DOG DAYS 〜The Demise Hero〜   作:セラフィエル

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どうもセラフィエルです。

DOG DAYS"、ついに終わっちゃいましたね・・・。
すっごい寂しいです。
冬編に期待します。

注意事項。
今回の話は残酷描写があり、胸糞注意です。


第20話 快楽の殺意

「そ・・・んな・・・」

 

僕の口から掠れた声が零れる。

僕の目が見据えるのは目の前にいるベッキーを傷付けた人型の魔物。

 

巨人の魔物を倒した。

それで終わりだと思っていた。

だけど、終わっていなかった。

魔物は、二体いたのだ。

おそらく目の前にいる魔物は、今まで姿を隠していたのだろう。

だから、調査隊も魔物が一体だと報告したんだ。

 

今の僕らでは分が悪すぎる。

巨人の魔物との戦いで消耗しているのだ。

もし、奴が巨人より強いのだとしたら・・・。

 

その魔物が僕を見て、愉快そうに笑う。

 

「ククク・・・。いいねぇその顔。餌を取り上げられた犬だってそんな顔できねぇよ。でもなぁ、お前らにはこれからもっともっと、いい顔してもらーーーー」

 

魔物が言い終わる前に、魔物の側頭部に黄金の閃光が奔り、爆発を起こした。

 

クー様が魔物を狙撃したのだ。

 

「貴様・・・ッ!よくもレベッカを・・・‼︎」

 

クー様が顔を歪めながら、二発、三発と輝力の塊を魔物に打ち込んでいく。

 

「おーおー怖いねぇ、お嬢さん。あの娘はお嬢さんのオトモダチかい?それなら、俺をぶっ殺してぇ気持ちは分かるけどよぉーーー」

 

濛々と立ち込める爆煙の中から魔物の声が聞こえる。

だが、次に聞こえてきた声はクー様の後ろからだった。

 

「ーーー弱すぎんだよ、お嬢さん。」

 

魔物がクー様に手を翳し、五本の指に黒紫の光が灯り、クー様の顔を照らしたその時、

 

「クーベル様ッ‼︎」

 

キャラウェイがクー様を突き飛ばし、魔物の指から放たれた五本の光線がキャラウェイの身体を貫いた。

 

「かッ・・・は・・・ッ!」

 

キャラウェイが血を吐き、ドサリと地面に倒れ込む。

そして真っ赤に染まっていくキャラウェイの身体。

 

「あ・・・あぁあぁぁッ・・・キャラウェイ!キャラウェイ‼︎」

 

クー様のキャラウェイを呼ぶ声に魔物はますます愉快そうに笑った。

 

「キヒャハハハハハッッ‼︎‼︎なんていい声だ‼︎素晴らしい!素晴らしい‼︎」

 

キャラウェイは気を失っているようだが、このままでは命が危ない。

 

「皆の者!奴を止めるのじゃ‼︎」

 

レオ様の声が響き、皆がハッとして、魔物に向かって駆け出す。

だが、その瞳は恐怖と驚愕に震えていた。

 

騎士団員達が次々に魔物に襲い掛かる。

その間にキャラウェイは騎士団員に運ばれていった。

 

魔物は騎士団員の攻撃を躱し、いなしていく。

その動作に緊張感は無く、余裕さえ感じられた。

 

「おおおぉぉぉぉッッ‼︎」

 

騎士団員の攻撃を躱しきった魔物のガラ空きの頭にグランヴェールの強力な一撃が叩き込まれる。

だが、

 

「キヒヒヒ・・・やるねぇ、おネェさん。」

 

魔物は悠然とそこに立っていた。

グランヴェールの柄を握ると、それを軸にレオ様に飛び蹴りを放つ。

レオ様は咄嗟に横に躱し、グランヴェールを大きく振り、魔物を振り払う。

魔物は空中でクルリと一回転すると、緩やかに着地した。

 

そして、何かに気付いたように、大きく身を伏せた。

次の瞬間、淡緑の爪が魔物がいた空間を引き裂いた。

魔物が立ち上がりざまにガウルに蹴りを繰り出す。

それを防御するも、ガウルは吹き飛ばされてしまう。

 

「ウチらのガウ様に何すんねん‼︎」

 

ジョーヌの大斧が振るわれるも、魔物はヒラリと躱し、ジョーヌに拳を突き出そうと腕を引く。

 

しかし、その腕に紫の輝力を纏った三本の尻尾が巻き付き、動きを止める。

ノワールの輝力武装【セブン・テール】である。

 

