DOG DAYS 〜The Demise Hero〜   作:セラフィエル

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どうもセラフィエルです。
先日、塾で今年のセンター試験を受けさせてもらったのですが、あまり芳しくない結果に……。
まあ、まだ一年だし!あと二年あるから大丈夫!大丈夫!



………大丈夫………です……よね?


第15話 和斗の過去 前編

キンッ、カンッと金属同士がぶつかり合う音が、ビスコッティの訓練場に響き渡る。

騎士団員達の掛け声が混ざり、その場に熱気を生み出していた。

 

俺ははその様子をボンヤリと傍から見ていた。

あのクソ野郎に呼び出されたから仕方なく、本当にもう来たくなかったけど、本当に仕方なく来たのだが・・・。

当の本人はまだ来てはいないようだ。

ったく・・・呼び出しておいて遅れるとか何なんだよ・・・。

 

アイツに対する呪詛を心の中で呟いていると、後ろから肩をポンと叩かれた。

 

振り返らなくとも分かった。

この嫌な感じはアイツしかいない。

 

「呼び出したのはそっちなんだから、もっと早く来たらどうだ?それと、気安く触るんじゃねぇ、イズミ。」

 

訓練場の方を見ながら、イズミに声を投げかける。

 

「ごめん。今度から気をつけるよ、黒神君。」

 

イズミが俺の横に立つ。

チラリとイズミを見ると、イズミは訓練場の方をキラキラした目で見つめていた。

 

「んで、俺に何の用だ?何にも無いんなら部屋に帰らせてもらうぞ。」

 

「あぁうん。えっとね、黒神君。」

 

イズミが俺の目を見て、

 

「僕と手合わせしてくれないかな?」

 

何てことをのたまった。

 

「は?」

 

手合わせ?

手合わせってあれか?

要するに闘えって事か・・・?

 

「あー・・・手合わせって闘うのか?」

 

「うん。」

 

コイツ・・・何を考えてるんだ?

まさか、俺が無様に負ける様を嘲笑うつもりか・・・?

 

「何のつもりだ、てめぇ。つーか俺がお前と闘っても意味無ぇだろ。」

 

「そんな事はないよ。君にとっても、僕にとっても。」

 

イズミの目は真剣そのものだった。

 

「・・・ったく、仕方ねぇな。やってやるからそんな目で俺を見るな。」

 

「よし!それじゃ早速やろう!」

 

一体何を考えているんだか・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「準備はいい?黒神君。」

 

イズミが片手剣を構えながら俺に問いかける。

俺も右手に持った片手剣を構え、準備が出来た意思を示す。

イズミは審判役のエクレールという少女の方を見る。

 

「それじゃ、よろしく。エクレ。」

 

エクレールはコクリと頷き、俺とイズミの間に右手を伸ばす。

 

イズミが何故急にこんな事をしようと言い出したのかは分からない。

恐らく俺が負けるのは必至だ。

こんな結果の見え見えな闘いに何の意味があるのだろうか?

いや、考えても無駄か。

答えは目の前のクソ野郎が教えてくれる。

 

ふと周りを見ると、人だかりが出来ていた。

騎士団員やリコッタ、いつの間に来ていたのか、レベッカや七海、そして姫様までいる。

 

なんでこんなにおるんや⁉︎

と心の中で驚愕しつつ、イズミを見る。

その目は既に戦に向かう勇者の目をしていた。

 

そしてーーー

 

「両者尋常に、始め!」

 

エクレールの右手が振り上げられた。

 

その瞬間、イズミは地を蹴り、間合いに入った。

 

「ッッ‼︎」

 

咄嗟に剣を身体の中心に構え、防御の体勢をとる。

 

ギャィィィィンンッッ!

 

イズミの剣が俺の剣を斬りつける。

俺はその勢いに後ろに飛ばされた。

 

重い!戦で闘った奴らとは大違いだ!

 

素早く体勢を立て直すも、イズミの猛攻は止まらない。

右から、左から、上から、かと思えば、下から鋭い一撃を叩き込んでくる。

俺は防ぐだけで精一杯だった。

 

あぁでも、これでもイズミは手加減してんだろうなぁ。

イズミが本気を出していたら、俺なんか最初の一撃で地に沈んでいたんだろうなぁ。

 

剣撃を防ぎながら、ボンヤリとそんな事を考える。

 

イズミの得物が俺の得物に当てがられ、鍔迫り合いに持ち込まれる。

イズミの目を見る。

俺が憎んで憎んで仕方が無い目を。

 

 

ギリッと歯軋りをする。

 

いいぜ、やってやろうじゃねぇか・・・!

