DOG DAYS 〜The Demise Hero〜 作:セラフィエル
学年末テストも終わり、いよいよ春休み。
さぁ遊びまくるぞおぉぉぉ‼︎
・・・・という訳にはいかないんですよね、ハイ。
宿題たんまり出てます。
ハァ・・・春休みくらい宿題無しでもいいんじゃないかなぁ・・・。
普段窓から差し込む日差しは、今は分厚い雲に阻まれ、部屋の中を明るく照らしてはいない。
その窓からミルヒオーレは物憂げに外を眺めていた。
あの森の向こうで皆が戦っている。
この国と民のために。
自分にできることは、ただ皆の無事を信じ、待つ事だけだ。
シンク・・・あなたは今まで約束を破った事はありません。
いつだって、どんな困難も跳ね除けて、私達に笑顔を届けてくれました。
だから、だから今回も・・・きっと。
胸の前で両手を組み、目を閉じる。
必ず・・・必ず帰って来てください。
誰一人欠けることなく。
ミルヒは信じて待っていますから。
「はあぁぁぁッッ‼︎」
棒状態のパラディオンを巨人の木の幹の様な足に叩きつける。
鋭い金属音が響くものの、その皮膚には傷一つ付かない。
「くッ・・・!」
念の為に一度巨人から距離を取る。
弓部隊や砲撃隊の攻撃が雨の様に巨人に降り注ぐが、それをものともせず、巨人はニタニタと笑いながらそこに立っていた。
戦闘開始から約一時間。
今だ巨人にも僕らにも目立った傷は無かった。
とは言え、僕らには焦りが出てくる。
なにせ、いくら攻撃しても巨人はびくともしないのだ。
効いているのか、いないのか、判断がつかない。
幸い、巨人の動きはノロいので回避や攻撃の隙はいくらでもある。
このまま地道な攻撃を続ける方が得策か。
それとも、強力な紋章砲で、一気に戦局をこちらに傾けるか。
「総員、紋章砲準備‼︎」
指揮官であるレオ様の指示が飛ぶ。
今まで巨人に攻撃を繰り出していた騎士団が一斉に巨人の射程範囲外へ移動する。
そして、あちこちで現れ、異彩な輝きを放つ紋章。
僕も背後に紋章を出現させ、巨人に向けた掌に力を込める。
心臓から熱いものが血管を巡り、掌に集まって行く。
掌に紅の燐光を放つ焔の球が徐々に巨大化していく。
その間も巨人はニタニタと笑い、ノロい動きで大鎚を振り上げる。
巨人の身体は完全に無防備である。
そして、
「紋章砲、撃てェェェッッ‼︎」
輝力を爆発させ、紋章砲を放つ。
焔の柱が巨人目掛けて奔る。
次々に紋章砲が打ち出され、辺りが七色の燐光と輝きに染まる。
紋章砲は巨人を直撃し、轟音と共に果てる。
そして、静寂。
爆煙が巨人を包み込み、姿を見えなくする。
「やったか・・・!」
いくらか頑強な巨人の皮膚と言えど、あれだけの紋章砲を喰らえば無傷では済まないはずだ。
煙が徐々に散り、ボロボロの巨人が姿をーーーーー
「な・・・・・・⁉︎」
否。
立っていた。
相変わらず顔はニタニタと笑いながら、何事も無かったかの様に。
完全に無傷で。
「そんな・・・!」
辺りに悲痛な声が満ちる。
それもそうだ。
全力の一撃だったのだ。
それすらも効かないということは、今までの攻撃も全く意味を成さなかったことになる。
だが、それで終わらなかった。
巨人が四本の腕を今までにない程大きく振り上げたのだ。
僕らはそれを見て、少し、ほんの少し、安堵した。
巨人があのまま大鎚を振り下ろしても、巨人の射程範囲内には誰もいない。
虚しく地面を叩くだけだろう。
そう思っていた。
しかし、その僅かな安堵でさえ、神は許さなかった。
アデル様は言っていた。
今回の魔物の強さは、僕らの予想を遥かに超えるだろう、と。
巨人の背後に現れた黒い太陽。
悪魔の描かれた黒紫の『紋章』。
「そっ・・・・」
僕らを滅ぼす、破壊の意志。
「総員退避ィィィィィッッッ‼︎‼︎‼︎」
指示と共に全員が一斉に巨人に背を向けて走り出す。
直後。
「オオオォォォォッッッッン‼︎‼︎」
暴虐の鉄槌が地を打った。
凶なる輝力が大地を蹂躙していく。
僕らを破壊せんとする悪魔がすぐ後ろまで迫ってきている。
ダメだ・・・!逃げ切れない・・・!
咄嗟に身体を回転し、紋章を出現させ、防御する。
だが、
「あッ・・・がッ・・・・・!」
まるで焔の鉄球を受け止めているかの様な感覚。
掌が焼けるように熱くなり、僕の身体を侵食する。
重い・・・・ッ!