直後、ベールの放った緑に輝く矢が魔物の全身に降り注ぎ、その威力を爆発させる。

爆煙に包まれた魔物をジョーヌとノワールが同時に襲い掛かる。

だが、

 

「「ッッ⁉︎」」

 

二本の黒紫の光線が煙を貫き、一本がジョーヌの大斧を砕き、もう一本がノワールの左肩を貫いた。

 

得物を失い無防備のジョーヌの足を掴み、ベールの方へと放り投げる。

ジョーヌとベールは二人共々吹き飛び、数回バウンドしてから、地面に転がった。

 

それを見届けずに、魔物は一瞬でノワールの眼前に移動し、目を見開くノワールの顎を鋭い脚で蹴り上げた。

ノワールも地面を転がり、そのまま動かなくなった。

 

 

そして、僕はそれをただ見ていた。

何故だ・・・?

どうして僕の身体は動かないんだ・・・?

目の前で大切な仲間がやられているのに。

僕は・・・いつから・・・こんなに臆病になってしまったんだ・・・?

 

「シンクッッ‼︎」

 

僕の名前を叫ぶ声がして、ハッとする。

その声の主は綺麗な翠の瞳を恐怖に彩っているものの、その奥には闘志が、必ず勝つという闘志が燃えていた。

 

エクレ・・・。

そうだ、まだ負けた訳じゃない!

しっかりしろ、シンク・イズミ!

お前はこんなところで立ち止まる男じゃないだろう‼︎

必ず勝つ!

勝って、皆で帰るんだ‼︎

 

「うおおおぉぉぉぉッッ‼︎」

 

腹の底から雄叫びをあげて、魔物に突進する。

それに励まされたのか、他の皆も次々と魔物に突進していく。

 

その様子を見て、魔物は身を捩らせた。

 

「ヒ・・・ヒヒヒ・・・ヒヒャハハハハハハッッ‼︎‼︎いいねぇ‼︎いいねぇ‼︎そう来なくっちゃなぁぁぁッッ‼︎もっと楽しませてくれよぉ‼︎人間共ぉ‼︎」

 

皆の紋章が一斉に輝き、オミノスに覆われた空を七色に染めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔物と交戦中の戦場とは打って変わって静かなフィリアンノ城のある部屋の中。

 

整頓されていないベッドの上で、黒神 和斗は天井を見上げながら、横たわっていた。

 

今頃、イズミ達は勇敢に魔物と戦っているのだろう。

この国の平和を守る為に。

それに引き換え俺は・・・だらしなくベッドに寝そべって、天井を見上げているだけだ。

あんなに迷惑を掛けたのに。

恩返しをするべきなのに。

 

俺に何か出来ることは無いだろうか。

 

ずっとそれを考えている。

だが、思い付いても不安と恐怖がそれを掻き消してしまう。

俺が関わると、いろんな事が失敗に傾く。

魔物との戦いに首を突っ込んで大惨事に至らせる訳にはいかない。

そんな事をすれば、俺は・・・。

 

ベッドから身体を起こし、窓の外を眺める。

どんよりと重い雲が空をどこまでも覆っている。

 

イズミ・・・お前は俺に逃げるなと言った。

それは立ち向かえるだけの勇気がお前にあるからだ。

どんな強敵にだって諦めずに正面から立ち向かう勇気。

 

俺にはそれが無い。

勇気とは無縁に生きてきた。

俺の中に勇気という概念は存在しなかった。

 

だけど・・・もし、俺に勇気があれば・・・お前のようになれたのか・・・?

 

『ーーーー様!ーーーーやめーーーー』

 

『なにをーーー待ってくだーーーー』

 

ドアの外から喧騒が聞こえる。

何かあったのだろうか。

 

ドアを開けると、目の前をメイドが数名駆けて行った。

 

「何だ・・・?」

 

メイド達について行くと、そこは城の展望テラスだった。

 

『姫様!お止め下さい‼︎姫様!』

 

『何処へ行かれるのですか⁉︎』

 

白と桃色の毛並みのセルクルに跨る姫様をメイド達が必死に引き止めているようだ。

あのセルクルは確か・・・ハーランだったか。

 

「皆の所に決まっています!来ないでください‼︎」

 

「なりません!危険すぎます‼︎」

 

「城にいるよう勇者様にも言われたではありませんか‼︎」

 

メイド長リゼルや秘書のアメリタも姫様を引き止めようと必死に説得する。

姫様はメイドの言葉を聞くと、唇を噛み締めた。

 

「それでも・・・それでも、私はッ!行かなくちゃならないんです‼︎」

 

そう叫ぶと姫様はハーランに乗ってテラスから飛んで行ってしまった。

 