 

剣から右手を離し、身体を右に傾ける。

すぐ横をイズミの剣が唸りを上げて通過していき、イズミがバランスを崩す。

すかさずイズミの襟首を引っ掴み、そして、思いっきり俺の頭をイズミの額に叩きつける。

 

「ッッ⁉︎」

 

急な反撃を喰らったイズミは一瞬動きを止めるも、すぐに一旦俺から離れようと地を蹴る。

 

が、イズミの襟首は俺の右手に掴まれたままだった。

剣を持った左腕を引き、イズミに突き出す。

だが、イズミは俺の攻撃を紙一重で弾く。

俺は弾き飛ばされた反動を使い、イズミの膝横に蹴りを叩き込む。

 

「くっ・・・!」

 

バランスを崩すはずだったが、流石は勇者。

跳びながら回転し、俺の右手を捻りあげる。

襟首から手を離した途端、空中のイズミの剣がギラリと光った。

 

咄嗟に防御体勢をとるも、回転力と俺の蹴りの勢いとイズミの腕力が乗せられた一撃は俺を軽々と吹き飛ばした。

手から得物が離れて行くのを感じながら、背中から倒れ込む。

 

起き上がろうとすると、俺の首筋にヒヤリとした剣の切っ先が当てがわれた。

見上げると、イズミが険しい顔で俺を見下ろしていた。

 

詰み・・・か。

 

「はぁ、参った参った。」

 

両手を挙げながら、降参する。

立ち上がって、尻を払う。

 

結局、イズミの意図は分からなかったな・・・。

 

僅かに痛む腰をさすりながら、立ち去ろうとすると、後ろから声を掛けられた。

 

「いつまで、そうしてるつもりなんだ?」

 

ピタリと足を止める。

ゆっくりと後ろを向き、声の主を見る。

 

「・・・どういう意味だ?」

 

俺を睨めつけるイズミに問いかける。

何だか・・・こいつの声がいつもよりも、気に食わない。

 

「いつまで逃げるつもりなんだって聞いてるんだ。」

 

イズミの顔は今までにないくらい険しかった。

 

「・・・逃げる?何が言いたいのかさっぱりだな。」

 

「逃げるなって言いたいんだよ!」

 

イズミが声を荒げる。

その声は俺の怒りをふつふつと煮えたぎらせていた。

 

「君はいつもそうじゃないか!一度や二度失敗したくらいで諦めて、それを自分の悲劇のように振りかざして!楽しいのか⁉︎自分に構って欲しいだけなんじゃないのか⁉︎」

 

やめろ。

そう言いたいのに口が動かない。

 

「自分で自分を蹴落として、逃げてるだけじゃないか!何の努力もしないで、始めっから出来ないって決め付けて!」

 

嗚呼、イズミ。お前はやっぱり分かってないんだな。

 

「さっきだって、僕なら何度だって闘う!一度で終わったりしない!和斗(・・)!変わりたいんなら、諦めるな!」

 

イズミが肩で息をしながら、俺を睨みつける。

さっきよりも強く。

 

あぁ、本当に、怒りを通り越して、笑えてくる。

 

「ククッ、ハハッ、アハハハハッッ!」

 

急に笑い出した俺を見て、イズミはビクッと怯えた表情になった。

 

「ククク、本当に馬鹿みてぇだよなぁ。え?イズミ。『諦めるな』?『逃げるな』?ふざけたこと言ってんじゃねぇよ。」

 

ツカツカとイズミに近寄る。

いつもと違う俺の雰囲気を感じてか、イズミが一歩後ずさる。

そして、イズミの胸倉をガッと引っ掴む。

 

「何も知らねぇてめぇが偉そーなことのたまってんじゃねぇよ。それとも何だ?自分は努力してますから何言ってもいいんですよーってか?」

 

ギリリと歯軋りをする。

駄目だ。

こいつにはもう、憎しみしかない。

 

「お前は本当に何も分かってねぇんだな。だから、俺はお前が憎いんだよ。お前と俺を一緒にするんじゃねぇよ。」

 

自分では解らないが、おそらく恐ろしい形相をしているのだろう。

イズミの顔が今までにないくらい怯えている。

その顔すら俺の憎悪を助長させてしまう。

 

「いいぜ。教えてやるよ。知りたいんだろ?俺のことを。ああ、いいとも。その空っぽの脳みそに詰め込んどけ。てめぇが、努力してないとか説教垂れた男の過去をな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は三人姉弟の末っ子として生まれた。

