指揮官としても立っていた男だ。理想の指導者として誰もがなって欲しいだろうさ。いかんせん、パトリック・ザラが総指揮の座を握ってからザフトは惨敗が多すぎた。そりゃあ不満も溜まる。お姫様がプラントの実権を握る手段も無くはないが、フロンタルの傀儡になるだけだ」
肩を竦めながらバルトフェルドはそう答えながらラクスを見る。
暗い顔で目を落としながら何もできない自分に唇を噛み締めていた。
「どのみち選択肢は一つだけってことか」
ディアッカのその言葉に皆は沈黙する。
「・・・私が、受け入れればこの戦争は終わるのですね」
ラクスは自分の無力さに着物の袖を握りしめながらラクスはそう言葉を口にした。
自分はただ、戦争によってキラのように悲しむ人をなくしたかっただけだった。
だから自分なりに行動を起こしてみせた。が、それは新たな火種を作る元にしかならなかったらしい。
最初からフロンタルの提案を飲んでいれば最小限の犠牲で済んだのかもしれない。そもそもフロンタルの目を掻い潜ってキラにフリーダムを渡さなければ父が死ぬことも───
様々な感情がラクスの胸の中に渦巻く。
どこまでも落ちていくラクスに───
「僕はラクスが決めたことに反対しないよ」
「え・・・」
「本当はあの人がやろうとしている事は正しいのかもしれない。けど、ラクスがそれを認められないって言うのなら僕は戦うよ」
その言葉にラクスは心を決めた。決めざるを得なかった。
◇◇◇◇◇
『返答を聞こう。ラクス・クライン』
フロンタルのその言葉にラクスは一瞬だけ、口を紡ぐ。
「・・・フル・フロンタル。私は、貴方の提案を飲みます」
一瞬の沈黙があった。
そしてフロンタルの口から言葉が漏れる。
『それは我々と手を組むと言う事でいいのかな?』
「・・・・はい。ですが、一つだけお願いがあります」
『それはなにかな?』
フロンタルのその言葉にラクスは───
「この戦争が終わったら"キラ達を自由にしてください"」
「ラクス!?」
ラクスの返答にキラは彼女を見る。
『それは我々の問題にキラ君達を関わらせるなと?』
「はい。私はこの戦争の後、どうなっても構いません。ですが、キラ達には手を出さないで下さい」
「ラクス!それは!?」
「キラ」
自分を止めようとするキラにラクスは言葉を遮る。
そしてキラ達を見て言った。
「私は・・・決めました。これ以上、キラが傷付く姿を私は見たくありません。ですから止めないでください」
「でも、だからって!」
自分を犠牲にすることはない。
そう言おうとした。だが、言えなかった。
「"私が決めた事ですから"」
そう言ってラクスはフロンタルに向き直る。
「フル・フロンタル。それで返答は」
『・・・いいでしょう。彼等がテロ行為などで我々の問題に首を突っ込むならまだしも、何もしないならただの元民間人だ。彼等の安全は保証しよう』
契約は成立した。