「姫様!姫様‼︎」

 

メイド達が慌てふためく。

しかし、リゼルが真っ先に立ち直り、メイド達に指示を飛ばした。

 

「急いで、姫様を追うのです!何としてでも連れ戻しなさい‼︎」

 

『『『『了解‼︎』』』』

 

メイド達が各々散らばる。

俺は空を見上げるリゼルの横に立った。

 

「・・・珍しいな。姫様があんな風に取り乱すなんて。何かあったのか?」

 

リゼルは俺に気付くと、一瞬驚いたが、すぐに目を伏せた。

 

「・・・先程、戦場から報告が入ったのです。『二体目の魔物の出現により、本隊は苦戦を強いられている。最悪の場合も考慮に入れて欲しい。』と。それを聞いた姫様は顔色を変えて、部屋を飛び出して・・・」

 

「アイツらの所に行っちまった、と。」

 

俺が続けた言葉にリゼルはコクリと頷く。

俺も姫様が飛んで行った空を見上げる。

きっと今の姫様の頭の中は戦場で戦っている皆の事で一杯だろう。

戦場で一体どうするかも考えられないくらいに。

冷静に考えれば、分かる事だ。

イズミ達ですら苦戦するような相手だ。

姫様が加勢した所でその状況を覆せる訳がない。

姫様の行動はまさに自殺行為である。

 

姫様を突き動かしたのは、何だ?

 

皆を助けようという優しさか?

 

 

 

いや、違う。

 

 

 

自分も戦おうという勇気か?

 

 

 

いや、違う。

 

 

 

なら、何だ・・・?

 

姫様の顔を思い出す。

さっき、ハーランに乗って飛び立とうとする姫様の顔。

 

そして、分かった。

簡単な事じゃないか。

 

大好きなんだ。

 

姫様は皆の事が大好きだから、愛してるから、戦場に向かったんだ。

 

立ち向かう理由も、逃げない理由も、人それぞれじゃないか。

 

イズミ・・・お前らもそうなんだろう?

それぞれの理由と思いを胸に戦ってるんだろう?

そして、それはきっとこんな所で消えちゃいけねぇモンなんだろう?

 

それなら・・・俺は・・・・・・

 

「リゼル、アメリタ。」

 

怯える必要は無い。

やらなければ、始まらない。

勇気が無いから戦えない、なんてのはただの言い訳に過ぎない。

 

 

「・・・頼みがある。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

傷ついた右頬から生温かい血が地面へと流れていく。

左瞼は腫れ上がり、視界が狭くなっている。

左腕は完全に折れて、最早使い物にならない。

地面に触れた肌から、地面の冷たさが伝わってくる。

 

「ヒヒヒヒヒ・・・」

 

頭上から魔物の笑い声が聞こえてくる。

その笑い声だけが、静かな草原に響き渡る。

もう、戦える者は誰一人としていないだろう。

僕が最後の一人だったのだから。

他の皆は殆どが気を失い、辛うじて意識のある者は僅かだった。

 

そして、僕も敗北した。

圧倒的な魔物の力の前に、なす術も無かった。

 

魔物がしゃがみ、顔を僕の耳に近付ける。

血生臭い魔物の口から漏れ出る死の吐息が僕の顔に吹きかかる。

 

「残念だったなぁ、人間。だけどな、心配すんな。お前のお仲間はまだ死んじゃあいない。だってよ、すぐに死んじまったら楽しくねぇだろう?後で、じっくりと、痛めつけてやるからさぁぁぁ。ヒヒヒ・・・」

 

身体が熱くなる。

魔物の声を聞いただけで、怒りの炎が僕の心を焦がしていく。

 

「・・・させ・・・るか・・・!そんな・・・こと・・・ッ!」

 

右手でパラディオンを握り締め、魔物に打ち付ける。

だが、パラディオンは力尽きたかのように儚く砕けてしまった。

 

「ヒヒヒヒヒ‼︎ダメだなぁ〜そんな怖い事しちゃ。そんな子にはお仕置きが必要だなぁ。」

 

そう言って、魔物は両手で僕の頭を掴み、持ち上げた。

 

「教えてやるよ。輝力ってのは、こういう使い道もあるんだぜ。」

 

瞬間、

 

頭が破裂した。

 

正確にはそう感じた。

それほどの激痛が僕の頭を襲ったのだ。

 

「あッがッああああぁぁあぁああぁッッ‼︎‼︎」

 

脳がグチャグチャになる‼︎

目玉が内側から押し出される‼︎

 

その痛みはやがて全身を蹂躙し、身体が弾け飛ぶような感覚がさらに僕の脳を刺激する。

 

