DOG DAYS 〜The Demise Hero〜   作:セラフィエル

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どうもセラフィエルです。

いや〜もうすぐ12月ですね。早いものです。
12月といえばクリスマスです。
そう、愚かなリア充達がイチャコラするクリスマスです。

え?クリスマスの予定?
あるわけ無いじゃないですか………


第12話 心の深奥

不吉なことが近づいているとは思えない晴天。

小鳥達がさえずり、周りには美しい花々が咲き乱れている。

だが、今の和斗にそれを楽しむ余裕はなかった。

なぜならーーー

 

 

「ギャァァァァァァ⁉︎誰か止めてくれぇぇえぇぇぇッッ‼︎」

 

 

乗っているセルクルが和斗のことを無視し、爆走しているのである。

 

 

 

遡ること数十分前。

この世界に残ることを決意した和斗は、リコッタから貸してもらった一覧表を見ながら(まったく頭に入って来なかったが)、廊下を歩いていた時、ふと思い立った。

 

この世界でやるべき事を。

 

しかし、行き方が分からず、途方にくれている時、あの生き物を見かけた。

鳥のような馬のようなセルクルである。

 

よしと思い、セルクルの世話をしていた騎士団員に尋ねた。

 

ガレット獅子団領へはどうやって行けばいいのか。

 

その騎士団員は快く、セルクルを使えばいいと答え、さらに道中危険だから同行すると言ってくれた。

 

・・・・正直、自分にとっては優しすぎて、逆に傷ついたが。

 

騎士団員は紫の毛並みのセルクルを連れてきて、俺に乗り方を教えてくれた。

 

だが、俺にとってはかなり難しく、何度も転げ落ちた。

そして、事は起きた。

 

やっとこさ乗れたと思った途端、セルクルが急に走り出したのだ。

これが初速かよ⁉︎と思うほどの猛スピードで。

 

 

 

そして、今に至る。

 

周りの風景が霞んで見える程のスピードで、さらに、かなり不安定な体勢なので、気を抜けば一瞬で振り落とされるだろう。

 

今は必死にしがみついているが、それもいつまで保つか分からない。

 

しかも、大きく上下に揺れるので、胃の底からモザイクのかかるアレが湧き上がってきた。

 

おぅえぇっ、気持ち悪ィィ・・・。

 

ヤバイ、マジでヤバイ。

アレがもう喉仏の辺りまで・・・・ッ!

 

その時だった。

 

セルクルが急ブレーキをかけ、体が前につんのめる。

 

「ッッッっっっ⁉︎⁉︎」(ガンッ)

 

思いっきり頭をセルクルの後頭部にぶつけた。

この野郎・・・!すんげぇ石頭しやがって・・・!

猛烈に痛む頭をさすりながら、心の中で愚痴る。

 

痛みが引き、一体なぜ止まったのかとセルクルの前を見た。

 

そこには、一匹の狼がこちらに向かってグルルルゥゥゥと唸っていた。

 

「・・・・・・」

なぜだろう。

嫌な予感しかしない。

 

セルクルはやや前のめりになり、その双眸で鋭く狼を睨んでいた。

 

いやいやいや、睨まなくていいから。

睨んだら狼に絶対勘違いされるから。

さっさと回れ右して逃げようや、な?

 

冷や汗をかきながら、心の中でセルクルに語りかける。

 

セルクルはその声が聞こえたのか、クルリと体の向きを変えた。

 

ホッと胸を撫で下ろす。

そして、セルクルはーー

 

 

「・・・・」(おしりフリフリ)

 

 

「・・・・・・」

 

ってちょっと待てぇぇぇぇい‼︎

え?何してんの⁉︎なんでケツ振ってんの⁉︎

明らかそれ挑発してるよな⁉︎死にたいの⁉︎食べられたいの⁉︎

 

そこでハッと気づく。

 

まさか、この行動は狼に自分は敵ではないとアピールするための・・・?

 

 

ちらりと後ろを見る。

 

 

「・・・」(ギロッ)

 

 

ああ、少しでも期待した俺が馬鹿だった。

 

「怒ってるぞ‼︎アレ絶対怒ってるって‼︎なあ!早く逃げようぜ⁉︎お前だってまだエサになりたくねぇだろう⁉︎」

 

「・・・・・」(フリフリ)

 

「だからフリフリじゃねぇぇぇぇッッッ‼︎」

 

ダメだ!この野郎、全然話を聞いてない!