あまりの威力に紋章にヒビが入り、淡く砕け散った。
「シンク!シンク!」
僕を呼ぶ声にハッと目を覚ます。
瞬間、途方も無い痛みが神経を襲い、再び意識が飛びそうになる。
痛みが引き、目を開けると、そこには今にも泣きそうな顔のベッキーが僕の顔を覗き込んでいた。
「良かった・・・!無事だったんだね、シンク・・・!」
「ベッキー・・・君は大丈夫?」
「私は大丈夫。アイツの真上にいたから、何とか。」
「良かった。他の皆は?」
起き上がりながらベッキーに尋ねる。
あの紋章砲はかなりの広範囲を薙ぎ払っていた。
巻き込まれたのは僕だけじゃないだろう。
「わからないけど・・・たぶん半分はもう戦えないと思う。凄い人数を巻き込んでたから・・・」
ベッキーの言葉に不吉な予感が脳裏をよぎる。
まさか・・・死者が出た、なんてことは・・・。
「全員一旦下がれ!まだ戦える者は前衛に回れ!」
レオ様の指示が耳に入る。
当然の判断だ。
紋章砲、つまり、輝力を使う魔物なんて聞いたことがない。
何をしてくるかわからない以上いつまでもそこに留まるのは自殺行為だ。
一度態勢を整えた方がいい。
立ち上がろうとしたその時だった。
ベッキーの頭上に迫る巨大な影。
「危ない‼︎」
ベッキーを抱え、思いっきり横に転がる。
直後、僕らがいた場所を大鎚が砕いた。
まさか、もうこっちにまで移動してきたのか⁉︎
いや、違う・・・あれは・・・
大鎚の柄から延びる黒紫色の鎖。
鎖に視線を辿ると、そこでは巨人の四つの手が大鎚の柄ではなく、輝力でできた鎖を握っているのが見えた。
そして、巨人は腰を落とし、こちらに駆け出した。
四本の鎖を巧みに使い、四つの大鎚を振り回しながら。
「嘘だろ・・・ッ!」
追いつかれたら撤退どころではなくなる。
多くの死者が出るだろう。
やるしかない。
「ベッキー、君も一度下がって。」
「シンクは?どうするの?」
「僕は・・・」
猪突猛進の勢いでこちらに迫り来る巨人を見据えながら、覚悟を決める。
「アイツを足止めする。」
「⁉︎ 無茶だよ!さっきのアイツの紋章砲見たでしょ⁉︎シンクも下がろうよ!」
ベッキーが必死に僕を説得しようとする。
だけど、それに応じるわけにはいかない。
「ダメだ。すぐにアイツは僕らに追いつく。そうしたら、本当に全滅してしまう。何としてでもアイツを止めないと。それにーーー」
ベッキーの目を見て、ニコッと笑う。
「僕は皆の勇者だから。大丈夫。死んだりなんかしないよ。」
ベッキーは一瞬目を見開いたが、すぐに顔を伏せた。
「・・・わかった。なら、私も残る。私も、シンクと同じ、勇者だから。」
「ベッキー・・・。」
本当はベッキーには下がって欲しい。
だけど、ここで僕が何と言おうとベッキーは折れないだろう。
迷っていたその時、
「二人だけだと思うな。」
聞き慣れた声と複数の足音。
この声は・・・
「エクレ!それに皆も!無事だったんだね!」
我らが親衛隊隊長エクレールに、その兄ロラン騎士団長、ユキカゼ率いる隠密隊、リコの砲撃隊、ガウルに、ジェノワーズ、ゴドウィン将軍、バナード将軍、七海、レオ様に、クー様、キャラウェイ、ダルキアン卿、イスカ、アデルに、ヴァレリー、そして、各国の騎士団員達。
それぞれ多少怪我はしているものの、戦えない程ではない。
「そりゃもう当然!私達はそう簡単にやられはしないからね!」
七海が僕の隣へ来て、ニッと笑う。
「おめぇらだけに手柄を渡すわけにゃぁいかねえからな。」
ガウルが不敵な笑みを浮かべ、七海の隣に立つ。
そして、他の皆も次々と一列に並んでいく。
どの面子も希望を失ってはいない。
必ず勝つという希望を。
そうだとも。
相手が輝力を使う魔物だからって諦める僕らじゃない!
こんなところでくたばってたまるか!
「行こう‼︎アイツを倒して皆で帰るんだ‼︎」
「「「「「おおぉぉッッ‼︎‼︎」」」」」
この国の国民のためにも、城で僕らを待ってる姫様のためにも負けられない‼︎
僕らの戦いはここからだ‼︎
最近、自分のボキャブラリーの少なさに辟易しています。
どうも同じような表現が続くんですよね・・・。
もっと本読まないとなぁ・・・。