DOG DAYS 〜The Demise Hero〜 作:セラフィエル
言い忘れていたのですが、シンク達の歳は16です。
ちょっと未来のお話になっています。
それでは第二話、お楽しみ下さい。
二学期の期末テストが終わり、夏休みを目前に控えた初夏を感じるある日、俺の高校はにわかに騒がしくなった。
『ねぇねぇあの子見た?』
『見た見た。シンク君ってかわいいよね〜。』
『あの顔で、アイアンアスレチック優勝だもんね〜。』
『うちの男子とは大違いだわ。』
とかなんとか女子達が話しているのが聞こえる。
なるほど、あのシンク・イズミとかいう奴はアイアンアスレチックの優勝者なのか。どうりで皆がざわついている訳だ。しかも、イズミと一緒にいる女子二人は、方やアイアンアスレチックの準優勝者である美少女、方やイズミの幼馴染みらしいツインテールの美少女ときた。目立つのも当然だろう。
その証拠に周りの男子生徒達から、暗い怨嗟の声が聞こえてくる。
『チクショウ、なんでああいう奴ばかり・・・』
『シネシネシネエエェェェ・・・』
『ネェネェ、キィィィルしちゃおうヨオオオウ』
・・・なんか既に正気を失ってる奴までいる。
この調子だとイズミは一週間どころか今日を生き抜くことさえも困難だろう。
当の本人はというと、
『ねぇ、シンク君の好きな食べ物って何?』
『女の子のタイプは?』
「えっ、えーと・・・」
『パンツは何色⁈』
『スリーサイズ教えて‼︎』
クラスの女子から質問攻めに遭っていた。
っていうか最後の二つは男子に聞くことじゃないだろう。
女子からのちょっと(?)変わった質問にイズミもかなり困っているようだ。なぜだろうか、イズミのそんな様子を見ていると妙に気分がスッキリするというかなんというか。ただイズミを見た時から俺の心に蠢いていたものが軽くなったのは確かだ。
一体、これは何なのだろうか?腐のつく女子達が聞いたら、『それって、恋よぉ!!』と騒がれそうな気がするが、無論、俺にそんな趣味はない。
まぁ、どうでもいいか。アイツと俺が関わることなんてないだろうし。それに、俺は自分の心配をした方が良さそうだしな。
そう考え、いつもより少し大きめのあくびをした時、いつも通りのチャイムが鳴り響いた。
4時間目が終わり、昼休み。
僕らは食堂の隅っこの席についていた。
「なんか・・・凄いね、ここの人達。」
僕の隣に座る少女が疲れたように呟く。サラサラの黄色の髪にツインテールが似合う、僕の幼馴染みのベッキーだ。
「うん・・なんか疲れたね・・。」
それに相槌を打つのは僕の前に座っている少女。肩口をくすぐるくらいの綺麗な黒髪と快活そうな表情が特徴の、いとこの七海だ。
しかし、いつもは明るいその顔も今は疲れのせいで少し縦線が入っている。恐らく、僕も同じような顔をしているだろう。
「ホント・・一日目からこれって、どうなんだろうね。」
僕にも明らかに疲れが溜まっている。
この疲れの原因は、
「一体いくつ質問したら気が済むんだろうね。」
この学校の生徒達(主に女子)からの質問攻めである。
「シンクなんか、最後の方ほとんど脱がされてなかった?」
「うん・・あの時は一瞬、終わったなって思った・・。」
質問に答えていく内にヒートアップした女子生徒が僕の服に手をかけ始めて、あっという間にベルトを引き抜かれていた。
その時、本能的な恐怖を感じて、その場から全速力で逃げたんだけど・・・。その後も、しつこく追いかけてくるので、こうやってあまり人目につかない隅で昼食をとっているのだ。
「まっ、まぁ明日になったらきっと落ち着いてるよ。」
「だと、いいけどね・・。」
「う・・・。」
そして、昼食を食べ終わった頃、誰かに肩を叩かれた。
一瞬、ビクッとなって、恐る恐る後ろを見ると、数人の男子生徒がニッコリ笑いながら立っていた。
『やあ、シンク君。こんなところにいたんだね。探したんだよ。』
思わずホッとする。良かった、やっとまともな会話ができそうだ・・!