 

「ガァァッッ!」

 

その時、狼が一声大きく吠えた。

セルクルのケツダンスがピタリと止まる。

そして、セルクルはそのまま全力で走り出した。

 

 

 

ーーー俺を振り落として。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・」

 

走り去るセルクル。

その背中は何の躊躇いも無かった。

 

「あのクソ野郎ォォォォォォッッ‼︎‼︎」

あれだけ挑発しといて、最後は俺を囮に⁉︎

なんてゲスい性格してんだよ⁉︎

 

「グルルルゥゥゥ・・・」

背後からイライラMAXの狼の唸り声が聞こえる。

後ろを向くと、狼がすぐ目の前にまで迫っていた。

 

ああ、詰んだな。俺の人生。

 

「ガァァッッ!」

狼が跳躍し、大きな顎を限界まで開ける。

長い牙がギラリと光る。

 

だが、狼が放物線の最大値に達した時、

 

「とぉりゃぁぁぁぁぁ!!」

気勢の良い掛け声と共に、一人の少女が狼に飛び蹴りを喰らわせた。

 

ギャン!と狼は鳴き声をあげ、そのまま茂みに消えて行った。

 

た、助かった・・・!

 

肺に溜まっていた息を吐き出し、心に誓った。

 

 

あのクソセルクル、次会ったら焼き鳥にしてやる、と。

 

 

 

ところ移り、ガレット獅子団領。

 

「あっはっはっは!そりゃ大変やったな〜!」

「そういうこともあるんですね〜。」

「・・・・災難。」

俺は今、俺を助けてくれた少女、ジョーヌ・クラフティの後ろを歩いている。

右にはうさ耳のベール・ファーブルトン。

左には黒髪のノワール・ヴィノカカオ。

三人でジェノワーズというらしい。

 

狼から助けてもらった後、ガレットまで連れてきてもらい、今はヴァンネット城を案内してもらっている。

 

俺の目的の人物の場所まで。

 

「さあ、着いたで。」

ジョーヌが扉の前で止まる。

コンコンと二回ノックした後、「入れ」という声が聞こえた。

ジョーヌが扉を開ける。

 

部屋の中は美しい装飾が施され、窓から差す陽の光によって輝いている。そして、部屋の奥にある大きな机に、その人はいた。

 

「なんじゃ、お主か。一体どういう用件じゃ?」

 

長い銀髪に、猫を思わせる双眸。

一際目を引くグラマラスな肢体。

名は確か、レオンミシェリ・ガレット・デ・ロワ。

 

その鋭い眼を見つめながら、ゆっくりと歩みを進める。

机の三歩ほど手前で止まり、やや大きく息をつく。

 

そしてーーー

 

 

 

 

「すみませんでした。」

 

 

 

 

深々と頭を下げた。

これが俺の目的。

ここにいるのならば、まずは謝るべきだろう。

俺の自分勝手な行動によって迷惑を被った人に。

 

「レオ閣下とイズミとの決闘に水を差してしまい、本当にすみませんでした。」

 

そして、顔を上げる。

視線の先では、レオ閣下が驚いたように目を見開いていた。

 

「わざわざそれを言いにここまで来たのか?」

 

「はい。」

 

すると、レオ閣下はフフッと笑った。

「そうかそうか。うむ。良き心構えじゃ。なに、あの事についてはあまり気にしてはおらん。しかし・・・」

 

ん?しかし?

 

「その代わりと言っては何じゃが・・・一つ教えてはくれかんか。」

 

そして、レオ閣下は哀れみを含んだ眼で俺を見た。

 

「随分シンクと仲が悪いようじゃが、何があった?」

 

ああ、この人も分かってるんだ。

俺の瞳の奥を見透かしてるんだ。

リコッタと同じように。

 

「申し訳ありませんが、それにはお答えできません。」

 

慣れない敬語で、断る。

 

「何故、答えられん?」

 

「・・・あなたには関係が無いからです。」

 

レオ閣下は肘を机に立て、手を組み、僅かに俯く。

「そうか・・・・・ところで、シンクには謝ったのか?」

冷や汗が流れる。

 

「・・・一応。」

 

「嘘じゃな。」

「嘘やな。」

「嘘ですね。」

「・・・嘘。」

 

一瞬にして見破られた。

 

本当に、鋭いなぁ・・・!

 

このまま隠し通せる気もなく、正直に答える。

「・・・アイツには、死んでも謝りたくはありません。」

 

「「「「・・・・」」」」

 

押し黙るレオ閣下達。

 

沈黙を破ったのはレオ閣下だった。

「まぁ良い。そのうちお主もその気になるじゃろう。和斗といったな?今夜はガレットで夜を明かせばよい。部屋をすぐに用意する。」

 

ふと、外を見ると夕日の光で、濃密な橙に染まっていた。

危ないから、という訳か。

 

「お言葉に甘えさせて頂きます。」

 

レオ閣下の眼は痛いくらいに優しい光を宿していた。

 

 

 

 