「ヒャハハハハハ‼︎なんていい声で啼いてくれるんだ‼︎いいねぇ‼︎最ッ高だ‼︎」

 

魔物の両手の力が弱まると同時に、全身の痛みが引いていく。

だが、頭がボーッとして、何も考える事が出来ない。

目の前が薄暗くなる。

 

「おいおい・・・もうギブアップか?まだまだこれからだってぇのによぉ。」

 

魔物は不満そうな声を出すと、再び両手に力を入れてきた。

 

「さぁ、第二ラウンドだ。」

 

だが、次の瞬間、魔物は僕から両手を離し、横に跳んだ。

そして、魔物がいた場所に桜色の紋章砲が炸裂する。

 

今のは・・・まさか・・・

 

倒れる僕の横に降り立ったのは、今までに無いほど険しい顔をし、両手で聖剣エクセリードを握る姫様だった。

 

「シンク‼︎」

 

姫様が僕の身体を抱きかかえる。

その腕は暖かく、僕の身体を癒すようだった。

だけど、姫様はここにいてはいけない。

今すぐ逃がさないと。

 

「・・・来ちゃ・・・ダメじゃないか。今すぐ・・・逃げるんだ・・・早く・・・」

 

「そんな事ッ・・・できるわけないじゃないですか!シンクを、皆を置いて逃げるなんて・・・そんな事・・・!」

 

姫様の美しい瞳から大粒の涙が流れる。

その涙は僕の頬で弾け、煌びやかな輝きを放つ。

 

「おーおーお熱いねぇ。お二人さん。オレは好きだぜ、そういうの。なんたって、壊し甲斐があるからなぁ!ヒヒヒヒヒ!」

 

魔物が僕らを見据えながら、気味の悪い笑い声を上げる。

姫様はそんな魔物を見て、僕を優しく地面に横たえ、スッと立ち上がった。

 

「よくも・・・よくも皆を・・・ッ!」

 

エクセリードを握る手がギリリと音を立てる。

姫様の怒りを受け、エクセリードが赤みを帯びた輝きを放つ。

 

「よくもーーーーーッッ‼︎」

 

雄叫びを上げながら、魔物に突進していく。

魔物が間合いに入った所で、エクセリードが弧を描き、魔物の頭に直撃する。

怒りを籠めた一撃が爆発し、辺りの空気をビリビリと震わす。

 

「ヒュー、威勢がいいねぇ、お姫様ぁ。」

 

だが、魔物にとっては爆竹以下である。

魔物の脚が黒紫色の弧を描き、姫様を蹴り飛ばす。

 

「姫様・・・!」

 

姫様が僕のすぐ隣にまで転がり、停止する。

 

「げほッがはッ・・・ごほッ!」

 

姫様の口から赤い塊が地面に吐き出される。

今の一撃で深手を負ったようだ。

 

「姫様・・・」

 

ブルブルと震える姫様に這いずり寄って、動く右腕で抱き締める。

 

「シンク・・・」

 

もう・・・終わりなのかもしれない。

僕らはアイツに勝てなかった。

僕らを待つのは地獄のような苦痛と屈辱。

せめて・・・姫様だけでも・・・助けたい。

だけど・・・身体が動かない。

今は抱き締める事しか出来ない。

僕は・・・なんて無力なんだ・・・。

 

「もっと楽しみてぇ所だが・・・他の奴らが目を覚ますと面倒だからな。お前らも二人まとめて消してやるよ。」

 

魔物から告げられる死の宣告。

その言葉は僕らの心を枯らしてしまった。

 

魔物が僕らに掌を向け、黒紫の輝力の球体を創り出す。

その輝きは僕らを嘲笑う死神のように見えた。

 

「じゃあな、人間共。」

 

死の魔弾が放たれる。

僕は姫様をより一層強く抱き締める。

 

 

僕らの身体が黒紫色に照らされたその時だった。

 

「おおおおぉぉぉッ‼︎」

 

僕らの前に影が躍り出て、魔弾を弾き飛ばした。

魔弾は誰もいない地面を抉り、消えてしまった。

 

そして、その後ろ姿はとても懐かしい気がした。

 

 

「おい、諦めてんじゃねぇよ。馬鹿野郎。」

 

 

右手に銀色に輝く片手剣を携えた黒神 和斗は、肩越しに僕らを見て、そう言い放った。




やっと出てきた和斗。
次回からは和斗がメインとなります。
対魔物戦も遂に後半に差し掛かりました。
さぁ、和斗達は魔物に勝つ事ができるのか⁉︎
乞うご期待!
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