「やあ、僕に何か用かな?」
探していたというのだから何か僕に用があるはずである。
『いや、大した事じゃないんだが・・。』
『お前、さっき女子達に囲まれていたよな?』
『きゃーきゃー言われてたよな?』
「う、うん。言われてた・・・けど、それがどうかした?」
なんだろう・・・。なんでこんなに寒気がするんだろう?
『どうかした・・・だと?』
『つまり、あんなことは日常茶飯事で、気にするほどの事ではないと・・・?』
『そうか・・よ〜くわかった。』
駄目だ。彼らの後ろに阿修羅が見える。
「いやっ、別に日常茶飯事って訳じゃないよ!ねぇ、お願いだから、その手に持っているナイフとフォークを降ろして‼︎」
『問答無用ッッ‼︎殺せぇぇぇッッッ‼︎』
「ひいぃぃぃぃッッ⁉︎」
第二の悪夢降臨。今日を生き抜くため、再び僕は廊下を全力疾走した。
放課後
俺は少し機嫌良く帰路に着いていた。
今日期末テストが返ってきたのだが、以前より点数が上がっていたのだ。
点数に興味はない。だが、これであの母親の鼻をあかすことができる。
「♪」
久々に機嫌がいい。少しはあの母親も考え改めてくれるはずだ。いつもは暗く見える夕暮れが、今日は綺麗に見えた。
「ただいまー。」
家に着き、玄関を開ける。微かにスパイシーな香りが俺を包む。おそらく、今日の晩飯はカレーだろう。
「おかえり、和斗。どうだった、テストは?」
「まぁまぁ良かったかな。見たら分かる。」
母親が俺の鞄を開け、ファイルからテストを取り出した。
さ、どんな反応をするかな?
「・・・和斗、あんたまさかこんな点数で満足してるわけじゃないでしょうね?」
「は・・・?」
なんか予想していた反応と違う。
「いや、でも結構いい点数だろ?」
「はぁ?これがいい点数?あんたねぇ、これよりいい点数の子いるんでしょ?」
確かに上にはいるだろう。だが、それでもこの点数は上から数えた方が早い点数のはずだ。
「いい?こんな点数で満足しないでちょうだい。あんたは一番にならないと意味ないの。」
「どういうことだよ。そりゃ、やるからには一番目指すけどよ・・・。」
「目指すじゃ駄目なの!なんであんたはそんなことしか言えないのよ⁉︎何⁉︎勉強するのが嫌なの⁈」
憤怒の表情で怒鳴る。
なんでだよ・・俺、頑張ったじゃねぇかよ・・・。
嫌な予感がした。最も恐れていることが起こりそうな気がした。
「いい⁉︎あんたにはねぇ・・・!」
嫌だ。聞きたくない。頼む、それ以上先を言わないでくれ。
「勉強しかないの‼︎あんたは勉強が無いと、ただの無能なのよ⁉︎運動も歌も絵も、あんたはできないじゃない‼︎努力が足りないのよ‼︎もっともっと頑張って一番になりなさい!」
「ッ・・・!」
無能
嗚呼、嗚呼。俺はなんて馬鹿だったのだろう。
なんで期待なんかしたのだろう。
無能
俺の母親はこんな母親ではないか。
俺はそれを知っているではないか。
無能。それは俺が一番知っているではないか。
「和斗!返事は⁈」
「・・・・・・うん。」
反論する気など起こるはずが無かった。
俺の中の何かが微かに、だが確実に欠けていった。
読者の中には 姫様まだか⁉︎とお思いの方もいらっしゃるかと思います。すいません、もう少し待って下さい。
あと二話ぐらいあとに出てくる予定です。
それと未来ではシンクがアイアンアスレチックの優勝者という設定です。さすがに高校生になったらシンクが上かなーと思ったからです。それではまた第三話で。