上二人が女の子だったためか、俺が生まれた時、両親も親戚もかなり喜んだそうだ。

 

そして、両親は唯一の息子を必ず某有名大学に入れて、エリートにしようと決心したらしい。

 

俺は物心着いた時には、もう鉛筆を握っていた。

幼い俺は友達と遊ぶこともなく、ひたすら勉強した。

俺はそれでも良かった。

勉強していると、母親はいつも優しくしてくれた。

 

『頑張ってるわね。えらいえらい。』

 

と。

俺にはそれが嬉しくて堪らなかった。

母親を喜ばせたかった。

母親の笑顔が見たかった。

母親に褒められたかった。

 

父親も親戚も頑張っている俺を褒めてくれた。

 

勉強のための塾はもちろん、他にも才能を身につけるために、ピアノやバイオリン、英会話や水泳など、その歳で異常なほど多くの習い事をこなしていた。

 

小学校に上がり、母親の教育熱はさらにヒートアップした。

空いた時間、休憩時間なども、全て勉強するようにと言われた。

遊びたいと思うこともあった。

休み時間に外から聞こえる楽しげな声を聞いて、何度遊びたいと願った事だろう。

だが、母親はそれを許さなかった。

 

俺は素直に従った。

 

 

小学校というコミュニティの中で、休み時間もずっと遊ばずに、勉強ばかりしている奴を周りの生徒はどう見るだろうか?

当然の如く、俺はイジメの的になった。

 

始めは些細な事だった。

だが、時間が経つにつれて、イジメはエスカレートしていった。

机に『死ね』や『学校来るな』などを油性のペンで書かれたり、勉強道具をトイレに捨てられたこともあった。

 

母親に相談すると、母親はすぐにイジメをやめさせるように学校に連絡した。

 

子供の俺は母親が大好きだった。

自分を褒めてくれて、守ってくれて、愛してくれる。

 

だが、この時は気付かなかった。

気付くはずもなかった。

 

 

 

イジメが減り出した頃から異変が生じた。

成績が伸びなくなったのだ。

先生の説明することが何度聞いても解らなかった。

基本は出来るのだが、応用が出来なくなった。

さらに他の習い事も急に出来なくなった。

ある程度までは出来るのだが、そこから先がどうしても出来ないのだ。

 

母親はそんな俺を見て、激怒した。

俺を怒鳴り、殴り、蔑んだ目で目下ろした。

 

『なんで急に出来なくなるの⁉︎手ェ抜いてるんでしょ⁉︎しっかり頑張りなさい‼︎もっと努力しなさい!』

 

俺は言葉通り、今まで以上に努力した。

だけど、それでも出来なかった。

 

その度に怒鳴られ、殴られた。

 

だが、俺は母親を恨むことはなかった。

 

大好きだったから。

 

毎日、歯を食いしばって、頑張った。

 

自分がもっと頑張れば、きっと母親はあの優しい母親になってくれると。

どれだけ失敗しても、何度だって立ち上がって、努力した。

 

しかし、現実は甘くはなかった。

 

過剰なプレッシャーゆえか、学校でも失敗が続くようになった。

体育のチームプレーでは毎回ミスをして足を引っ張り、行事では必ずドジをして、台無しにしてしまった。

 

収まっていたイジメが再び猛威を振るい出した。

『役立たず』のレッテルを貼られ、以前よりもさらに酷く。

 

母親に相談した。

母親なら助けてくれると思った。

 

だが、

 

『そんな事でいちいち話しかけないで。あなたが我慢すればいいだけでしょ。』

 

そう言って、俺を見放した。

この時に気づけば良かったのだ。

 

母親は俺を見栄の道具としてしか見ていないという事に。

 

役に立たない道具に守る価値など無い。

 

誰も助けてはくれなかった。

 

 

 

そんな時、一筋の光が差した。

俺に親友が出来たのだ。

 

こんな俺に声をかけてくれた。

 

『どうしたの?何か困ってるなら、手伝おうか?』

 

そして、手を差し伸べてくれた。

俺はその手を握り、立ち上がった。

 

『遊ぼう!こっちこっち!』

 

俺の手を引く、その子の背中に俺は着いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

地獄に繋がるとは知らずに。




和斗君の過去編。
一話で終わらせようと思ったのですが、書きたいことが多いので、二話に分けることになりました。
対魔物戦を楽しみにしている方、申し訳ありませんが、もう少しお待ちを。
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