「フゥ〜〜・・・。」

ボフッとベッドに背中から倒れ込む。

ベッドからは微かに潮の爽やかな香りがした。

うつ向けになり、顔をフカフカのベッドに埋める。

 

今日の事を振り返る。

謝罪の後、ジェノワーズの三人は俺を城の中をいろいろ案内した後、この部屋に連れてきた。

案内の間もジェノワーズは俺について多くの事を聞いてきた。

 

『和斗はんは普段、どんなことしてるん?』

『フロニャルドで何かしたいことってありますか?』

『・・・好きな食べ物とかある?』

などなど。

 

ベタな質問が多かったが、正直、嬉しかった。

こんな自分を知ろうとしてくれることが。

 

だが、それと同時に辛かった。

三人ともとてもいい人達だ。

だからこそ、自分があまりにも穢らわしい存在に思えてくる。

 

きっと、この世界の人々は皆優しいのだろう。

どうしようもない俺を知ろうとしてくれるのだから。

 

本当にいいのだろうか。俺がこの世界にいても。

 

再びあの疑問が脳裏をよぎる。

リコッタは居て欲しいと言ってはくれたが、果たしてそれが最良な選択なのか。

俺はやはり、還った方がいいのだろうか・・・?

 

ベッドに顔を押し付ける。

 

いや・・・・今は、考えないでおこう。

 

その時、部屋の扉がノックされた。

 

「どうぞ。」

 

素早くベッドに座り直し、返事をする。

扉が開けられ、ノックをした人物が入ってくる。

 

「夜遅くすまんの。和斗。」

 

「・・・・何かご用ですか?レオ閣下。」

 

レオ閣下が優雅に歩いてくる。

 

「隣、良いかの?」

 

「・・・構いませんが。」

 

レオ閣下が俺の隣に腰掛け、少しベッドが沈む。

しばらく、沈黙が続く。

 

「・・・のう、和斗。」

 

「何ですか?」

 

「そんな悲しそうな眼をせんでくれるか?」

 

レオ閣下が目を伏せながら、呟いた。

 

「なぜ?」

 

「昔のワシを見ているようじゃからな。」

 

昔の・・・?

不思議に思う俺を見て、レオ閣下はフフッと微笑んだ。

 

「三年前、ワシは恐ろしい未来を見てしもうたのじゃ。」

 

「恐ろしい未来?」

 

「うむ。それは、『三十日以内にミルヒとシンクが死んでしまう』という未来じゃった。」

 

「・・・ッ!」

 

「ワシは、その未来を変えたかった。何としてでも。だから、いろいろと自分勝手な事をしたもんじゃ。自分一人で抱え込んで。そのせいで、多くの者達に迷惑をかけてしまった。」

 

似ている。

話をするレオ閣下の眼には、俺と似た暗闇が渦巻いていた。

 

「じゃが、そんな時、シンクやミルヒ達が手を貸してくれた。そのおかげで、最悪の未来を回避することができた。ワシは、ワシ一人では、どうしようもできんかった。」

 

レオ閣下が俺の眼を見る。

その眼にはさっきまでの暗闇は無かった。

「じゃからお主も、もうどうしようもできん時は甘えてはどうじゃ?心を開いてみてはどうじゃ?自分で心を閉じていては解るものも解らんて。」

 

身体が震える。

 

開きたい。

 

話したい。

 

だけど、踏み出せない。

 

怖いのだ。

 

向こうでは常に自分の思いを押し殺していた。

 

知っていたから。

 

話しても無駄だということくらい。

 

しかし、レオ閣下なら、この世界の人達なら、俺の思いを聞いてくれるだろう。受け止めてくれるだろう。

 

だからこそ、怖いのだ。

 

俺にそんなことが許されるのか、と。

 

 

 

その時、

俺の顔が柔らかく、温かい何かに包まれた。

 

「・・・ッ⁉︎」

 

そして、すぐに理解する。

 

レオ閣下が俺を抱き締めたのだ。

 

「なっ・・・レオ閣下?一体何を?」

 

レオ閣下は俺の問いに答えず、俺の頭を撫で始めた。

 

あ・・・・・・・

 

心が落ち着いて行く。

 

温かい。

 

いつ以来だろうか。

 

幼い頃に一度、母親に抱き締められて以来か。

 

ああ、だけど。

 

この温もりは母親とは違う。

 

とても心地がいい。

 

「慌てずともよい。ゆっくりと考えればよい。そして、いつか聞かせてくれ。お主の心の深奥を。」

 

 

 

 

 

ああ、温かい。

 

 

 

 

 

 

「・・・・はい。」

 

それだけ言って、俺の意識は深い眠りへと誘われた。




前回の前書きにもありましたように、もうすぐ期末テストです。

というわけで、二、三週間ほどお休みとさせて頂きます。


嗚呼、やだなぁ、期末テスト。
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